舞台裏》優先順位の差?南部豪雨は即日対応、花蓮・馬太鞍渓せき止め湖氾濫は1週間後 中央政府の初動対応に遅れ、批判高まる

2025-10-02 17:21
花蓮・馬太鞍渓の堰塞湖が決壊し、甚大な被害が発生。中央・地方の救援体制は初動から1週間、課題が相次いだ。(写真/顏麟宇撮影)
花蓮・馬太鞍渓の堰塞湖が決壊し、甚大な被害が発生。中央・地方の救援体制は初動から1週間、課題が相次いだ。(写真/顏麟宇撮影)
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2025年9月23日、台湾東部・花蓮の馬太鞍渓でせき止め湖が氾濫し、下流域で多数の死傷者が発生した。中央政府は同日、災害応変センター前進調整所の総調整官として経済部次官の頼建信氏を派遣。しかし、7日後の9月30日には体制を見直し、行政院政務委員で元陸軍中将の季連成氏を新たに総調整官に任命。さらに頼清徳総統の側近として知られる行政院顧問の李孟諺氏を副指揮官に充てた。

前日の9月29日には、すでに「頼氏の立場では格が低いのではないか」との指摘が出ていた。これに対し行政院の李慧芝報道官は、「頼氏は水利のベテランで行政手続きにも通じている。救援状況や業務上の必要に応じ、人員は適宜ローテーションしている」と説明。しかし翌日には一転し、政務委員級の季氏と「総統の腹心」の李氏が前面に立つ体制へと切り替えられた。

20250328-経済部次長頼建信28日出席「114年第1次電価費率審議会」会後記者会、今回の電価は調整しないと発表する。(顔麟宇撮影)
経済部次長の頼建信(写真)が前進調整所の総調整官を務めたが、1週間後に政務委員の季連成へ交代した。(写真/顏麟宇撮影)

「ショベルのヒーロー」自ら駆けつけるも、中央の力不足が露呈

氾濫当夜、卓榮泰行政院長は花蓮県光復郷に前進調整所の設置を指示。頼建信氏のほか、原民会副主任委員の谷縱氏、環境部次官の沈志修氏、陸軍花東防衛指揮部副指揮官の頼政豊氏が常駐し、総調整官は頼氏が務めた。派遣はいずれも「次官級」で、卓氏は24日の院会で「複数の次官が調整を担い、中央の災害応変センターと現場を一本化する」と述べていた。

ところが24日以降の初動期、ボランティア受け入れや救援活動、地方政府との連携で調整の不備が目立った。市民ボランティアが「ショベルのヒーロー」として次々と光復に集まったものの、当初は統括の仕組みがなく、現場で行き先がわからず右往左往。重機の通行を妨げる場面もあった。ようやく27日、衛福部が花蓮県政府・慈済と連携して「ボランティア配分ステーション」を設け、状況は徐々に改善した。

食の手当ても混乱が続いた。料理人によるボランティア団が炊き出しに入ったが、花蓮県政府との調整不足や交通規制で物資搬入が滞り、弁当が不足。山間部の高齢者の中には饅頭で空腹をしのぐ人もいた。その後、ボランティアが急増し、県が弁当を一括手配したものの、配送ルートや受け取り資格の整理が遅れ、「行き渡らない地域」と「余って廃棄される地域」が併発。いわゆる「弁当騒動」は長引き、29日に中央が供給と配分を一元化してようやく解消された。

頼建信氏が総調整官を務めた7日間、物資やボランティアの割り振りは十分とは言い難く、現地調整がどこかで滞っていたことは否めない。総調整官として、頼氏に一定の責任が及ぶのは避けられないだろう。 (関連記事: 張鈞凱コラム:花蓮せき止め湖決壊で17人死亡 「シャベル超人」が自発的に救援の裏で問われる台湾民主主義の機能不全 関連記事をもっと読む

20250925-馬太鞍渓堰塞湖の崩壊で、山洪が光復郷の市街地に流れ込み、民衆は一時的に馬太鞍教会に避難した。(顔麟宇撮影)
発災初期は、ボランティア配置や地方政府との調整がたびたび不調に陥った。(写真/顏麟宇撮影)

公的機関は6日で調整完了、慈済は翌日にSOPを確立

9月23日午後の溢流発生後、物資やボランティアの配分をめぐる混乱が収束するまで、公的機関はおよそ4〜6日を要した。これに対し、慈済は対応が早かった。救援に関わった関係者によれば、溢流の翌24日早朝には地元の慈済ボランティアがすでに現地入りし、専門家チームが被害状況と範囲を分析。被害が比較的軽く直ちに支援に入れる地域、逆に人員や車両が立ち入れない重災地、医療ステーションの設置地点などを評価したという。同日中に救援計画を組み上げ、全台湾に向けたボランティア動員も発令していた。

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