米国が台湾積体電路製造(TSMC)の先端半導体を求める野心は、もはや隠されなくなった。米財務長官スコット・K・H・ベセンテ氏は「世界の先端半導体の99%が台湾に集中しているのはリスクが大きすぎる」と指摘し、3〜5割の生産能力を米国へ移転すべきだと表明した。続いて米商務長官ハワード・W・ルートニック氏も「米国は台湾半導体に過度に依存するわけにはいかない」と述べ、米台の半導体生産能力を「五五分」に分ける構想を推進すると発言。米国の自給率を現行の2%から40%へ引き上げ、いわば「米国版シリコンシールド」を築く必要があるとした。この発言は台湾の世論に大きな衝撃と波紋を広げている。
「護国神山」は転換点に? トランプ頼みの庇護論
米国による対台湾「暫定的」関税が導入されてからすでに2か月近く、台湾の伝統産業は悲鳴を上げている。そしていまや「シリコンシールド」の象徴までも揺らぎ始めている。ルートニック氏は従来の「シリコンシールド」論に異議を唱え、米国本土の半導体生産能力が十分であってこそ台湾を真に守れると強調した。
行政院経貿談判弁公室は「慎重に対応する」とのみコメントし、拒否の姿勢や交渉の詳細には触れなかった。対米交渉を担う鄭麗君副行政院長が5度も渡米しているにもかかわらず、依然として有効な対応策を提示できていない。
これに比べれば、前商務長官ジーナ・M・ライモンド氏の方がまだ「慎重」だった。ライモンド氏は「2030年までに世界の生産能力の20%を米国が占める」との目標を掲げるにとどまったが、ルートニック氏は「在任中に米国の自給率を2%から40%へ拡大する」と豪語。実現には5,000億ドルを超える投資と完全な半導体供給網の構築が不可欠とされる。TSMCだけでは達成は困難であり、韓国サムスンやグローバルファウンドリーズ、インテルを取り込むことでようやく「MAGA版半導体青写真」を描けるとみられている。
しかし、この青写真の実現には米国が台湾や韓国に強権的外交で圧力をかけ、地政学的戦略に従わせることが前提となる。現実には米国の半導体大手インテルですら経営基盤が揺らぐ中、トランプ政権は生産能力不足を補うために「力ずく」の手法を取ろうとしている。

台湾の生産能力を吸い上げ、安全保障は不透明
米国の半導体供給網戦略は、次第に「対台湾三部曲」として輪郭を見せ始めている。
第1段階:TSMCに米国内での工場投資を強要。表向きは経済協力だが、実際は技術移転が狙い。
第2段階:「五五分」によって米国本土の生産能力を大幅に拡張し、同時に台湾の生産能力を事実上掌握。
第3段階:米国が供給網を完全に支配し、国際市場の主導権を握る。結果として台湾の半導体中核地位は消え、周縁的な海外工場に押しやられる。 (関連記事: トランプ政権「米台半導体五五分」構想 TSMC投資が台湾経済を空洞化させる危機 | 関連記事をもっと読む )
長期的に見れば、この「不可能な任務」を達成するには、巨額の補助金だけでなく、長期的な人材育成計画や材料・製造装置の供給網「現地化」が不可欠である。これは単なる産業政策ではなく、事実上の国防戦略だ。台湾はこの枠組みで一見協力パートナーのように見えるが、実際には利用価値を吸い尽くされた後に切り捨てられる存在に過ぎない。まるで映画『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の聶小倩が黒山姥姥に養分を吸い取られる姿に重なる。