米ブルームバーグは9月2日、米政府がTSMC南京工場の「Validated End User(VEU)」資格を撤回すると報じた。これにより、同工場が米国製の半導体製造装置を輸入する際、従来の「グリーンチャンネル」(逐次申請不要)ではなく、案件ごとに個別申請が必要となる。
この決定は先週、サムスン電子とSKハイニックスの中国工場に対して行われた措置と同様であり、米国が中国をめぐる先端半導体規制を一層強化していることを示す。
株式市場への影響
報道直後、TSMCのADRは米株市場で一時7%近く急落。その後は下げ幅を1.6%まで縮小したものの、米国株式市場全体には売り圧力が強まり、台湾先物市場(台指期)の夜間取引でも200ポイント下落し、23,800ポイントを割り込んだ。

経済部「南京工場は全体の3%に過ぎず影響は軽微」
台湾経済部は同日深夜に声明を発表し、次のように強調した。
- 南京工場はTSMC全体の生産能力の約3%にとどまり、台湾半導体産業全体への影響は限定的。
- サムスンはDRAM生産の約20%、SKハイニックスは約40%を中国に依存しているが、TSMCは中国で16ナノ製造の南京工場のみが対象で、台湾全体の生産比率ではさらに低い。
- 台湾の産業競争力に深刻な影響はないと評価できる。
TSMC「工場稼働を維持へ」
TSMCは「すでに米政府から通知を受けている」と確認し、南京工場のVEU資格が2025年12月31日に失効することを明らかにした。同社は「米国政府と協議を続け、工場運営の継続に全力を尽くす」と述べている。
米国は特定企業狙いではない?
経済部は「サムスン、SKハイニックスも同様の措置を受けており、今回の対応はTSMCを狙い撃ちしたものではない」と説明。さらに、台湾企業に対し、米国の輸出規制強化に対応するため、輸出管理の法令遵守を一層徹底するよう呼びかけた。
今後の見通し
台湾経済部は「今後も米国政府および国内企業と密接に連携し、必要な支援を行う」と強調。台湾半導体産業の基盤と供給網の安定を維持する方針を示した。
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編集:柄澤南 (関連記事: 2ナノ半導体戦争:TSMC・サムスン・IntelにRapidus参戦、世界市場再編へ | 関連記事をもっと読む )
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