世界最大の半導体受託製造会社である台湾積体電路製造(TSMC)は、2ナノメートル世代の先端チップで1枚あたり3万ドル(約441万円)に達する高額な価格設定にもかかわらず、依然として予約が殺到している。これはTSMCが市場で価格の主導権を握っていることを如実に示している。
台湾の業界紙『DigiTimes』は、同社が顧客に対し2026年以降の先端プロセスの製造価格を引き上げる方針を通知したと報じた。対象は5ナノから2ナノまでの全世代で、5%から最大10%の値上げが予定されている。
米国のテック系メディア『Wccftech』も同報道を引用し、値上げの背景にはサプライチェーンの混乱や米国の高関税による利益圧迫があると指摘。加えて、TSMCはアジア拠点から米国への生産移管に伴う巨額投資、新台湾ドル高による為替損失も重なり、値上げは「避けられない決断」とされる。
主要顧客であるNVIDIAやAppleは製造コスト上昇を受け入れる必要があり、一方で旧世代プロセスについては一部割引の可能性も示唆されている。
報道はさらに、TSMCが米国で進める大規模投資が値上げの伏線となっていたと分析する。アリゾナ州の新工場建設だけでなく、先端パッケージングの独立供給網を米国内に整備する計画を掲げ、総額3,000億ドル(約44兆円)に及ぶ巨額投資を打ち出している。
それでもTSMCの競争環境は依然として盤石だ。世界市場のシェアは5割を超え、事実上のライバルは存在しない。これまで同社は価格設定において比較的慎重で、競争力のある水準を維持してきたことが顧客の信頼を集める要因となっていた。今回の値上げはその方針に変化をもたらす動きとして注目されている。
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