上海協力機構(SCO)は1日午前、中国・天津で第25回加盟国首脳理事会を開いた。本年度の議長国を務めるのは中国で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やインドのナレンドラ・モディ首相など、主要加盟国の首脳が出席した。
会議において中国の習近平国家主席は、今後の協力の基本方針として「求同存異(相違を認めつつ共通点を追求する)」「互利共贏(互恵と共栄)」「開放包容(開放と包摂)」「公平正義」「務実高効(実務的かつ効率的)」の「五大堅持」を打ち出した。習主席は、加盟国が多様な価値観や制度を持つことを踏まえつつ、共通の利益を追求すべきだと強調した。
さらに習主席は、加盟国間で直面する安全保障上の脅威に対応するため、「安全脅威と挑戦への対応総合センター」を早期に稼働させる必要性を指摘した。同時に、経済協力の基盤を強化するため、「上海協力機構開発銀行」を早急に設立・運営することの重要性にも言及した。
SCOの前身は「上海五カ国」であり、冷戦終結後の1996年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが国境安全問題に対応するために設立、2001年に現在の上海協力機構へと発展した。現在、SCOは10の加盟国、2つのオブザーバー国、14の対話パートナー国を擁し、中国、ロシア、インド、イランなどが加盟している。
上海協力機構(SCO)第25回首脳理事会が天津で開かれ、出席した各国首脳が記念撮影に臨んだ。(新華社より)
習近平、プーチン、モディの密接な交流 今回の首脳会議で大きな注目点となったのは、中国とインドの関係進展である。モディ首相が今回、7年ぶりに中国本土を訪れ、上海協力機構(SCO)首脳理事会に自ら出席したことは、中印関係の緩和を象徴する動きといえる。習近平国家主席は前日にモディ首相と会談し、中国とインドは二大東方文明の古国であり、世界で最も人口の多い両国であると同時に、グローバル・サウスの重要な一員でもあると指摘。両国は自国民の幸福、途上国の団結と振興、人類社会の進歩という重大な責務を担っていると述べた。その上で「隣友として相和し、互いに成就し合うパートナーとなり、『龍象共舞』を実現することこそが正しい選択である」と強調した。
一方、アメリカがインドに対して最大50%という世界最高水準の関税を課したことについて、一部には「トランプ大統領のこの措置は『インド太平洋戦略』を自ら瓦解させるものであり、結果的にインドを中国やロシアへと押しやることになる」との分析も出ている。
2024年10月23日、インドのモディ首相(左)、ロシアのプーチン大統領(中央)、中国の習近平国家主席(右)がロシアのカザンで開催されたBRICSサミットに出席した。(写真/AP通信提供)
習近平「多国間主義を実践し、覇権・強権に反対」 習近平国家主席は首脳理事会で演説し、24年前に上海協力機構(SCO)が設立された際、「互信、互利、平等、協議、多様な文明の尊重、共同発展の追求」という「上海精神」が確立されたと振り返った。この24年間、加盟国はその理念を堅持し、共同発展を図ることでSCOの発展を推進してきたと述べた。具体的には、国境地域における軍事分野の信頼醸成メカニズムを率先して構築し、国境を協力と互信の絆とし、矛盾や対立を適切に管理し、外部からの干渉を拒否することで平和と安定を維持してきたと強調した。
また習主席は、中国は「一帯一路」協力を率先して始動させ、多くのプロジェクトを着実に定着させ、投資協力を積極的に推進することで地域繁栄の原動力を一層強めたと指摘した。さらに、長期的な睦隣友好協力条約を締結し、「世代を超えて友好を続け、決して敵対しない」と宣言、民間交流ネットワークを構築することで、加盟国間の心のつながりを促進してきたと語った。
上海協力機構(SCO)加盟国首脳理事会が9月1日午前、天津で第25回会議を開催し、ロシアのプーチン大統領やインドのモディ首相が出席した。(CCTVより) 習近平国家主席は「我々は『協議・共建・共有』を理念とするグローバル・ガバナンス観を提唱し、真の多国間主義を実践してきた。国連などの国際組織と十分に協力し、常に国際的な公平と正義の側に立ち、文明の包容と相互理解を重視し、覇権や強権に反対してきた。こうした取り組みは世界の平和と発展に積極的な作用をもたらしている」と強調した。
さらに習主席は、現在の上海協力機構(SCO)は26カ国が参加し、経済規模は30兆ドルに迫る世界最大の地域組織に成長し、その国際的影響力と求心力は一層高まっていると指摘。「振り返れば、幾多の困難があったが、上海精神を実践したからこそ成功を収めることができた」と述べた。
習主席はまた、「未来を展望すれば、世界が動揺と変革に直面する中、我々は引き続き上海精神を堅持し、地に足をつけ、たゆまず努力することで、本組織の機能をより効果的に発揮していかなければならない」と呼びかけた。
続いて、習近平国家主席は「五大堅持」を打ち出し、その核心となるキーワードは「安全」と「経済」であると示した。
習近平、「5つの堅持」を発表 習近平国家主席はまず、「第一に、求同存異を堅持することである」と述べた。志を同じくすることは力であり優位性であり、異なる点を認め合うことは度量と知恵であると指摘。上海協力機構の加盟国はすべて友人でありパートナーである以上、相互の違いを尊重し、戦略的な意思疎通を保ち、集団的な合意を形成し、団結と協力を強化する必要があると強調した。その上で、協力の枠組みを広げ、各国の強みを活かし、この地域の平和・安定と発展・繁栄を促進する責任を共に担わなければならないと訴えた。
習近平国家主席が上海協力機構(SCO)加盟国首脳理事会第25回会議を主宰した。(新華社より) 第二に、互利共栄を堅持することである。発展戦略の連携を深化させ、「一帯一路」を高品質で共に建設し、協議・共建・共有を通じて地域の発展機能を強化し、人々の福祉を向上させる必要があると述べた。さらに、中国の巨大市場の優位性と各加盟国の経済的補完関係を活かし、貿易・投資の円滑化を推進し、エネルギー、インフラ、グリーン産業、デジタル経済、科学技術革新、人工知能などの分野で協力を強め、相互の成果を分かち合いながら共に未来を切り開き、近代化への歩みを進めるべきだと訴えた。
第三に、開放と包容を堅持することである。ユーラシア大陸は古代文明を育み、東西の交流を導き、人類の進歩を推し進めてきた歴史を持つと指摘。各国の人々は古来より互いに交流し、長所を学び合ってきた。上海協力機構は人文交流で相互理解と親近感を深め、経済協力で互いに力強く支え合い、「利己利人」「美美与共」「和合共生」の文明の花園を共に築くべきだと語った。
第四に、公平と正義を堅持することである。正しい第二次世界大戦史観を堅持し、冷戦思考や陣営対立、いじめ的行為に反対し、国連を中核とする国際システムを守り、世界貿易機関を軸とする多国間貿易体制を支持すると表明。さらに、平等で秩序ある多極化、包摂的で裨益性のある経済グローバル化を推進すべきだと強調した。
第五に、実務性と効率性を堅持することである。上海協力機構の改革を持続的に推進し、資源投入と能力構築を強化し、組織メカニズムをより整備し、意思決定を科学的にし、行動をより効率的にする必要があると述べた。そのために、安全脅威・挑戦への対応総合センターや禁毒センターの早期稼働、上海協力機構開発銀行の早期設立を呼びかけ、加盟国の安全保障と経済協力をより強力に支える基盤とすべきだとした。