台湾と米国の関税交渉は数か月にわたり続いており、8月25日には卓栄泰・行政院長が関係部会の首長を率いて立法院で特別報告を行った。対米交渉を担う鄭麗君・行政院副院長も初めて質疑に応じ、台湾として10月末までに交渉をまとめたい意向を示した。
劉大年氏「米国との交渉は常に不対称」
中華経済研究院区域発展研究センター主任の劉大年氏は、米国との交渉について「米国の交渉力は極めて強く、しかも覇権的立場にあるため、各国はいずれも不対称な条件で臨まざるを得ない」と指摘した。
劉氏は《風傳媒》の番組「下班國際線」に出演し、台湾の輸出構造について説明した。台湾の輸出は中国向けが約28%、米国向けが約29%に達し、両市場を合わせると全体の6割近くを占めているという。しかし現在、どちらの市場も困難に直面しており、リスク分散が急務だと強調した。
その一策として、欧州市場の開拓が重要であるとし、「台湾の欧州向け輸出比率は長年1割強にとどまっており、総合的な戦略を構築する必要がある」と述べた。
短期対応と長期戦略の両立が必要
劉氏はさらに、台湾を含め各国の対米関税対応は短期的・応急的な色彩が強いと指摘。「応急措置は必要だが、長期的には包括的な対策を立てなければならない」と語った。
番組司会者が「台湾企業は『スーツケース一つで世界を駆ける』ほど柔軟で機動力があるのではないか」と問いかけると、劉氏は「確かに台湾はかつて中国大陸に依存していた輸出を分散し、米国やASEANにシフトしてきた。しかし現在も困難に直面している」と率直に答えた。
台湾の地域貿易協定突破の鍵は「中国要素」
劉氏はまず、米国市場での台湾の不利な立場を強調した。米国は韓国に対して15%の対等関税率を設定しているが、韓国は米韓自由貿易協定により、米国向け輸出品の約99%がすでに無関税だという。
一方、台湾は20%の関税率に加え、さらに米国側の3.3%の関税を上乗せされるため、競争条件で大きな差が生じている。劉氏は「台湾製品は米国市場で常に不利な立場に置かれている」と指摘した。
ASEAN市場でも苦戦 「協定なき不利」
台湾製品は東南アジア諸国連合(ASEAN)市場でも同様の課題に直面している。台湾はASEANと自由貿易協定を結んでいないため、輸出時に関税が課される。対照的に、日本、韓国、中国はすでにFTAを締結済みで、台湾は長年輸出面で不利を強いられてきた。
この状況を受け、劉氏は「台湾は地域経済統合やRTA分野で一層の努力が求められる」と強調した。
CPTPP加盟を阻む「中国要素」
「では、地域貿易協定の突破口を阻む最大の要因は何か」との問いに対し、劉氏は「台湾人が最も好まない要素、すなわち中国問題だ」と明かした。現在、中国と台湾はいずれも環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)への加盟を目指しているが、中国は過去に台湾の加盟を妨害してきた経緯がある。