ロシアと中国が行っていた第6回の合同巡航は、8月20日に西太平洋のある海域で解散式を行い終了した。中国側からは東部戦区海軍の052D型駆逐艦「紹興」(134)と903型総合補給艦「千島湖」(886)、ロシア側からは太平洋艦隊の大型対潜艦「アドミラル・トリブツ」(564)が参加していた。
同じ27日12時30分、台湾国防部は「8時48分以降、殲-16戦闘機や空警-500早期警戒機、無人機を含む各種機体計33機が出動し、海軍艦艇とともに『合同戦備パトロール』を実施した」と発表した。そのうち20機は台湾海峡の中間線を越え、北部・中部・南西空域に侵入していた。ちょうど人民解放軍が9月3日の軍事パレード(いわゆる「九三軍事パレード」)を控える中で、東部戦区が大規模な警戒パトロールを展開した格好となり、台湾国内メディアの大きな関心を呼んでいる。
今回の中露合同巡航は8月5日に始まり、中国東部戦区の「紹興」(134)と「千島湖」(886)、そしてロシア太平洋艦隊の「アドミラル・トリブツ」(564)が西太平洋北部で遠洋任務を実施し、20日に解散した。当初は「これまでで最も小規模な合同巡航」とみられていたが、実際にはその裏で中露双方のキロ級潜水艦と随伴艦艇が日本海から東シナ海へ進入していた。筆者は当初からこの「近海」動向を注視し、両国が水上艦隊だけでなく潜水艦部隊でも協力している可能性を指摘してきた。
実際に、中国北部戦区海軍の052D型駆逐艦「ウルムチ」(118)、927型救難艦「西湖」(841)が、東部戦区所属のキロ級潜水艦(371号艇)を護衛し、ロシア側もフリゲート艦「スレムニー(響亮)」と救難曳船を派遣して潜水艦支援編隊を組成。これらが8月13日から15日にかけて対馬海峡を通過し東シナ海に入った。
8月20日、中露両国は合同巡航終了を発表した一方で、ロシア側は「太平洋艦隊の通常動力潜水艦『ヴォルホフ』が人民解放軍潜水艦とともに、日本海と東シナ海で合意済みのルートに沿って合同パトロールを実施した」と公表した。その後、各潜水艦は母港に帰還している。
これにより、第6回合同巡航は水上戦力が「遠海」で、西太平洋の第一列島線外側に展開する一方、潜水艦部隊は「近海」で第一列島線内側に展開するという二正面作戦の形を取っていたことが明らかになった。とりわけ今回、中露双方の通常動力型潜水艦が合同巡航に初めて投入されたことは注目に値する。米日同盟の海軍が東シナ海へ進入することを想定した防衛演習の性格を持っており、将来的には両国が通常動力潜水艦だけでなく原子力潜水艦を遠洋での合同巡航に投入する可能性も示唆している。
中露の潜水艦が東シナ海で合同巡航を行った同じ日に、中国人民解放軍は台湾周辺で海空合同巡航を実施した。
さらに、最近、一部の中国軍事 専門家や学者の間で「習近平国家主席が公開行事に出席した際、健康状態に不安があるのではないか」「政軍高層に汚職が相次ぎ、軍内での指導力が揺らぐのではないか」といった憶測が流れている。しかし、こうした論調は裏付けのない臆測にとどまり、その後の検証も難しい。実際には、習近平氏の政権発足以降、国内外でさまざまな憶測が繰り返されてきたが、台海を含む軍事行動や中国軍関連の論評はすでに新味を失っている。
中国は党の統制が強固であり、集団指導体制を採用してきた。新中国成立以来、政軍の極めて高位の要職者が不正に問われても、それが指導者の地位を揺るがすことはなかった。とりわけ2012年に習近平氏が就任して以降、中国共産党中央委員会総書記、国家主席、中央軍事委員会主席を兼任する「三位一体」の体制が確立されている。中央軍事委員会の高官や各部の中堅将校が汚職で摘発されても、中国の軍事発展の歩みは鈍らず、対台湾作戦の準備も一切揺らぐことはなく、習近平氏の地位も全く動揺していない。
また、一部では「九三軍事パレード(9月3日の抗日戦勝記念パレード)」 に合わせて、解放軍東部戦区が実際の「海空合同演習」を行い、パレードの迫力を高める狙いがあるとの見方も出ている。しかし筆者は、この「九三軍事パレード 」は国家戦略の一環であり、歴史を想起し建軍強化を正当化する性格が強いと考える。現代的な軍事技術を誇示することで、外部からの干渉を抑止する狙いがあるからだ。他方で、東部戦区が日常的に実施している「合同戦備警巡」や、複数の兵科を動員する対台湾演習は、性質としては「戦役級」に位置づけられる軍事行動である。
振り返れば、8月7日午前8時10分から東部戦区は戦闘機や無人機を含む計47機、艦艇6隻を台湾周辺に展開し「合同戦備警巡」を実施した。これは台北で開かれた「凱達格蘭・フォーラム」で、賴清徳総統や英国のボリス・ジョンソン元首相が中国を批判したこと、さらにジョンソン氏が8月4〜5日に台湾を訪れ、賴総統や蔡英文前総統と会談したことに対応した動きとみられる。( 関連報道: 陸文浩の見解「英ジョンソン氏初訪台 賴総統と示す対中姿勢と中国軍の動き」 ) 実際、7月30日にも同様の「合同戦備警巡」が行われており、事前の兆候はすでに表れていた。
その後も8月8日から26日にかけ、東部戦区は小規模ながら台湾周辺の海空域に兵力を展開し続けた。筆者は当初、この背景には9月3日に北京・天安門広場で開催される「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」への準備があると見ていた。閲兵式や地上・空中パレードに備えて各戦区が北京に兵力を抽出し支援する一方で、境界地域や離島を管轄する部隊は「休日態勢」で戦備警巡を続けるのではないかと推測した。
ところが8月26日、状況は大きく動いた。外交部の公式サイトには、米国議会上院・下院の超党派議員4人──マルシャ・ブラックバーン上院議員(共和党)、ゲイリー・ピーターズ上院議員(民主党)、ジョン・ムリナール下院議員(共和党、中国問題特別委員会委員長)、ラジャ・クリシュナムルティ下院議員(民主党、同委員会筆頭議員)が連名で、国際民間航空機関(ICAO)のサラザール事務総長宛に書簡を送ったことが掲載された。書簡は、中国が7月に一方的にM503航路と接続するW121航路を開設したことを「インド太平洋の安定と航空安全を深刻に脅かす」と非難し、ICAOに台湾を第42回総会や技術会議に招待するよう求めていた。
国防部によると、26日午前6時から翌27日午前6時までに、中国軍機23機(うち16機が台湾海峡中間線を越え北部および南西空域に侵入)、艦艇7隻、公務船1隻を確認した。特に浙江省と福建省の境界沖から金門以南にかけて、戦闘機や無人機計14機が「突防演練」を実施。20日に大量の中国ロールオン・ロールオフ船(Ro-Ro船)が泉州沖に集結していた経緯を踏まえ、筆者は両者の関連性を疑っている。さらに同日午前6時25分から11時50分にかけ、広東省南澳島沖では対潜哨戒機Y-8を含む編隊9機が台湾防空識別圏の南西縁に沿って活動。これに対し米軍偵察機もバシー海峡を経て接近し、汕尾沖の紅海湾に到達したRo-Ro船団や解放軍の上陸用艦艇との「軍民融合」訓練を監視したとみられる。
国防部は27日午後0時30分に再度声明を発表。午前8時48分以降、殲-16や空警-500など各種戦闘機・無人機計33機を確認、そのうち20機が中間線を越えて北部・中部・南西空域に侵入し、艦艇と連携して活動していたとした。
同日午後、頼清徳総統は「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の訪問団と会談し、台湾への具体的支援に謝意を表したうえで「今後も防衛力を高め、民主的パートナーと連携して抑止力を発揮する」と強調した。IPACは2024年に台北で年次総会を開き、中国が国連総会2758号決議を恣意的に解釈し台湾の国際空間を制限していることに反対する決議を採択しており、中国側の反発を招いていた。実際、昨年8月3日にも解放軍が戦闘機28機を投入する「合同戦備警巡」を実施している。
筆者の長年の観察に基づけば、中国軍が台湾周辺で「合同戦備警巡」を行う主な要因は、外国の要人(現職の三権の長級、あるいは影響力を持つ元首脳)の訪台や台湾独立を示唆する発言、あるいは国際組織が台湾を支持する動きなどである。今回も、IPAC訪問団の来台と東部戦区の演習開始が明確に連動しており、一部学者が述べる「九三パレードを盛り上げるため」という説明は妥当ではない。