沈旭暉コラム:ロシア・ウクライナ和平会議の三つの構造的難題

2025-08-28 13:20
プーチンとゼレンスキーが直接対談する可能性が高まる中、ロシア・ウクライナ間の構造的な対立はトランプの調停によって必ずしも解決されるとは限らない。(画像/AI生成)
プーチンとゼレンスキーが直接対談する可能性が高まる中、ロシア・ウクライナ間の構造的な対立はトランプの調停によって必ずしも解決されるとは限らない。(画像/AI生成)
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プーチン氏とゼレンスキー氏が直接会談に臨む可能性が高まるなか、各方面がこれまで避けてきた最も厄介な問題に向き合わざるを得なくなっている。戦争は最終的に交渉によって終結するものであり、概念的にはこれは否定できない。たとえ「城下の盟」であっても、交渉という形式を取らざるを得ないのである。問題は、どのように交渉するかに加え、どれほどの時間を費やすかという点である。現在のロシアとウクライナの構造的な対立は、アメリカの仲介によって折衷点を見いだすことができるのか。そしてトランプ氏の役割が、新たな変数を生み出すことになるのかという疑問が残されている。

プーチン氏が「準NATO型の安全保障」に同意する理由は何か。

2014年、ウクライナとロシアは東部問題をめぐり《ミンスク合意》に至った。協議はわずか1か月足らずでまとまり、フランスとドイツも保証人として加わった。しかし今となっては《中英共同声明》と同様、瞬く間に「歴史文書」と化したことが明らかである。1954年には、朝鮮戦争と第一次インドシナ戦争(フランス対ベトナム)の終結を議題とするジュネーブ会議が開催され、4月から7月まで3か月にわたり協議が続き、比較的効率的に結論が導かれたといえる。これに対し、アメリカが深く関与したベトナム戦争では1968年に交渉が始まり、1973年に《パリ和平協定》が署名されるまで、実に5年近くの紆余曲折を経た。しかも調印後、南ベトナムは瞬く間に崩壊し、唯一の勝者はノーベル平和賞を不当にかすめ取ったキッシンジャー氏だけであった。

各種の事例を参照すると、現在の客観的環境下でウクライナが武力によってすべての失地を奪回できる確信がないかぎり、最も望ましいのは韓国の休戦後における南韓のように、在韓米軍(または他の同盟軍)が安全保障を担保する代わりに、一部領土の割譲という屈辱を受け入れることである。さもなくば南ベトナムのように、空文同然の合意に署名しても結局は何も得られないという結末になりかねない。概念としては誰もが理解するところであるが、実務としてどう「取引」を成立させるのか。以下の三つの難題をめぐっては駆け引きが避けられず、不確実性に満ちている。

第一に、ロシアが西側によるウクライナの「安全保障」を無条件で受け入れるのかという点である。プーチン氏はアラスカ・サミット後、ウクライナには安全保障が必要だと自ら明言しており、これは重要なシグナルである。ただし「安全保障」という概念は抽象的であり、米側が現在観測気球的に流しているとされる案のうち、どこまでがロシア側の同意表明と重なるのかは大きな疑問である。

プーチン氏が開戦を正当化した理由は「ロシアの国家安全の防衛」であり、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟は容認できないというものであった。もし西側が提示する保証が「準NATO型」の枠組みで、NATO部隊がロシア国境沿いに駐留し、ウクライナが再び侵攻を受けた際には直ちにロシアと交戦し得る態勢を整えるという内容であれば、ロシア側の視点からは、占領領域の多寡にかかわらず戦前より危険が増すのではないか。他方、ミンスク合意のような弱体な枠組みであれば、ウクライナが受け入れるはずがない。イタリアのメローニ首相はトランプ氏との会談後の説明で、こうした「安全保障」は1週間以内に文書化されると述べたとされ、米軍首脳もこれらの条文の策定を進めているとの報道がある。詳細は近く明らかになるはずである。

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