大相撲・九州場所優勝 ウクライナ出身21歳・安青錦新大が横綱・豊昇龍を撃破、史上初の快挙

ウクライナ出身の力士・安青錦新大(左)が、九州場所で大相撲初優勝を果たした。(写真/AP通信提供)
ウクライナ出身の力士・安青錦新大(左)が、九州場所で大相撲初優勝を果たした。(写真/AP通信提供)
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大相撲九州場所がこのほど千秋楽を迎え、今年優勝の栄冠を手にした力士は、日本出身でもなく、常連となったモンゴル出身力士でもなかった。21歳でウクライナ難民として来日した安青錦新大が、千秋楽の大一番でモンゴル出身の横綱・豊昇龍を破り、日本相撲の最高峰の大会で優勝した史上初のウクライナ出身力士となった。

安青錦はウクライナ出身で、本名はダニーロ・ヤブグシシン(Danylo Yavhusishyn)。家族は中西部の町ヴィーンヌィツャ(Vinnytsia)に暮らしてきた。公開資料によれば、安青錦は7歳から相撲の本格的な訓練を受け始め、同時に柔道やフリースタイルレスリングも学んできた。ウクライナではジュニア選手権で優勝を果たし、技術を磨き続けた結果、17歳で国内タイトルを3度獲得している。本人によると、幼い頃から元横綱・貴乃花と朝青龍の大ファンだったという。

Aonishiki became the first sumo wrestler from Ukraine to win a grand tournament after he defeated Yokozuna Grand Champion Hoshoryu in a playoff on Sunday.https://t.co/aC8bU2zg17

— NHK WORLD News (@NHKWORLD_News)November 23, 2025

Aonishiki wins elite sumo title, draws praise from fellow Ukrainianshttps://t.co/fTApkUpaxp

— Kyodo News | Japan (@kyodo_english)November 24, 2025

順調に歩んでいた競技人生に暗転が訪れたのは2022年、大学進学を控える中でロシア軍によるウクライナ侵攻が始まったことだった。安青錦は家族とともに直ちに国外へ避難し、ドイツに渡って難民申請を行った。一方で本人は、関西大学のコーチが仲介に入り、日本行きの道が開かれ、安治川部屋に入門して大相撲の世界へと足を踏み入れた。

身長182センチの安青錦は、2023年9月に初めて本場所の土俵に立ち、そこから驚異的な速度で番付を駆け上がった。2025年3月に幕内入りを果たし、同年11月には早くも三役の関脇に昇進した。事実、キャリア初期から連勝街道を走り、デビューから20連勝という記録も打ち立てている。

安青錦新大は、日本の大相撲界で獅司(セルヒー・ソコロフスキー)に続く、ウクライナ出身として2人目の幕内力士である。 (関連記事: 高砂部屋の朝稽古を至近距離で アスコットが「相撲文化体感ツアー」を販売開始 関連記事をもっと読む

来たウクライナの相撲力士安青錦新大(左)、九州大相撲決勝でモンゴルの横綱豊昇龍を破り、生涯初の優勝を果たした。(AP)
ウクライナ出身の力士・安青錦新大が、九州場所の千秋楽でモンゴル出身横綱・豊昇龍を破り、初優勝を飾った。(写真/AP通信提供)
来たウクライナの相撲力士安青錦新大(右)、九州大相撲決勝でモンゴルの横綱豊昇龍を破り、生涯初の優勝を果たした。(AP)
九州場所の決勝で横綱・豊昇龍を下し初優勝を果たした、ウクライナ出身の安青錦新大(右)。(写真/AP通信提供)
年僅か21歳、来たウクライナの相撲力士安青錦新大は、ウクライナ力士として初の優勝を果たした。(AP)
21歳で来日したウクライナ出身の力士・安青錦新大が、史上初のウクライナ人優勝力士となった。(写真/AP通信提供)

試合で出会い、人生を変える恩人に

優勝の感想を問われた安青錦は、両親への感謝に加え、自らが日本で夢を追うきっかけを与えてくれた恩人として、関西大学相撲部の山中新大コーチの名を挙げた。朝日新聞の過去のインタビューによれば、山中コーチは2019年、大阪で開催されたジュニア大会でこのウクライナの少年と出会い、短い会話ながらも強い印象を受けたという。大会後、山中コーチはインスタグラムを通じて彼に連絡を取り、その後も交流を続けながら、日本の相撲文化についてさまざまな知識を伝えてきた。

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