米中首脳が最近行った電話会談をめぐり、双方が発表した内容に大きなずれが生じている。中国国営メディア『新華社』は習近平国家主席が「台湾問題に関する原則的立場」を明確に示し、ロシア・ウクライナ戦争まで踏み込んで議論したと報じた。一方、トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」で公表した声明の中で、台湾を完全に言及しなかった。フェンタニル、大豆その他の農産物など経済・貿易分野の話題に終始した。
両者のメッセージの落差は、選挙期間にある米国が敏感案件の扱い方を調整しているのではないかとの観測を生んでいる。
電話会談では何が話されたのか
トランプ氏は「Truth Social」で、今回の通話を「非常に楽しいものだった」と説明し、10月下旬の釜山会談に続くやり取りだと述べた。トランプ氏は「両国が頻繁なコミュニケーションを維持することが重要だ」と強調し、今後の対話への期待を示した。
双方が一致して言及したのは経済・貿易協力だ。トランプ氏は「米中両国はアメリカの偉大な農民のための重要な合意を達成した」と述べ、大豆、その他の農産物、フェンタニル対策などが議論されたと説明した。合意履行でも進展があり、いまは「より包括的な視点に目を向ける段階だ」と主張した。
さらにトランプ氏は、習近平氏から招待を受け、来年4月に北京を訪問する可能性を明らかにした。一方で、トランプ氏自身も「対等な形」での相互訪問を提案し、習近平氏が来年後半に国賓待遇で訪米するとの見通しも示した。
習近平 vs トランプ 台湾問題における二国の発表内容はどこまで違ったのか
もっとも大きな注目点は、中国側と米側が「敏感な議題」について全く異なる内容を公表した点だ。
『新華社』は24日深夜、習近平氏が通話中に「台湾問題における中国の原則的立場」を明確に示し、「台湾の中国復帰は戦後国際秩序の重要な構成部分だ」と発言したと報道。さらに「かつて中米は協力してファシズムや軍国主義と戦った。いま両国は第二次大戦の勝利の成果を共に守るべきだ」と強調した。
『新華社』はまた、トランプ氏が習氏を「偉大な指導者」と称賛し、中国側の台湾観に「完全に同意した」とも伝えた。
しかし、こうした中国側の主張は、トランプ氏の「Truth Social」投稿とは完全に一致しない。トランプ氏の声明は、大豆とフェンタニル、農産物、そして来年4月の訪中計画以外には一切触れず、台湾もウクライナもゼロ。敏感な問題を避けた米側の発表は、中国の通稿と鮮やかな対照をなした。
なぜ今、中国は台湾問題をわざわざ強調したのか 日本への「間接圧力」との見方も
今回、中国側が通話内容のうち「台湾」だけを強調して公にした背景には、東アジア情勢の緊張がある。日本では、高市早苗首相が国会で「台湾有事」を言及したことで、日中関係が再び緊張の局面にある。
こうした中で中国は、習近平氏がトランプ氏と台湾問題を協議したと発表。これは「米国が台湾問題にどう反応するか」を試す意図があるとの分析が出ている。さらに専門家の間では、中国が今回の通話内容を利用し、高市氏ら日本側保守政治家に「間接的な圧力」をかける狙いがあるのではないかとの見方もある。
一方で、トランプ氏が台湾問題を完全に削り、経済協力のみを強調した結果、中国側が期待した「国際世論への効果」は複雑化し、むしろ双方のメッセージの食い違いが際立つ形となった。
習近平・トランプ通話、それぞれの国で別メッセージ 今後の米中関係の行方
今回の発表の食い違いは、米中の関心領域の違いを浮き彫りにした。トランプ氏は、農産物、フェンタニル、公衆衛生協力、そして訪問外交といった具体的・実務的な分野に比重を置いた。一方で中国側は、この通話を「台湾を含む核心的利益」を示す場として利用した。
来年4月に予定されるトランプ氏の訪中が実現すれば、米中間のハイレベル対話は一段と加速すると見られる。ただし経済協議の履行、台湾を含む地政学的問題の扱いなどは、今後も国際社会の主要な注視点であり続けるだろう。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 習近平氏「台湾回帰は戦後秩序の一部」 台湾・卓栄泰行政院長「2300万人に『回帰』の選択肢はない」と反論 | 関連記事をもっと読む )
















































