護国神山は空洞化するのか6》半導体は「二つの体系」が並走する時代へ 米国の先端規制は中国を止められず、むしろ強靭化を促す

2025-11-23 20:23
米中の貿易・技術摩擦が長期化するなか、米国による先端プロセス規制の結果、半導体産業は「二つの体系」が並走する構図を強めつつある。(写真/AP通信)
米中の貿易・技術摩擦が長期化するなか、米国による先端プロセス規制の結果、半導体産業は「二つの体系」が並走する構図を強めつつある。(写真/AP通信)
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米国が先端プロセスや高度チップの輸出を制限した狙いは、中国の技術アップグレードを「封じ込める」ことにあった。だが実際には、世界の半導体産業を二つの並行する技術体制へと押し分ける結果になりつつある。

一方の陣営では、最先端ノードと高度パッケージングが友好国ブロックに囲い込まれ、他方の中国は、材料の国産化、成熟プロセスの量産拡大、パワー半導体の強化へと軸足を移し、自給体制の厚みを急速に補っている。外資系機関のデータも、この変化が着実に積み上がっていることを静かに示している。

最もわかりやすいシグナルは、設備輸入と資本支出の回復だ。モルガン・スタンレーによれば、中国の半導体製造装置の輸入額は2025年6月に約30億ドルへ達し、前年比成長率は14%に回復。3カ月移動平均も、5月の7%減から翌月には+2%に反転した。同社は下半期の設備投資について「上半期を明確に上回る」と指摘しており、米国の制裁や審査が続く中でも、中国側が別ルートで拡産準備を整えている現実を浮かび上がらせる。

材料分野の変化はさらに重大だ。ゴールドマン・サックスは、8インチ/12インチのシリコンウェハー国内供給率が2024年の64%/41%から、2027年には78%/54%へ上昇すると予測する。また、SiC(炭化ケイ素)基板の年間生産能力は2024〜2027年の間に250万枚から750万枚へ拡大し、自国の「生産能力/需要」カバー率は87%に達すると見込まれる。材料の国産化が進めば、後工程やパッケージ、モジュール分野における安定性と制御力は飛躍的に高まる。

中國半導體、晶片(芯片)、科技戰、5G、華為、長鑫存儲。(美聯社)
モルガン・スタンレーの分析によれば、各種の制限がかかる中でも、中国の半導体産業は迂回ルートや別の手段を通じて、増産に向けた体制づくりを着実に進めている。写真はイメージで、本文の事例とは直接関係しない。(写真/AP通信)

成熟プロセスの大躍進 中国が世界の価格決定権を揺さぶる

さらに重要なのは、中国が成熟ノードの生産能力を相次いで増強し、世界の価格形成に影響を及ぼし始めている点だ。

パワー半導体を例に取ると、中国のIGBT市場規模は2024年の42.33億ドルから2030年には27.98億ドルへ縮小が見込まれている。自動車市場が調整局面に入り、産業制御や電力網用途が新たな支えとなる構図だ。

こうした需要構造の変化と国産供給力の拡大が重なり、グローバルASP(平均販売価格)や粗利には長期的な下押し圧力がかかる。「量で勝負し、価格でシェアを奪う」戦略は、28/40/55nmといった成熟ノードで特に顕著だ。

同時に、新素材をめぐる新たな競争も進みつつある。ガリウムナイトライド(GaN)の中国市場は、急速充電器から家電、自動車、データセンターへと用途が広がり、ゴールドマン・サックスは2030年に16.11億ドル規模へ到達すると予測する。中国メーカーが参入を続け、激しい価格競争が発生。海外サプライヤーは粗利圧迫にさらされている。これはサプライチェーン再編による「構造的な引き裂き」であり、世界の半導体産業が「二つの体系」へと分かれていく動きの象徴と言える。

大量重型卡車停靠在中國重慶貨櫃碼頭。(美聯社)
中国の半導体メーカーが相次いで市場に参入し、激しい価格競争が生まれている。写真はイメージ。(写真/AP通信)

先進プロセスの制限 加速しているのは停滞ではなく二重構造化

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