エヌビディアの輸出規制に転機か ジェンスン・ファン氏がトランプ政権を説得、対中販売に光明

NvidiaのCEOジェンスン・ファン氏(右)とトランプ米大統領が並んで記者会見に臨む様子。(写真/AP通信)
NvidiaのCEOジェンスン・ファン氏(右)とトランプ米大統領が並んで記者会見に臨む様子。(写真/AP通信)
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Nvidia(エヌビディア)は好調な業績を維持する一方で、CEOのジェンスン・ファン氏(Jensen Huang)を長く悩ませてきた対中チップ輸出規制に、ここへ来て追い風となる動きが伝えられている。米連邦政府が方針転換する可能性が高まっており、事情に詳しい関係者によれば、ホワイトハウスの官僚が議会に対し、中国やその他の対立国へのAIチップ販売を制限する措置に反対するよう働きかけているという。

仮にホワイトハウスの姿勢が事実であれば、Nvidiaにとって新たな勝利となる。ファン氏はこれまで禁令に公然と異議を唱え、ドナルド・トランプ大統領に直接訴えるためホワイトハウスを訪れ、米国内の顧客には供給不足の問題は存在しないとして、規制の必要性はないと主張してきた。

ブルームバーグは、この「棚上げ」された新法案が「GAIN AI法案」と呼ばれ、すべてのチップメーカーに対し、管理対象となるAIチップを中国やその他の武器禁輸国へ輸出する前に、米国のバイヤーが優先的に購入できる仕組みを設ける意図があったと報じた。いわば「アメリカ・ファースト」を掲げ、トランプ政権の関心と支持を引きつける狙いがあった一方、NvidiaやAMDが最先端製品を中国に販売することを事実上禁じる内容でもあった。

GAIN AI法案が最終的に成立しなければ、マイクロソフト(Microsoft)を含む米大手クラウド企業にとっても痛手となる。これら企業は制限措置を強く支持しており、中国の競合企業より先に高性能ハードウェアを入手したい考えがあるほか、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など中東のデータセンターへ先進チップを供給するための道を開きたいとの思惑がある。

輝達在中国供應鏈促進博覽會的攤位。(美聯社)
中国のサプライチェーン博覧会に設置されたNvidiaのブース。現地での存在感をアピールした。(写真/AP通信)

ひとつ阻止しても別の規制案が控える

しかしGAIN AI法案を阻止したとしても、議会が対中チップ規制を止めるわけではない。ホワイトハウスの姿勢変化を知った一部議員は、すでに「2025年安全與可行出口法案(SAFE Act)」と呼ばれる新たな提案の策定に着手している。

報道によれば、このこれまで詳しく報じられてこなかった草案は、輸出管理を担当する米商務省に対し、米国の現行基準を上回るAIチップの対中販売を拒否するよう求める内容で、この禁令の有効期間は30カ月に及ぶという。SAFE法案は、NvidiaのH20より先進的な製品の輸出申請をすべて拒否することを商務省に義務づける、極めて厳しい規制となっている。

米国は2022年以降、先進AIチップが中国に軍事的優位を与える可能性を懸念し、Nvidiaに対する対中輸出規制を開始。過去3年間で規制は段階的に強化され、トランプ氏が政権に復帰した後の今年4月には、中国市場向けの「特別仕様」H20チップの販売を禁止する追加措置が発表された。

輝達執行長黃仁勳出席中国供應鏈促進博覽會。(美聯社)
Nvidiaのジェンスン・ファンCEOが中国で開かれたサプライチェーン博覧会に出席した。(写真/AP通信)

もっとも、トランプ政権の政策には一貫して商業交渉的な性格が強いことも広く知られている。

ファン氏による働きかけの結果、トランプ政権はすでにNvidiaに対し、ガルフ諸国向けのAIチップ販売を許可したほか、中国市場へのH20販売禁止の解除にも動いたとされる。ただしその背景には、中国での売上の15%を米政府が手数料として受け取るという、「法のグレーゾーン」を利用した非公式の取引が存在すると伝えられている。

黃仁勳在輝達GTC的大會介紹Blackwell晶片。(翻攝輝達GTC大會直播影片)
ジェンスン・ファン氏がNvidiaの開発者会議「GTC」で、新世代GPU「Blackwell」についてプレゼンテーションを行った。(画像/Nvidia GTCライブ配信より)

Blackwellにも緑灯か

興味深いのは、4月時点で強硬な姿勢を見せていたトランプ氏が、現在ではNvidiaが将来的に中国で最新のBlackwellチップ「特供版」を販売する可能性に対して、前向きな意向を示し始めている点だ。ファン氏も直近の決算会見で、「当社は卓越した製品により、中国市場へ再びアクセスできる機会を強く望んでいる」と語った。

さらに財務長官のスコット・ベッセント氏も、BlackwellがNvidiaの最先端製品ではなくなる段階(12〜24カ月後)では、中国向け販売を認める可能性を示唆しているという。

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編集:田中佳奈

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