米中間でAIチップをめぐる摩擦が続く中、中国が再び国外技術の締め出しを強化している。ロイター通信によると、中国政府は新たなデータセンター事業において「国産AIチップのみ使用」を求める内部指針を非公式に発出し、国家機関や国営企業が運営するセンターでの外国製チップ導入を事実上禁じたという。
複数の関係者によれば、監督当局は過去数週間、建設が3割以下の進捗段階にあるデータセンターに対し、速やかに外国製チップを撤去するか、購入計画を取り消すよう通達。すでに進行中の案件については個別判断とする方針だという。
Exclusive: The Chinese government has issued guidance requiring new data center projects that have received any state funds to only use domestically-made artificial intelligence chipshttps://t.co/XyaXiJbCIC
— Reuters (@Reuters)November 5, 2025
この新たな動きは、アメリカと中国の間でAI関連半導体をめぐる緊張が長期化する中で生じた。NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする米半導体大手は、相次ぐ輸出規制で中国市場を失いかけている。先週、トランプ米大統領と習近平国家主席が釜山で会談した際も、先端チップをめぐる議題は「扱わない」とされていたが、北京の対応は米側の輸出制限に対抗する姿勢を改めて示した形だ。
今回の指針は、NVIDIAが中国市場で再起を図る希望を打ち砕く一方、Huawei(華為技術)をはじめとする国内メーカーにとっては販売機会を拡大する追い風となる。もっとも、この通達が全国的に適用されるのか、特定の地域に限定されるのかは明らかでない。

NVIDIAのほか、AMDやインテルも中国向けにデータセンター用チップを供給しているが、ロイターの取材に対し、中国国家インターネット情報弁公室や国家発展改革委員会はコメントを控えた。NVIDIAとAMDも反応を示さず、インテルは回答を拒否した。
政府の入札資料を分析したところ、2021年以降、中国のAIデータセンター関連プロジェクトには総額1,000億ドルの国家資金が投入されているという。しかし、今回のガイドラインにより、どの事業が実際に影響を受けるかは不透明だ。
北京はこれまで、米国の輸出規制が中国の技術発展を妨げていると批判し、外国依存からの脱却を掲げてきた。米議会は、中国の軍事転用を防ぐ安全保障上の措置だと主張している。

近年、中国政府は国家安全保障を理由に、国内企業へNVIDIA製品の利用を控えるよう求めており、すでに国産チップのみで稼働するデータセンターを相次いで公開している。2023年には、アメリカのMicron製メモリーの使用を重要インフラから禁止し、同社は2025年に中国のサーバー向け市場から撤退する見通しとなった。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、米国政府に対し対中販売規制の緩和を働きかけており、「中国のAI産業を米国製ハードウェアに依存させることが、むしろアメリカの国益につながる」と訴えている。

今回の指針は、中国国内チップメーカーにとって巨大な市場を生む可能性もある。Huaweiのほか、寒武紀(Cambricon)、摩爾线程(Moore Threads)、燧原科技(Enflame)、壁仞科技(MetaX)などのAIチップ企業が台頭しているが、依然としてNVIDIAの強固なソフトウェア基盤に慣れた開発者が多く、国産製品への移行は進んでいない。
一方で、アメリカのMicrosoft、Meta、OpenAIなどは、NVIDIAの最新チップを採用したデータセンターに数千億ドル単位で投資を続けている。これに対し、中国のチップメーカーは、ワシントンによる製造装置制裁の影響で歩留まりと生産能力に制約を抱えており、中芯国際(SMIC)を含む主要企業でも国内需要に十分応えられない状況が続いている。
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