2100年に向けた「人口減少時代の設計図」 梅屋真一郎氏が語る持続可能な日本の条件

梅屋真一郎氏は、人口減少を前提に「プランB」の社会構築を訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)
梅屋真一郎氏は、人口減少を前提に「プランB」の社会構築を訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)

出生率の低下が止まらず、2100年には日本の人口が5000万人規模まで減少するとの見通しが出る中、社会はどのように持続性を保つべきか。野村総合研究所未来創発センターフェローの梅屋真一郎氏は10月21日、日本記者クラブの会見で「2100年の日本のためのプランB」と題し、少子化対策に依存しない社会構造改革の必要性を訴えた。氏は「出生率を上げることを前提としたプランAには限界がある。減少を前提に“持続できる社会”を設計すべきだ」と強調した。

梅屋氏はまず、2024年の出生数が72万人、合計特殊出生率が1.15にまで下がった現状を指摘。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、出生率1.13が続けば2070年には人口が急減し、2100年には約5000万人にまで落ち込む見通しだという。「高齢化率のさらなる上昇と社会保障の負担増は避けられない」と危機感を示した。

また、出生率の低下は日本に限らず世界的傾向であり、「自然回復によって置換水準を上回った国はほとんどない」と指摘。ドイツの一時的な上昇も外国籍人口の増加が主因で、ドイツ人に限れば日本と同水準にとどまると分析した。日本が従来型の少子化対策で安定的に出生率を改善するのは極めて難しく、「女性への出産圧力を強めるような政策は、社会の反発を招き逆効果になりかねない」と警告した。

こうした現実を踏まえ、氏が提示するのが「人口減少を前提とした社会設計=プランB」だ。これは「まず減少社会でも持続できる構造を整え、その上で時間をかけて出生率反転への合意を形成する」という考え方で、「少子化対策を否定するものではなく、優先順位の入れ替えだ」と説明した。

プランBの第一の柱は「全世代型プラス5歳社会」の実現である。平均的な活動年齢を5歳延ばし、就労や社会参加の期間を拡大することで、人手不足の緩和と社会保障負担の分散を目指す。年齢の線引きにとらわれず、高齢者も健康や意欲に応じて役割を持つ社会への転換を求めた。

もう一つの柱は「自律分散型インフラ」による社会維持だ。人口密度の低下を前提に、エネルギー供給や交通網などを地域単位で最適化するモデルを構築し、維持費の高騰を抑える必要があると強調。「中央集権的なインフラ構造のままでは、将来的に1人あたり維持費が5倍になる可能性もある」と警鐘を鳴らした。

また、教育、福祉、警察、消防といった「地域の現業労働」を担う人材の確保も急務だとし、「人のインフラが崩れれば、社会基盤そのものが維持できなくなる」と指摘。秋田県で警察官の募集倍率が2倍を割った事例を挙げ、「今後、担い手不足がさらに深刻化する」と懸念を示した。

梅屋氏は「人口減少に先手を打った構造改革を進めれば、日本は“課題先進国”として世界に新たなモデルを示せる」と述べ、持続可能な社会の構築が国際競争力の維持にもつながると訴えた。最後に、「まず人口が減っても成り立つ社会を築き、その後に少子化反転を目指す。これが現実的な未来戦略だ」と締めくくった。

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