論評:米中首脳会談で台湾言及なし、頼政権は安心できるのか

2025-11-05 13:50
2025年10月30日、韓国・釜山での会談で、習近平氏とトランプ氏が笑顔を交わし、場の緊張が一時和らいだ。(写真/ホワイトハウス公式サイト)
2025年10月30日、韓国・釜山での会談で、習近平氏とトランプ氏が笑顔を交わし、場の緊張が一時和らいだ。(写真/ホワイトハウス公式サイト)
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米中は関税、ハイテク、レアアースをめぐる攻防を経て、米中首脳会談で一幕があった。トランプ氏が習近平氏にカードを見せ、隣に座る王毅外相とともに笑みを交わした場面だ。習近平氏は目を細めて笑い、張りつめた空気に一瞬の和らぎをもたらした。微妙に揺れる米中関係を象徴する光景とも言える。

会談では、敏感な台湾問題に踏み込まず、いわば「戦略的沈黙」を保ったとされる。トランプ氏は、習近平氏が「台湾侵攻の帰結を理解している」と述べ、中国の謝鋒駐美大使は米国側に「一線を越えないよう」求めた。緊張は続くものの、双方に雰囲気の改善を図る意図はあり、関税の1年間休戦で一致した。ただ、基礎的な相互信頼はなお十分に回復しておらず、恐怖の均衡のもとで綱渡りが続いている。

『米中「G2」の輪郭、当面の新常態は不変

関係緩和の流れのなか、ワシントンでは「台湾放棄論」が再浮上している。トランプ氏は来年4月に北京訪問を予定し、習近平氏は年末のG20で訪米する見通しで、首脳の相互往来が緩和要因となっている。とはいえ、台湾政府は安堵できるのか。台湾は「第二のウクライナ」となるのかが問われる。

カーネギー国際平和基金のシニアフェロー、スティーブン・ヴェルトハイム氏は、外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』に寄稿し、台湾をめぐって米中が政治的信頼を再構築しうるとの見方を示した。新たな共同声明の可能性にも触れ、「台湾独立を支持しない」といった米側の表明や、「平和的統一の選択肢を検討する」といった北京への保証の組み合わせを提案している。

米国大統領トランプ氏(中央)とウクライナ大統領ゼレンスキー氏(左)が世界中のカメラの前で口論し、台湾放棄論への疑問を引き起こした。(資料写真、AP通信)
トランプ氏(中央)とウクライナのゼレンスキー氏(左)が各国メディアの前で応酬し、台湾放棄論への波紋も広がった。(写真/AP通信)

同氏は今年3月にも、ジェニファー・カヴァナ氏(米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」軍事分析ディレクター)と共に、米国の存続や繁栄が台湾の帰属に左右されるとの見解は誤りだと論じた。米国の支援には限界があり、中国の台湾攻撃を抑止しつつ、破滅的な戦争への巻き込まれを回避し、米国の利益を主体的に守るべきだという立場である。さらに、同シンクタンクのアジア・プログラムディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏も『タイム』誌で、蔡英文氏を「冒涜的な指導者」と表現し、台湾を「最も危険な引火点」と位置づけた。こうした論考は、台湾政界に波紋を広げている。

米国外交で再燃する「台湾放棄論」

シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー氏が唱える「攻勢的現実主義」に基づく「台湾放棄論」とは異なり、スティーブン・ヴェルトハイム氏の最新論考は、台湾の戦略的重要性を認めつつも、米国が中国との戦争で敗北リスクを負うべきではないという立場を示した。主張の方向性はランド研究所系の「抑制派」と一致し、米国の戦略議論がバイデン政権期の「価値同盟」から、トランプ氏の下で「リスク管理」重視へ移行している兆しをうかがわせる。

ワシントンで「台湾放棄論」が浮上するのは初めてではない。21世紀の「中国の台頭」以降、米外交論争で幾度も取り上げられてきた。グレアム・アリソン氏が米中を「修昔底徳の罠」に当てはめて以来、米国が相対的劣勢に傾く局面では、とりわけこの議論が現実味を帯びやすい。

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