第26回東京フィルメックス(TOKYO FILMeX 2025)の上映ラインナップが発表された。映画祭は11月21日から30日までの10日間、有楽町朝日ホールとヒューマントラストシネマ有楽町にて開催。今年は全34作品が上映され、そのうちコンペティション部門には10作品が選出された。話題作としては、女優スー・チー(舒淇)が初めて長編映画の監督を務めた『女の子(女孩)』が登場し、日本からは内山拓也監督による『しびれ』と畑明広監督の『グラン・シエル(THE SITE)』の2本がコンペに参加する。
また本祭に先立ち、11月14日から18日までヒューマントラストシネマ有楽町にて「香港ニューウェーブの先駆者たち:M+ Restored セレクション」がプレイベントとして開催される。
コンペティション部門では、アジアを中心とした新鋭監督たちの作品が集まった。『女の子』は1980年代末の台湾・基隆を舞台に、抑圧された家庭の中で成長しようとする少女の内面を描いた半自伝的作品。
『しびれ』は新潟を舞台に母子の関係を通して魂の再生を描き、本上映がワールドプレミアとなる。『グラン・シエル』はフランスの大型建設現場で発生する労働者の失踪と不穏な空気を描く社会派スリラーで、すでにヴェネツィア国際映画祭で上映され評価を得ている。そのほか、韓国のユン・ガウン監督『The World of Love』、ニューヨークを舞台にチャン・チェンが配達員を演じる『ラッキー・ルー(仮)』、ジョージア・アレクサンドレ・コベリゼ監督による携帯カメラで撮影された『枯れ葉』、シンガポールの女子校を舞台に反抗と友情を描く『アメーバ』、台湾のツォウ・シーチン監督『左利きの少女』、移住を目前に葛藤するイラン青年の日常を追う『アミールの胸の内』、インド・ローハン・パラシュラム・カナワデ監督の『サボテンの実』など、個人の内面と社会構造の衝突を描く作品が揃う。
特別招待作品は13作。オープニングは蔡尚君(ツァイ・シャンジュン)監督『太陽は我らの上に』で、かつて恋人だった男女が再会し、病と秘密を抱えながら生き直そうとする姿を描く。クロージングには霍猛(フオ・モン)監督『大地に生きる』が選ばれ、1990年代中国農村の激動期を10歳の少年の視点から描き、ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞した作品が締めくくる。また、ジャカルタ独立戦争期を描くモーリー・スリヤ監督『市街戦』、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督によるラオス帰郷ドキュメンタリー『家へ』、妊娠をきっかけに社会不安と向き合う女性を追うナワポン・タムロンラタナリット監督『ヒューマン・リソース』、爆撃下のガザを生きたパレスチナ人ジャーナリストの記録を綴るセピデ・ファルシ監督『手に魂を込め、歩いてみれば』など、現代世界が抱える矛盾と痛みを多角的に描く作品が並ぶ。
さらに、イスラエル出身のナダヴ・ラピド監督『Yes』は、戦争と芸術家の良心をめぐる激しい自己対立を描く挑発的な作品として注目される。
特集上映では、アルゼンチンのルクレシア・マルテル監督による初期三部作『沼地という名の町』『The Holy Girl』『頭のない女』と、スペイン植民地期の不条理を描く『サマ』、構想15年の最新作『私たちの土地』を含む一連の上映が行われる。またポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督による作品も6本上映される予定だ。
審査員には、中国の宋方(ソン・ファン)、スイスのラモン・チュルヒャー、アルゼンチンのマティアス・ピニェイロが参加し、最優秀作品賞および審査員特別賞を選出する。観客賞は来場者の投票によって決定され、学生審査員賞は東京学生映画祭の学生審査員によって選ばれる。
プログラム・ディレクターの神谷直希は、「今年の作品群は個人と社会を結ぶ『枠組み』や『壁』に対する葛藤を多様な形で映し出している」とコメントし、映画表現の革新性と現代性を強調している。
今年の東京フィルメックスは、個人の痛みと希望、社会の矛盾と連帯を映し出す映画が国境を越えて集まり、10日間にわたって観客に強い問いかけを投げかける場となるだろう。
編集:佐野華美
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