トップ ニュース 沈旭暉コラム:麻生太郎 “日本の影の実力者”と名門一族の深いつながり
沈旭暉コラム:麻生太郎 “日本の影の実力者”と名門一族の深いつながり 2025年10月21日、高市早苗氏が日本首相に選出。麻生太郎氏(左後ろ)が重要な援助を果たす。(AP通信)
高市早苗氏が与党自民党総裁に選ばれた。その背景には、自民党の重鎮であり、元首相兼「最高顧問」の麻生太郎氏が所属派閥と党員に対し「民意」に従って投票するよう指示したことがある。この動きにより、小泉進次郎氏が小選挙で逆転するのを阻止した。
一、維新三傑と吉田茂首相の光環 数年前、麻生太郎氏の「アニメ外交」を紹介したことがある。その時点での麻生氏の地位は今日のようなものではなかった。安倍晋三氏が亡くなった後、麻生氏は自民党内で重要な影響力を持つ最も主要な長老となった。彼は首相、副首相、外相、財相を歴任し、およそ半世紀にわたり国会議員を務めてきた、まさに政界の“生き字引”である。
安倍氏は近年の日本で最も影響力のある首相であり、麻生氏が副首相として刺激的な立場に就き、大局を安定させたことが彼が長期間在位できた要因でもある。麻生氏の理念は安倍氏に似ており、群衆への魅力はやや劣るものの、内部の仕事を非常に精緻に行っている。
麻生氏はすでに85歳であるが、なおも鋭い視点を持っている。昨年、彼は多くの反対を押し切り、トランプ氏の人気が低迷し、訴訟問題に巻き込まれ、大統領選が不透明な時に、実際にアメリカに渡り支持を表明した。自民党とMAGAの関連を維持するという判断は今や先見の明があったことを示している。
安倍元総理(左)と相麻副総理(AP通信)
しかし、今回話したいのは麻生太郎氏の家系である。日本で政治に関わるには、出自が非常に重要であり、貴族の爵位が廃止されたといっても、その本質は「家主」としての立場は何ら変わっていない。麻生家の系統は非常に影響力が大きいものだ。
麻生太郎氏の外祖父は戦後初期の日本で最も影響力のあった首相・吉田茂である。吉田氏は軍国主義政府で外郭の役職に就いていたが、戦後、米国に受け入れられ復職し日本の新しい国際基準を定めた。彼は自民党の歴史の中で最も威信のある指導者であり、米国との関係は密接で、マッカーサーとも親交があった。彼の門下生である池田勇人や佐藤栄作も後に日本の首相となり、この人脈資源は極めて豊富だ。
麻生氏の外祖母、吉田雪子の母方の家系も非常に名高く、彼女の曾祖父は明治維新三傑の一人である大久保利通である。爵位廃止前、家族は伯爵であった。大久保利通は明治維新後に最初の国葬を受けた偉大な先人であり、西郷隆盛や木戸孝允と並び称され、今もなお尊敬されている。
吉田雪子の父である牧野伸顯伯爵も日皇裕仁の宮内大臣を務め、深い信頼を得ており、西洋との良好な関係を築き、吉田家が戦後米国に受け入れられた理由となった。
二、皇室連姻と大財閥 麻生太郎氏の家族ネットワークは母系の人脈に加え、父系および妻系も同様に顕著である。これら三つの系統が一体となり、財権、皇権、さらには神権政治との結合が明らかだ。
麻生氏の父方の祖父は大財閥の麻生家当主で、戦前の日本では納税額が最も多い者の一人として貴族院議員に選出されていた。麻生家の鉱業は軍国主義の拡張に恩恵を受けたが、現在は非常に多様化しており、麻生家が政治に関わることで金銭的問題を全く心配する必要はない。つまり、麻生家自身が大口のスポンサーである。吉田家が戦後の政界で影響力を持つことは、麻生家の金銭的支援によるところが非常に大きい。
麻生氏の父系の祖母の実家も非常に立派で彼女は三池藩藩主立花家の後裔であり、戦国時代の名高い大名立花忠茂の遠縁である。戦前、家族全員が貴族であった。
麻生太郎父系祖母の実家、戦国時代の武将立花忠茂、豊臣秀吉が「西国無双」と評した。(Wikipedia)
また、麻生氏のこの世代も、結婚を通じてさらに家族の力を伸ばしている。
麻生太郎氏の妻麻生千賀子の父親もまた別の政治家の家系であり、日本の元首相鈴木善幸氏の家系である。鈴木氏は自民党内において前任の首相である大平正芳氏の派系を継承する立場であり、大平氏の死後、その資本と人脈を全て鈴木氏が受け継いだ。したがって、麻生氏が政治活動をする際には、この派系の豊かな人脈資源も継承している。
麻生太郎氏の近親者に首相経験者が何人いるかは数えきれない。遠縁の親戚を含めれば、安倍晋三氏、橋本龍太郎氏、宮澤喜一氏といった元首相すら「一家」の仲間となる。
さらに、麻生太郎氏の妹麻生信子氏も遠見があり、日本の皇族三笠宮寛仁親王と結婚したことで麻生家は皇室と姻戚関係を結んだ。戦後、多くの皇室傍系のメンバーが平民になったが、麻生信子氏の夫は依然として親王である。彼は大正天皇の孫であり、明仁天皇の従兄弟にあたるため、麻生信子氏の二人の娘はその後「女王」の称号を受けている。
これら縺れ合った権力者たちの関係は、外部の者がどれほど努力しても、築くことは難しい。導いてくれる人物がない限り、このサークルに入るのは難しい。高市早苗氏が一般の市民として最高位に登りつめたとはいえ、その背後には麻生太郎氏の存在があり、どれだけ自主性を持てるのかは疑問も残る。
*著者は香港の国際関係学者であり、台湾国立中山大学台港国際研究センターの常任副教授である。
更多新聞請搜尋🔍風傳媒
最新ニュース
高市早苗氏、APECで習近平氏と初会談 日中関係の安定化を呼びかける 日本の高市早苗首相は、韓国・慶州で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で、中国の習近平国家主席と約30分にわたり会談した。両首脳は安定した二国間関係の構築を目指す方針を確認した。会談前には国旗を背に握手が交わされたが、高市氏はやや緊張した表情を見せ、習氏は終始笑顔を見せなかった。
現地時間17時(台北時間16時)頃、就任直後の高市氏は首相......
阿里山で秋を満喫 超限定の紅葉観賞列車、全5便でチケット争奪戦へ 秋の深まりとともに気温が下がるなか、台湾の人気観光地・阿里山は通年で紅葉の名所として知られる。林業及び自然保育署の阿里山森林鉄道・文化資産管理処は、蒸気機関車の特別企画列車『楓度翩翩』を運行する。国宝級の31号蒸気機関車が台湾産ヒノキ製の客車を牽引し、林鉄の象徴的な駅や紅葉の秘境を巡りながら、森の中を駆け抜ける高山鉄道ならではの車窓が楽しめる。 ......
現代の「スパイス」――TSMCのウエハ製造からF-35のミサイル発射まで、不可欠なレアアース レアアース(希土類元素、Rare Earth Elements=REE)は計17元素。独特の物理・化学特性を生かし、エネルギー転換や先端産業、防衛、そしてAIを含む次世代テクノロジーの基盤となっている。高性能分野を支える「スパイス」とも呼ばれ、その用途を理解することは、再編が進むグローバル供給網を読み解く鍵となる。以下ではハイテク産業における主な活用例を整理......
台湾人インフルエンサー・阿倫さん、日本の地方に息づく「人の温度」を伝える 台湾出身の人気インフルエンサー、アレンさんはこれまで日本各地を訪れ、自身のSNSや動画チャンネルを通じて地域の魅力を発信してきた。観光庁の「添乗員資格」を持つアレン(阿倫)さんは、『風傳媒』の取材に対し、熊本、三重、福島など複数の自治体と連携しながら、都市部では見られない「もう一つの日本」を台湾の人々に紹介していると語った。長年日本各地を旅してきた台湾人イン......
炎上展、開催10日間で入場券5,000枚突破 人気を受け会期を11月16日まで延長 炎上をテーマにした体験型展示イベント『炎上展』が、開催から10日間で入場券販売数5,000枚を突破した。主催する炎上展製作委員会は、この反響を受けて会期を当初予定の11月9日(日)から11月16日(日)まで延長すると発表している。同展は10月11日から東京・池袋の「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」4階で開催中で、「炎上」を題材にした“日本初......
ユニクロ、西日本最大のグローバル旗艦店「UNIQLO UMEDA」を開業 ユニクロは10月24日、大阪・梅田の商業施設「LINKS UMEDA」1階・2階に、西日本最大となるグローバル旗艦店「UNIQLO UMEDA」をオープンした。開店前から約1,200人が列をなすなど注目を集め、午前10時の開店が前倒しされて営業を開始した。当日は午前8時30分よりオープニングセレモニーが行われ、大阪市音楽団によるパフォーマンスに続き、登壇者に......
第38回東京国際映画祭が開幕 「台湾映画文藝復興」特集に豪華陣容が集結 第38回東京国際映画祭が10月27日夜、東京・宝塚劇場で開幕した。文化部駐日台湾文化センターは今年も映画祭主催側と連携し、「台湾映画文藝復興」特集を展開。台湾映画界の第一線で活躍する監督や俳優陣がレッドカーペットに登場し、華やかなスタートを印象づけた。第38回東京国際映画祭が開幕し、「台湾映画文藝復興」特集に参加した台湾の監督や俳優たちがレッドカーペットを華......
高市首相、APEC首脳会議へ出席 AI・通商・人口問題で国際協調を呼びかけへ 外務省は28日、高市早苗首相が10月30日から11月1日まで韓国・慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席すると発表した。今回の会議では、通商や投資に関する課題に加え、人工知能(AI)や人口動態の変化など、世界が直面する新たなグローバル課題について意見交換が行われる予定だ。高市首相は日本の立場を示すとともに、アジア太平洋地域における......
箔座×secca、金沢伝統の「縁付金箔」と新素材「黒鉄箔」で新作を発表 日本橋で展示 金沢の金箔メーカー・箔座株式会社(代表取締役社長:高岡美奈)は、同じく金沢を拠点とするクリエイター集団 secca inc.(代表取締役:上町達也)と協働し、新商品発表会を10月28日と29日の2日間、東京・日本橋の旗艦店「箔座日本橋」で開催した。今回の発表会では、ユネスコ無形文化遺産に登録された「縁付金箔」を象徴するアートピース『伝統を尊ぶ(Respect......
英国王室、チャールズ3世がアンドルー王子の称号を剥奪 エプスタイン事件との決別を急ぐ 英王室は30日、チャールズ3世国王が弟アンドルー王子の王族としての称号を正式に剥奪し、ウィンザー大公園にある居住地「ロイヤル・ロッジ」からの退去手続きを開始したと発表した。アンドルー氏は、故ジェフリー・エプスタイン被告との関係を指摘されてきた。バッキンガム宮殿は声明で「国王陛下は本日、アンドルー王子の称号および名誉の撤回手続きを正式に開始した」と述べ、「今後......
ハロウィーン当日、渋谷は大雨の中で厳重警戒 ハチ公像封鎖、渋谷スカイ周辺も通行制限 10月31日のハロウィーン当日夜、東京・渋谷は激しい雨に見舞われながらも、多くの人々でにぎわった。例年、仮装した若者や観光客で混雑するこのエリアでは、トラブル防止のため、渋谷区と警察が厳重な警戒体制を敷いている。夕方から雨脚が強まり、足元の悪い中でも渋谷駅前やセンター街には傘を差して歩く人々の列が続いた。渋谷駅構内は一時、人であふれ入場規制がかかる場面もあっ......
台海解読》駐米代表人事が揺れる中、頼清徳氏は「恐怖の均衡」を操る? 韓国・釜山で行われたトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談では、双方とも台湾問題に言及しなかった。しかし会談後、中国による「統一促進」の圧力は一段と強まりつつある。一方、トランプ氏は沈黙を貫き、台湾の頼清徳総統も就任以来、米本土を訪れていない。台米関係は微妙な距離を保ったままだ。こうしたなか、台湾政府が駐美代表・俞大㵢氏の交代を検討し、トランプ陣営との......
トランプ氏と習近平氏、実際に得をしたのはどちらか 米在住の政治学者「米国は面子、中国は実利」 6年ぶりとなるドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席による「米中首脳会談」が、木曜日、韓国・釜山の金海国際空港で開かれた。会談はおおむね円滑に進み、米中双方がそれぞれ成果を発表したものの、実際の会談時間はトランプ氏が事前に示唆していたよりも短く、約100分にとどまった。合意内容も具体性に欠け、「期待されたほどの成果はなかった」との見方が広がっている......
論評:中国の経済データにみる「対米耐性」 脱アメリカ化を続ける構え 近ごろ相次いだ中国の経済統計を見る限り、トランプ氏の関税戦の打撃はあるものの、対米対抗の余力はなお残り、「脱アメリカ化」の路線も継続する構えだ。総合指標では、国家統計局が先週公表した第3四半期の実質成長率は前年同期比4.8%。前期比では1.1ポイントの上振れで、春先の伸びとおおむね同水準となった。第4四半期も同程度の勢いを保てば、今後12カ月の成長は約4.1......
音楽がつなぐ台湾と日本 高雄×和歌山、若者が奏でる友情のハーモニー 台湾と日本の関係がますます緊密になる中、官民双方のレベルで活発な交流が続いている。日本・和歌山県和歌山市の市議会議員である辻本太一氏は、10月28日、「和歌山音楽国際交流実行委員会」のメンバーである中嶋千壽氏らとともに、立法委員であり高雄市長選の予備選に向けて活動中の許智傑氏を訪問した。双方は観光振興、子育て支援、高齢者介護など多岐にわたるテーマで意見を交わ......
台湾世論、「戦争回避」へ急転 6割が「戦争は避けられる」と回答 対中恐怖と対米不信が同時拡大 台湾の民間調査機関「美麗島電子報」が公表した最新の世論調査によると、「台湾海峡では最終的に戦争が避けられない」との見方に対し、60%の台湾市民が「同意しない」と回答し、「同意する」と答えたのは31.4%にとどまった。また、「中国共産党による統一を防ぐため、必要であれば台湾のために命を捧げる」との設問には、53.2%が「同意しない」、40.8%が「同意する」と......
トランプ氏の「相互関税」に共和党内から造反 米上院が停止決議を可決、党内亀裂が鮮明に 2025年10月30日、米連邦上院はトランプ大統領が推し進めてきた「相互関税(reciprocal tariffs)」政策を停止する決議を、賛成51票・反対47票という僅差で可決した。これは民主党の勝利であると同時に、共和党内部からの「宮廷クーデター」とも言える動きだった。4人の共和党上院議員が党の枠を超えて賛成票を投じ、トランプ氏の保護主義の壁に初めて明確......
渋谷「ハチ公像」封鎖へ ハロウィーン本番前、渋谷区が「迷惑ハロウィーン禁止」で厳戒 ハロウィーン本番を翌日に控えた10月30日、東京・渋谷区は恒例の混雑と迷惑行為を防止するため、渋谷駅前の象徴である「ハチ公像」の周囲を封鎖した。午前6時頃から作業員が鉄柵を設置し、幕で覆うなどの対策を実施。封鎖は11月1日早朝まで続く見通しだ。渋谷区は今年も「迷惑ハロウィーン禁止」をテーマに掲げ、路上での飲酒や喫煙、ごみのポイ捨てなどの迷惑行為を抑止するため......