箔座×secca、金沢伝統の「縁付金箔」と新素材「黒鉄箔」で新作を発表　日本橋で展示

金沢の金箔メーカー・箔座株式会社（代表取締役社長：高岡美奈）は、同じく金沢を拠点とするクリエイター集団 secca inc.（代表取締役：上町達也）と協働し、新商品発表会を10月28日と29日の2日間、東京・日本橋の旗艦店「箔座日本橋」で開催した。

今回の発表会では、ユネスコ無形文化遺産に登録された「縁付金箔」を象徴するアートピース『伝統を尊ぶ（Respecting Tradition）』と、金箔製造工程で生まれた副産物を新素材として再定義した「黒鉄箔（くろがねはく）」を用いた照明シリーズ『箔照（はくしょう）』が初披露された。

ユネスコ無形文化遺産「縁付金箔」を現代に再構築

縁付金箔は、400年以上受け継がれてきた日本独自の伝統製法で、手漉きの和紙「雁皮紙」に柿渋や藁の灰汁、卵白などを加え、約半年をかけて箔打ち紙を仕込み、1万分の1ミリの薄さまで延ばす高度な技術が必要とされる。

『伝統を尊ぶ』は、その縁付金箔の輝きを日本の伝統的な漆額で額装した作品で、寺社建築に見られる唐破風の意匠を引用し、伝統の技と美意識を融合させている。販売価格は税抜300万円で、売上の10％を金沢金箔伝統技術保存会および輪島漆器青年会に寄付し、材料・技術・後継者育成の支援に充てられる。

もう一つの注目作「黒鉄箔」は、断切金箔の製造過程で使用されるカーボン塗布済みグラシン紙を再利用した新素材である。従来は廃棄されていたこの素材に、独特の光沢と職人の手の痕跡を見出し、箔座とseccaが共同で新たな命を吹き込んだ。

第一弾として発表された照明シリーズ『箔照』では、黒鉄箔を「羽」のように加工し、立方体や菱形など多様なフォルムを展開。光を透過しない素材でありながら、反射光によって独特の皺のテクスチャーを浮かび上がらせる設計が施されている。価格はペンダントライト、卓上ライトともに税抜4万円〜15万円。

会期中には、高岡美奈社長と上町達也氏によるトークプレゼンテーションが行われ、金沢箔伝統工芸士・太田武敏氏による縁付金箔の製造実演も披露された。

高岡社長は「箔の絶対的価値を守りながら、今を生きる人々の価値に変え届ける。それが私たちの使命」と語り、seccaの上町氏は「伝統を敬いながら、新しい素材と表現を通して工芸の未来を再構築したい」とコメントした。

創業から約100年にわたり金沢の箔文化を牽引してきた箔座は、2026年に創業50周年を迎える。今回の発表会は、伝統を継承しながらも未来を見据えた挑戦として、箔の新たな可能性を示す節目の機会となった。