論評:頼清徳総統の拙速さと、米国の不興を招く恐れのある国民党次期主席・鄭麗文氏

2025-10-29 17:19
頼清徳総統(右、タイム誌ウェブページ)と国民党次期主席・鄭麗文氏(左、柯承惠撮影)、ほぼ同時に海外メディアが注目。
頼清徳総統(右、タイム誌ウェブページ)と国民党次期主席・鄭麗文氏(左、柯承惠撮影)、ほぼ同時に海外メディアが注目。
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米誌『タイム』がこのほど、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」アジア担当ディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏の寄稿「The U.S. Must Beware of Taiwan’s Reckless Leader(米国は台湾の無謀な指導者に警戒すべきだ)」を掲載した。ほぼ同時期に、英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』も「Taiwan's new opposition leader risks US ire with soft tone on China(百年政党は「対中再定義」へ? 台湾・国民党主席に鄭麗文氏 FT「親中路線がトランプ氏を刺激する恐れ」)」と報じている。

反中でも親中でも、トランプ氏の歓心は買えない

台湾・頼清徳総統と鄭麗文氏は与野党の両極に位置づけられ、それぞれ反中・親中の象徴とみなされてきた。だが、いずれの立場でも米国の満足を得られていないのが現実だ。頼政権は親米路線を掲げるものの、目に見える成果は乏しい。台湾が地政学の最前線に立ち、「最も危険な引火点」と評される中、選択肢は限られる。その狭い枠内で、内輪の対立だけが続いているのが実情だ。

『タイム』や『FT』の評価にはそれぞれの立場と推論がある。頼氏は「務実な台湾独立推進者」と評され、その執念は民進党内の他の指導者より強いと受け止められている。専門は医学で法政ではないが、親米・反中の姿勢を一貫して打ち出す様は「無謀」「軽率」「後先を顧みない」といった表現では足りず、より深刻だとの見方もある。金門での兵役経験から戦争を知らないはずはないが、それでもシンクタンクの論者に「無謀」と断じられるに至った背景には、米国側の評価や力学が色濃く反映している。

トランプ氏の1期目には米中の貿易戦争が激化し、2期目の関税強化でも矛先は中国に向く。頼氏が躊躇なく対米接近を強めるのは、米中対立の先鋭化が影を落としているためだろう。もっとも、トランプ氏は反共イデオロギーの体現者というよりビジネス最優先の指導者であり、「米国の資金を吸う台湾」への苛立ちや、「問題を持ち込む台湾」への不満を隠さない場面もある。頼氏はこの思考様式を十分に読み切れていないとの指摘が根強い。

ゴールドスタイン氏は、米国の指導層が「無謀な台湾の指導者をためらわず抑制すべきだ」と主張し、非公開での警告を提案した。小ブッシュ元大統領が陳水扁元総統を「トラブルメーカー」と批判した事例を想起させる。ゴールドスタイン氏の評価では、頼氏は蔡英文氏よりも踏み込みがちで、蔡氏が独立色の強い表現を和らげたのに対し、頼氏は一連の発言で独立志向を擁護し、最終的に法的な独立へ向かう姿勢を示している。 (関連記事: 百年政党は「対中再定義」へ? 台湾・国民党主席に鄭麗文氏 FT「親中路線がトランプ氏を刺激する恐れ」 関連記事をもっと読む

AITの「台湾地位未定論」は「無謀」の助燃剤か

頼清徳氏は蔡英文氏と比べ、①中華民国憲法の公然たる宣明を避け、②両岸関係条例への関与を深めず、③行政命令により中国との法定外の範囲で公務員の訪中自由を狭めた。対象は国立大学の研究者にも及ぶ。加えて、今年3月に打ち出した「頼の17条」(国家安全法の改正を含む)は現在も進行中だ。

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