トップ ニュース 論評:頼清徳総統の拙速さと、米国の不興を招く恐れのある国民党次期主席・鄭麗文氏
論評:頼清徳総統の拙速さと、米国の不興を招く恐れのある国民党次期主席・鄭麗文氏 頼清徳総統(右、タイム誌ウェブページ)と国民党次期主席・鄭麗文氏(左、柯承惠撮影)、ほぼ同時に海外メディアが注目。
反中でも親中でも、トランプ氏の歓心は買えない 台湾・頼清徳総統と鄭麗文氏は与野党の両極に位置づけられ、それぞれ反中・親中の象徴とみなされてきた。だが、いずれの立場でも米国の満足を得られていないのが現実だ。頼政権は親米路線を掲げるものの、目に見える成果は乏しい。台湾が地政学の最前線に立ち、「最も危険な引火点」と評される中、選択肢は限られる。その狭い枠内で、内輪の対立だけが続いているのが実情だ。
『タイム』や『FT』の評価にはそれぞれの立場と推論がある。頼氏は「務実な台湾独立推進者」と評され、その執念は民進党内の他の指導者より強いと受け止められている。専門は医学で法政ではないが、親米・反中の姿勢を一貫して打ち出す様は「無謀」「軽率」「後先を顧みない」といった表現では足りず、より深刻だとの見方もある。金門での兵役経験から戦争を知らないはずはないが、それでもシンクタンクの論者に「無謀」と断じられるに至った背景には、米国側の評価や力学が色濃く反映している。
トランプ氏の1期目には米中の貿易戦争が激化し、2期目の関税強化でも矛先は中国に向く。頼氏が躊躇なく対米接近を強めるのは、米中対立の先鋭化が影を落としているためだろう。もっとも、トランプ氏は反共イデオロギーの体現者というよりビジネス最優先の指導者であり、「米国の資金を吸う台湾」への苛立ちや、「問題を持ち込む台湾」への不満を隠さない場面もある。頼氏はこの思考様式を十分に読み切れていないとの指摘が根強い。
AITの「台湾地位未定論」は「無謀」の助燃剤か 頼清徳氏は蔡英文氏と比べ、①中華民国憲法の公然たる宣明を避け、②両岸関係条例への関与を深めず、③行政命令により中国との法定外の範囲で公務員の訪中自由を狭めた。対象は国立大学の研究者にも及ぶ。加えて、今年3月に打ち出した「頼の17条」(国家安全法の改正を含む)は現在も進行中だ。
一方で、米国在台協会(AIT)が示唆してきた「台湾地位未定論」が、頼氏の「法理台湾」論を勢いづけている面を、ゴールドスタイン氏は十分に織り込んでいないとの指摘がある。頼氏の主要演説(就任式、国慶、元旦など)はいずれも米側の「承認」を経ているとされ、抑制が必要だったのなら米側には機会が幾度もあったはずだ。結局、米国は「無謀とされる頼政権を抑える」のか、「台湾を対中牽制(あるいは取引)の駒とする」のか、判断を定め切れていない。トランプ政権の姿勢は揺れている。
トランプ政権が逡巡するからといって、頼氏の「無謀」を免罪できるわけではない、との厳しい見方もある。むしろ、炭火の上に自ら乗って歓喜するかのような拙さがある、という辛辣な批評さえある。
台湾外交部が説明を行った後も、ゴールドスタイン氏はX(旧ツイッター)で、民進党側の代表者と面会した事実に触れ、「地政学と軍事の現実を無視し、北京は攻撃してこないと高をくくる一方で、さらなる武器調達だけを求めている」と発信。戦前のウクライナを想起させると懸念を表明し、「米国が困難に陥った台湾救援のために戦争を始める可能性は低い」と断じた。
台湾は「欲しがっている」のではなく、「資金を投じても届かない」 同氏の危機感は、台湾側の危機感とも響き合う。ただし、①国防費の増額と装備調達は米側の要請であり、GDP比5%、さらには10%増を求める声まで出ている。②頼氏が双十節演説で掲げた「台湾は盾」というフレーズも、米側の要請と重なる。
一方、まもなく国民党主席に就く見通しの鄭麗文氏は、大幅な国防費増額に反対し、「台湾には負担できない」と主張。『FT』はこの姿勢が「米国の不興を買う恐れ」を指摘する。台湾外国プレスクラブ会長で、国際危機グループのシニアアナリストでもある楊皓暐(William Yang)氏は、「トランプ政権が台湾の自衛力強化を引き続き強調する中、鄭氏の反対は国民党と米国の摩擦を再燃させる」と述べた。
では、どれほどの装備要求が米側の意向にかなうのか。逆に国防費を抑えれば評価されるのか。それとも巨額を計上しながら未納入でも黙認すべきなのか。顧立雄・国防部長によれば、総額300億ドル超の調達案件に対し、実際の支払いは108億ドルで、多くはすでに引き渡し済みという。M1A2戦車、ジャベリン、HIMARSなどは進んでいる一方、足元ではF-16Vがレーダー問題で遅延。生産ラインの逼迫や優先順位の後回しも重なり、台湾側の“欲しい”に供給が追いついていないのが実情だ。
ゴールドスタイン氏は「台湾の指導者がイデオロギーをいったん脇に置き、『妥協案』を検討すれば、実質的な高度自治を維持できる余地がある」と主張する。鄭氏が「九二共識」を通行証のように扱うべきだとする立場を超える提案だが、その「妥協案」が何を指すのか、国内対立を深めないのか、米中(川・習)会談の俎上に載り得るのかは不透明だ。米国が他案件で手いっぱいとなる局面では、頼氏の言動は鄭氏以上にトランプ氏の不興を買いかねない——頼氏への厳しい警鐘である。野党の鄭氏に対し、執政側の頼氏には一層の責任が伴う。
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