10月23日10時38分、台湾・民視新聞の1時間前の報道によれば、国防部は22日午前6時から23日午前6時までに中国軍機3機を確認し、このうち1機が台湾海峡の中間線を越えて北部空域に進入したと発表した。中国海軍艦艇は4隻が台湾海峡周辺で活動を続けている(同日11時時点で公式サイトの「即時軍事動態」は未更新)。
足元の台湾周辺海空域は北東季節風と台風24号(フンシェン)の影響を受け、中国軍の出動・展開数が目に見えて減少している。こうした中、日本政府は20日、18~19日にかけて中国艦2隻(情報収集艦795/ミサイル駆逐艦131)が東シナ海から大隅海峡を通過し西太平洋へ進出したと公表。とりわけ電子偵察艦(舷号795)は、戦闘艦とは異なる強力な電偵装備を搭載しており、日本周辺海域を経由した動きが注目を集めている。
一方、10月20~29日には長興滬東中華造船所前で水中作業が行われ、航行禁止海域の設定状況などから、人民解放軍初の電磁カタパルト搭載とされる076型強襲揚陸艦が桟橋に係留され、電磁カタパルト試験後に潜水作業を実施したもようだ。これにより空母「四川」の海上公試が近いとの見方が出ている。
まず、10月17日朝、頼清徳総統が海軍「海強操演」訓練終了式にあわせて高雄・旗津営区を視察し、海軍62.1水上戦闘支隊を激励した。同日、解放軍東部戦区は台湾周辺の海空域で「共同戦備警戒巡航」を実施したことが判明している。
その後、19~23日にかけて台湾周辺は天候悪化と海象悪化が続き、一時的に緊張が緩む展開となった。国防部の公表でも、台湾海峡中線付近を巡航する航空戦力は限定的で、周辺の中国艦艇も5隻から4隻へと減少。情勢は筆者の予測どおり小康状態に入っている。
陸軍の実動演習「陸勝一号」が10月25~31日に予定されるのに合わせ、東部戦区所属の第71・72・73集団軍の一部が対応部隊を移動・輸送する可能性がある。また、第71・72集団軍が上海駐留の海軍第五揚陸艦支隊と連携し、両用装載・揚陸訓練を行うかも注視が必要だ。両用上陸編成が組まれれば、遠距離航行訓練に発展する公算がある。
10月に入り、東部戦区は台湾周辺での「共同戦備警戒巡航」を7日と17日の2回実施。長期観測では月3~4回が通例であり、月末に天候が回復すれば少なくとももう1回行われる見込みだ。
それが27日かどうかについて、筆者は空軍「天龍操演」の初日に重なる可能性が高いとみる。初動で解放軍の空中戦力が応じなければ、勢いの面で弱さを印象づけるだろう。両岸の空軍が一定の距離を保ちつつ対峙する期間において、終盤に向けて“見せ場”を作るのは合理的でもある。
次に、台湾海峡周辺の緊張がやや和らいだ局面で、日本の防衛省統合幕僚監部は10月20日に発表を行った。18日15時ごろ、海上自衛隊は鹿児島県・口永良部島西方約80キロの海域で、中国海軍「東調」級情報収集艦(舷号795)が東進するのを確認。
続いて18~19日にかけて、同艦が大隅海峡を東向きに通過し、太平洋に進出したことを確認している。
また19日午前1時ごろには、口永良部島西方約40キロで、中国海軍「旅洋III」級ミサイル駆逐艦(舷号131)が北東へ航行するのを観測。その後、同艦も大隅海峡を東進し、太平洋へ向かった。
ここ数日、台湾海峡は気象の影響で中国軍の活動が急減。中国で「街溜子」と呼ばれる電子偵察艦が急ぎ出港し、日本周辺海域へ向かった。
調査によれば、日本側が確認した中国艦は、東部戦区海軍・浙江省舟山の第3駆逐艦支隊に所属する052D型駆逐艦「太原」(舷号131)と、同じく舟山の第2作戦支援艦支隊・偵察艦大隊に所属する電子情報収集艦「天権星」(舷号795)の2隻だった。
とりわけ注目されるのは、電子偵察艦795が東シナ海から大隅海峡を抜け、西太平洋に進出した点である。後方には戦闘艦1隻が追随していた。
近年、中国の電子偵察艦は米・日・豪などの同盟国による演習期に出現し、各国海軍の合同訓練を至近距離で観察してきた。この種の艦は中国国内で俗に「街溜子」と呼ばれる。百度百科では「長く街をうろつき、定職に就かない者」と定義される語だが、ここでは常時周辺を徘徊して監視・収集を行う艦を比喩的に指す。作戦艦や後方支援艦と異なり、上部に4つの大型レドームを備え、海空の電波・通信を収集する各種装備を搭載している。
電子偵察艦は強力な通信・電波情報収集能力を持ち、周辺で発せられる電磁波を拾い上げる。結果として、周辺海域で訓練を行う米日同盟側の高度な警戒と関心を引き起こしている。
西側の資料によれば、敵側の通信・電子偵察に対処するため、艦艇・航空機は無線静粛(EMCON)を実施し得る。レーダーや各種送信を行えば発信源の位置が露見しうるため、商用レーダーや目標探索レーダーを除き、多くの非重要装置は作動させない運用が採られる。
一方、海上保安庁と自衛隊は10月20日から31日まで、米豪を含む各軍と2年に一度の「自衛隊総合演習」を共同実施している。参加規模は自衛隊約5万2300人、米軍約5900人、豪軍約230人。さらにカナダ空軍、ニュージーランド空軍、フランス海軍も海自の訓練に参加し、海自艦艇約60隻、航空機約310機、車両約4180台と過去最大級の態勢となる。
演習の目的は、3月に始動した「統合作戦司令部」の機能を検証し、統合指揮と共同作戦能力を強化することにある。あわせて、米海軍・海兵隊、豪海軍・空軍、カナダ空軍・海軍、ニュージーランド空軍、フランス海軍らと対潜・対水上戦、海上補給などの共同訓練を通じ、相互運用性の向上を図る。
緊急時を想定し、自衛隊と海保が使用する「特定空港・港湾」などの民間施設も活用。自衛隊基地が攻撃を受けた場合を想定し、F-15戦闘機は数機単位でチームを組み、南紀白浜、鹿児島、奄美、徳島の4空港へ分散して離着陸訓練を行う。鹿児島県の奄美大島と種子島では防衛訓練、沖縄の各島しょでは艦艇・戦闘機・ヘリによる実弾射撃を実施する。
米軍は沖縄・石垣島での防災訓練や太平洋での対艦作戦訓練に参加し、豪軍も艦艇1隻を派遣して加わる予定だ。
今回、東部戦区海軍の電子偵察艦795が意図的に口永良部島西方および大隅海峡を経て西太平洋に入ったのは、日米などの同盟戦力に対し、日本の南西諸島から東方海空域にかけての監視姿勢を誇示する狙いとみられる。この際、052D型駆逐艦「太原」(131)は通例どおり電子偵察艦の護衛に当たっていたとみられる。一方、北部戦区海軍・秦皇島の第565支隊・偵察艦大隊所属の815A型電子偵察艦「開陽星」(796)は、10月4日に日本海から津軽海峡を通過し、西太平洋に出現したとされる。帰投リスクが低く、前述の行動と戦役級の情報偵察面で連携可能と見る向きもある。
演習期間中、中国側が電子偵察機や電子情報収集艦、無人機などを投入し、南西諸島方面で電子情報の収集と警戒活動を強める可能性は高い。
同時に、米海軍の空母打撃群「ニミッツ」が引き続き南シナ海方面で活動しており、南部戦区海軍・湛江麻斜の偵察艦大隊に所属する815A型の「天王星」(793)、「天殉星」(797)などが、同打撃群周辺海域で電子偵察任務に就く展開も想定される。