東京国際映画祭とFCCJが共同会見を開催 アニメーション部門から木下麦監督が登壇

東京国際映画祭と日本外国特派員協会(FCCJ)の共同会見で、木下麦監督の最新作『ホウセンカ』が上映され、制作背景や創作哲学が語られた。(写真/東京国際映画祭事務局提供)
東京国際映画祭と日本外国特派員協会(FCCJ)の共同会見で、木下麦監督の最新作『ホウセンカ』が上映され、制作背景や創作哲学が語られた。(写真/東京国際映画祭事務局提供)

10月9日、日本外国特派員協会(FCCJ、東京都千代田区丸の内)で東京国際映画祭との共同会見が開かれた。アニメーション部門では、テレビアニメ『オッドタクシー』(2021年)の木下麦監督と此元和津也氏、スタジオCLAPによる最新作『ホウセンカ』が紹介され、木下監督が登壇した。

冒頭、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏が今年のラインナップを説明。「今年も昨年に続き力のある作品が集まった。昨年は中国作品が目立ったが、今年は東南アジア勢が多いのが特徴だ。意図的な編成ではなく、同地域の映画産業の変化、すなわち個人に加えて企業投資が活発化している背景がある」と述べた。さらに「史実や歴史上の人物を題材に、人物像を綿密に調べ、新たな視点で描き直した作品が多いことも今年の傾向だ」と付け加えた。

続いて、市山氏は注目企画とゲストに言及。「生誕100年に合わせ、三島由紀夫特集を実施する。ポール・シュレイダー監督の『MISHIMA』は過去に日本で上映機会が乏しく、第1回東京国際映画祭でも上映予定だったが理由不明のまま実現しなかった。今回は念願の日本初上映となる。4Kレストア版で、スクリーンでの体験は格別なので注目してほしい」と語った。

その後、アニメーション部門のプログラミング・アドバイザー藤津亮太氏が部門構成と選出の視点を紹介。「今年は12作品で構成。国内は“表現の挑戦”に焦点を当てた6本、海外は“世界と私の関係”をテーマに5本を選んだ」としたうえで、『ホウセンカ』と木下監督について「きわめてユニークで、日本のアニメーションが培ってきた感性を継承する作品。高畑勲監督が追求した“日常を丁寧に描く”流れの延長にある繊細さを評価した」と述べた。

木下麦監督は、部門選出について「『ホウセンカ』は2年半前に立ち上げ、映像を丁寧に作ることを目標にしてきた。『美しい』『丁寧だ』と言っていただけてうれしい」と喜びを語った。

質疑では、影響を受けた映画作家やオリジナル作品を作る意義について質問が出た。木下監督は「高畑勲氏、宮崎駿氏はもちろん、実写ではマーティン・スコセッシ氏、クエンティン・タランティーノ氏、北野武氏ら、人間を描く映画から強い影響を受けた。映画は人を描くものであり、それを大切にしている」と回答。加えて「近年のアニメが躍動感を重視する流れがある一方で、静けさや構図、ライティングで感情や物語を表せると考え、本作でその表現を追求した」と述べた。

上映後の質疑では、グローバルな視点での創作姿勢を問われ、「アニメーションは国境を越える素晴らしいカルチャーで、日本のアニメは海外でも支持が厚い。まず日本文化に根差すことを念頭に、日本的な題材を扱いながら、芸術性を保ちつつ新しい表現を生み出していきたい」と話した。

第38回東京国際映画祭×日本外国特派員協会の共同会見は、10月9日17時からFCCJで実施。登壇者は市山尚三氏(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)、藤津亮太氏(アニメーション部門プログラミング・アドバイザー)、木下麦監督(アニメーション部門『ホウセンカ』)、MCはKaren Severns氏(FCCJフィルム委員会)。

木下麦監督は多摩美術大学在学中からイラストレーター/アニメーターとして活動。監督補などを経て、オリジナルTVアニメ『オッドタクシー』で初の監督兼キャラクターデザインを務めた。同作でCrunchyroll Anime Awards 2022のBest Director、第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞などを受賞。以降、アニメ演出やコンセプトアートなど幅広く手がけている。

編集:田中佳奈

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