台湾・花蓮県光復郷の馬太鞍(マタイアン)地区で発生した大規模土砂災害から1カ月が経過した。中央災害対策センターはすでに光復地区の災害対応を「救援」段階から「再建」段階へと移行することを正式に発表。前線調整所の総調整官を務めていた季連成氏は任務を終え、今後は政務委員の陳金徳氏が長期的な再建を統括することになった。
季氏は、「今後は光復地区に排水ポンプ場と遊水池を設置するかどうかを評価し、各家庭に防水ゲートを導入する方針だ。これは数カ月で終わる事業ではなく、住民の安全を守るには構造的な対策が必要だ」と強調した。
しかし、政府が「救援から再建へ」と方針転換を打ち出した矢先、光復山地では再び小規模なせき止め湖(天然ダム)が発生。10月21日夜には馬太鞍(マタイアン)渓の仮設橋梁の南側が決壊し、一時的に冠水。北側の橋も水位が上昇した。幸い、21日午後には花蓮県政府が河川近くの住民を事前に避難させたため、大きな被害は免れたが、住民の間には再び恐怖と不安が広がった。
記者が20日に現地を訪れた際、この仮設道路は通行可能で、渓谷の底では大型重機とダンプカーが土砂を運搬し、まるで巨大な工事現場のような光景が広がっていた。だが翌日、雨が降っていないにもかかわらず、せき止め湖が決壊して仮設道路が一時的に冠水する事態となった。

経済が止まった光復 「再建」より先に「生計の回復」を
政府は「光復地区の電力は9割回復し、道路も概ね開通した」と説明しているものの、地域経済は依然として空白状態にある。多くの小規模農家や雑貨店、飲食業者が「経済的断絶」に直面し、収入が途絶えたまま。避難生活を続ける人々は、生活再建のめどが立たず、村を離れることを検討する者も少なくない。
「政府にはまず市場を再開してほしい。住民が野菜を買って自炊できるようにしてもらいたい。毎食弁当を配るだけでは意味がない」と地元住民は訴える。光復市場の再建費用は約900万台湾ドルと見積もられているが、公共事業の手続きが煩雑で、入札だけでも半年かかるという。「政府にお金がないわけではない。ただ遅すぎる」と地元関係者は嘆く。
住民らは、学校の給食設備や伝統市場、生活インフラの復旧を優先し、「自分たちで料理し、働いて収入を得られる環境」を取り戻すよう政府に求めている。

「せき止め湖」の不安が残る中での「集団的ためらい」
しかし、災害から1か月を迎えた花蓮県光復郷では、より深刻なのは「地域全体のためらい」が残っている。多くの地元住民は「水が引けば、生活は少しずつ元に戻る」と信じていた。商店が再開し、日常が再び動き出すと考えていたが、現実はそうではなかった。 (関連記事: 台湾・花蓮光復せき止め湖決壊 「越流は致命的な誤解」と李鴻源氏 撤退の遅れを悔やみ、選挙年の思惑で復旧が迷走 | 関連記事をもっと読む )
光復郷はもともと農業が主産業である。しかし現在、厚く堆積した泥の影響で農地を再び耕作可能な状態に戻すのは極めて難しい。耕作ができなければ、今後の生計も立たない。「補助金だけで生活を続けるわけにはいかない」と、ある地元住民は語る。