台湾民意基金会が10月に発表した最新の世論調査によると、総統・賴清德氏の職務遂行に「賛同する」と回答した国民は35%、「賛同しない」は53%、「意見なし・わからない」は12.6%となった。前月よりわずかに持ち直したものの、不支持層が依然として17.6ポイント上回っている。
これについて、ジャーナリストの黄揚明氏は政治番組『鄉民監察院』で、「賴清德氏の最大の問題は中間層の支持がほぼ消えたことだ。『信賴区』と呼ばれる雲林・嘉義・台南地域だけがかろうじて残っており、民進党は2026年地方選と2028年総統選で深刻な危機に直面している」と指摘した。
支持率はわずかに回復も、中間層離れ鮮明に
調査によると、前月と比べて賴氏の「職務遂行を評価する」割合は2.2ポイント上昇し、「評価しない」は5.3ポイント減少した。黄氏は「賴清德氏にまったく改善がないわけではない。実際、彼に対する“嫌悪感(仇恨値)”は少しずつ下がっているが、回復の幅は不十分だ」と分析する。
黄氏によれば、この調査では民進党支持者の割合が32.9%、賴氏の支持率は34.9%であり、「支持基盤はほぼ民進党の範囲に限定されており、無党派層や中間層の取り込みができていない。支持者の大半が“民進党の陣営”に偏っている以上、拡張性は乏しい」と述べた。

「信賴区」以外で低迷、民進党の選挙戦略に暗雲
さらに黄氏は、賴氏の地域別支持率を分析し、「雲林・嘉義・台南のみが50%を超え、他の地域ではすべて半数を下回っている。台北・新北の支持率は3割前後、反対は6割に達しており、この低支持率が2026年の地方選挙に大きな打撃を与える」と指摘。「候補者が賴清德氏を応援演説に呼ぶことをためらうだろう。むしろ“票を減らす存在”と見なされ、逆効果になる恐れがある」と述べた。
2028年総統選「一騎打ちでは勝てない」
黄氏はまた、「大規模なリコール選挙(罷免運動)後、賴清德氏は中間層を完全に失った。2028年の総統選で三つ巴構図にならない限り、勝ち目はない。もし一対一の構図になれば、今の支持率では絶対に過半数を取れない」と断言した。

とはいえ、黄氏は「賴清德氏にとって好材料もある」と述べた。「現在が支持率の底であり、これから政策的な“追い風”が出てくる可能性がある。その一例が“全国民への1万元現金給付”だ。もし来月の世論調査で支持率が上昇したら、それはこの政策の効果だ。38〜39%程度まで戻るのも不思議ではない」と分析した。
黄氏は続けて、「多くの人は実際にお金を受け取ると“政府が仕事をしている”と感じる。賴清德氏が毎日演説で“台湾の未来”を語るよりも、この1万元の方がはるかに実感を伴う」と指摘した。「この給付によって賴氏への嫌悪感が一時的に和らぐ可能性があり、今後数カ月で支持率が安定的に回復するかどうかが注目される」と述べた。
調査概要
今回の調査は、台湾民意基金会の游盈隆教授が質問設計、報告書作成、結果分析、公共政策および政治的意義の解釈を担当。山水民意研究公司が委託を受けて、抽出設計、電話調査、データ整理および統計分析を行った。
調査期間は2025年10月13日から15日までの3日間。対象は全国の20歳以上の成人で、固定電話と携帯電話を併用したデュアルフレーム無作為抽出法(dual-frame random sampling)を採用。固定電話70%、携帯電話30%の割合で実施された。
有効回答数は1,070件(固定750件、携帯320件)、95%信頼水準での誤差範囲は±3ポイント。内政部の最新人口統計に基づき、地域・性別・年齢・学歴の加重補正を行っている。調査費用は財団法人・台湾民意教育基金会(TPOF)が提供した。
編集:佐野華美 (関連記事: 台湾民意基金会世論調査》韓国瑜の発言が賴清德を上回る支持率 「中華民国なくして台湾なし」51%が賛同 | 関連記事をもっと読む )
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