中国、レアアース輸出規制強化 TSMCは「第二波」直撃懸念 欧米供給網も実は中国依存

2025-10-20 11:45
中国がレアアースの輸出規制を拡大。TSMCは今、「津波の第二波」にあると形容する声もあり、今後の展開に新たな変数をもたらす可能性がある。(写真、柯承惠撮影)
中国がレアアースの輸出規制を拡大。TSMCは今、「津波の第二波」にあると形容する声もあり、今後の展開に新たな変数をもたらす可能性がある。(写真、柯承惠撮影)
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米中の貿易戦争が激化するなか、中国当局はレアアースの輸出規制に踏み切った。今後、中国産レアアースを調達する際には、すべて中国政府の審査を経る必要がある。中国は世界のレアアース精製・供給の9割を握っており、この政策が発表されると米国株式市場は一時急落するなど、その影響力の大きさが浮き彫りとなった。産業系シンクタンク関係者は《風傳媒》の取材に対し、経済部が「TSMCのレアアース調達先は欧米や日本」と説明しているものの、実際にはこれらの国の企業も上流では中国産に依存していると指摘した。そのため、TSMCは中国によるレアアース輸出規制の「津波の第二波」の位置にあるとされ、今後の展開には不確定要素が多いと分析している。

レアアースとは何か?

レアアースとは、ランタン系15元素にスカンジウムとイットリウムを加えた計17種類の特殊元素を指す。これらは非常に高い導電性を持ち、半導体チップ、電池、コンピューター画面、医療機器、さらには軍需産業など、現代の電子製品に欠かせない材料である。例えば、戦闘機F-351機の製造には417キロのレアアースが必要であり、人型ロボット1体にも約4キロが使用される。

「レアアース」という名称は、地中における分布が局所的ではなく、複数の鉱床で混ざり合って存在することに由来する。さらに、17元素はいずれも外殻電子数が近く、通常の化学的手法では分離が困難である。そのため、地球上に存在量は少なくないものの、実用的なレアアース酸化物やレアアース金属を抽出するのは容易ではない。現在、この精製技術を握る中華人民共和国が、生産の主導権を事実上独占している。

中国江西省贛県の希土類鉱山。(AP)
中国本土はレアアース精製市場の90%を掌握しており、これが「レアアースカード」を打ち出す基盤となっている。写真は中国江西省贛県のレアアース鉱山。(写真/AP通信提供)

中華人民共和国は今年4月から、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の7種類の中・重レアアースおよび関連する永久磁石材料の輸出を規制している。さらに10月9日には、ユウロピウム(Eu)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の5種類の中・重レアアース金属・合金および関連製品についても新たに規制を発表した。これにより、中国が輸出を規制するレアアースは合計12種類となり、残るランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)の5種類は現在のところ規制対象外となっている。注目すべきは、ネオジムとプラセオジムが高性能永久磁石の製造に欠かせない材料である点である。今後この2種類も規制対象に含まれた場合、世界の産業界に及ぼす影響はさらに大きくなるとみられる。 (関連記事: 中国が再び「レアアース規制」発動  NYT報道「トランプへの警告、タカ派けん制」 関連記事をもっと読む

中国のレアアース制限が台湾に与える影響

台湾は2024年、中国本土から約6000トンのレアアース金属混合化合物を輸入しており、全体の86%を占めている。中華人民共和国が10月9日に新たなレアアース輸出規制を発表したことを受け、台湾では「護国神山」と呼ばれるTSMCおよび関連する半導体サプライチェーンへの影響に強い関心が集まっている。

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