日本家屋を活かして再生 台湾・桃園文学館オープン 旧市街を歩き、百年の文学時空をめぐる

2025-10-18 17:23
台湾桃園旧市街・忠孝街に「桃園文学館」が正式オープン。張善政・桃園市長(中央)は「地元文学の奥行きを感じてほしい」と来館を呼びかけた。(写真/桃園市政府提供)
台湾桃園旧市街・忠孝街に「桃園文学館」が正式オープン。張善政・桃園市長(中央)は「地元文学の奥行きを感じてほしい」と来館を呼びかけた。(写真/桃園市政府提供)
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台湾で桃園文学館が正式開館した。桃園旧市街・忠孝街に立地する新たな文化ランドマークは、文学の精神と建築美を融合させ、街にやわらかな文化のエネルギーを注ぐ拠点だ。文字・映像・記憶が交錯する空間で、魅力的な「文学の旅」が始まる。

百年をつなぐ、桃園文学の時空へ

歴史的景観が残る旧市街に位置する桃園文学館は、景福宮や東門国小、周辺の芸術文化施設にも近く、旧市街文化を結ぶ要の存在。本館は「書籍」をデザインコンセプトに据え、温もりある日本家屋「讀食小屋」とともに、過去と未来を載せる“文学の交差点”を体現する。

図説:桃園文学館の外観は日式建築の要素と現代的デザインが融合され、旧宿舎群の空間を活性化し、地方文学と多文化交流の重要なプラットフォームとなっている。(写真/桃園市政府提供)
外観は日本家屋の要素と現代的デザインを融合。旧宿舎群を再生し、地域文学と多文化交流のハブとして機能する。(写真/桃園市政府提供)

館内に足を踏み入れると、まずは光が差し込む広い1階エントランスが来館者を迎える。隣接するサービスカウンターと「小聚書店」には、選りすぐりの文学書や文創アイテムが並び、地元の独立書店・作家と連携した企画展も定期開催。日常にそっと“文学の香り”を広げていく。

図説:新しい館内の空間は明るく快適で、市民が文学と書香に親しむ新しいランドマークを生み出している。(写真/桃園市政府提供)
明るく開放的な館内は、市民が“書香”に親しむ新たなランドマークに。(写真/桃園市政府提供)

2階の常設展「文学、ここに逗留(とど)まる」は、来館者を百年の桃園文学へ誘う。展示は「点・線・面・景」という構成で、地域文学の系譜と物語を立体的に提示。文字を超え、温度と声を帯びた“都市の絵巻”として百年の時間を描き出し、寛容で可能性に富む土地を探る。

図説:桃園文学館常設展「文学逗留、ここにあり」は、地方文学の発展過程を示し、訪問者を桃園文学と作家の深い結びつきへと導く。(写真/桃園市政府提供)
常設展「文学、ここに逗留」は、地域文学の発展をたどり、来館者を桃園の作家と作品世界へといざなう。(写真/桃園市政府提供)

図説:三階特別展示エリアは桃園の地元ストーリーの映像化改編の歴程を展示し、「ルビンの花」などのクラシック文学作品を映像に変換する文化のリズムを紹介している。(写真/桃園市政府提供)
3階の特別展示は、在地物語の映像化の歩みを紹介。鐘肇政『ルビンの花』など古典文学の映像化プロセスに触れられる。(写真/桃園市政府提供)

3階の特設展は「字影桃源:在地の物語と映像化の出会い」。文学と映像のクロスを主題に、鐘肇政『ルビンの花』、陳銘磻『報告班長』などの映像化の歩みをたどる。古典から現代へ、作家たちの着想源や創作プロセスを映し出し、改編が領域横断の創造行為であることを示す。4階は推進・収蔵フロアとして、多目的空間で交流プログラムを展開し、文学の継承と発展を支える。

図説:高い書棚のデザインは、館の独特な美学的雰囲気を示し、桃園文學館の人気の写真スポットとなっている。(写真/桃園市政府提供)
吹き抜けを彩る高い書棚は館の象徴的デザイン。独自の美学を体現し、人気の撮影スポットにもなっている。(写真/桃園市政府提供)

都市の文学マップは、旧市街から

桃園駅から徒歩約10分。文学館は展示の場にとどまらず、都市の文化散歩の起点でもある。東溪緑園道、景福宮、独立書店、アートスペースへと歩いてつながり、体験としての“歩く文学”を提供する。今後は、分野横断ワークショップ、専門講座、「桃園文学季」など多彩な企画を通じ、読書を通じて都市を理解し、文学を日常に溶け込ませることを目指す。あわせて、学校・地域の文化館・市民団体と密に連携し、読書推進・読書教育の取り組みを強化。桃園の文化的土壌を、より深く耕していく。

十月の風が旧市街の路地をやさしく抜け、ページを繰る音が空気に混じる。桃園文学館で、暮らしのなかに息づく文学を体感してみてはいかがだろう。

イベント・展示の詳細は桃園文学館公式サイトまで。

桃園文学館公式サイトhttps://tylm.tycg.gov.tw

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編集:田中佳奈 

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