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論評:台湾・国民党は再び「身内の敵」に沈むのか 郝龍斌氏の「中道・務実」路線に趙少康氏が冷水 郝龍斌氏を力強く後押しする趙少康氏。「世代交代」の掛け声に惑わされるな」と党員に呼びかけた。(写真/趙少康氏のFacebookより)
台湾・国民党内の身内びいき体質は相変わらずだ。党主席選が熱を帯びるなか、候補の郝龍斌氏は「和中不舔(中国と向き合うが迎合せず)・親米不跪(米国と連携するが卑屈にならず)・友日不媚(日本と友好だが迎合しない)」と打ち出し、視座は党首級を超えて大統領レベルに広がる。日本の政治学者・小笠原欣幸氏も、同氏の対中(両岸)論を高く評価した。ところがベテランメディア人の趙少康氏が拙速に「中共の選挙介入」論を持ち出し、民進党の「設定した土俵」に飛び込み、結果的に郝氏を窮地に追い込んだ格好だ。
この局面の「深い水」 盧市長が距離を置く理由 政治と選挙はいつも複雑だ。外省系・軍系の背景を持つ郝龍斌氏が「親中」ではない一方、野百合運動世代の鄭麗文氏が「親中派」の代表格と見なされる皮肉。とりわけ今回の党主席選は「党の意思」と「民意」のねじれ、さらには「幽霊党員」問題が絡む。最有力とみられた盧秀燕・台中市長が距離を置いたのも無理はない。党首の座を握っても、直ちに総統選の主導権へと直結しないからだ。
郝氏は積極的に両岸政策の議論を提起し、党内での「両岸大論戦」を主張。さらに北京・上海への「事務所」設置案というサプライズも投下した。いま両岸は冷え込み、台商・台生の困難は山積している。発想としては創造的だが、国民党の財政は逼迫しており、大陸側に拠点を構えるには莫大なコストが要る。人員と運営費はどう賄うのか、現実的な詰めが問われる。
今年の国慶晩会は台中・文心森林公園の円満戸外劇場で開催予定。盧秀燕市長は公共交通機関の利用を呼びかけている。(写真/台中市政府提供)
「相互設置」は数十年の懸案 なぜ進まないのか 中国側の政治体制には「民主党派」が6つあり、その一つが「中国国民党革命委員会(民革)」だ。内戦で台湾に渡った国民党が、今さら対岸に「国民党」名義の事務所を置くことは、「民革」との正統性争いを招きかねない。中国当局が簡単に受け入れるかは極めて疑わしい。
そもそも事務所設置は国民の権益に直結する。馬英九政権末期にも「両岸両会の相互事務機関設置」が重点案件となり、米国も強い関心を示した。台湾側は「領事機能」に近い実効を期待し、中国側は「北京市駐在事務所」に類する地方政府窓口を想定。交渉は、陸委会×国台弁レベルから、海基会×海協会の「民間」相互設置案に格下げされつつ進んだが、最終的には政治要因で頓挫した。
中国・国台弁の張志軍主任が台湾訪問へ。双方の「相互事務所」設置に関する協議が焦点となる見通し。(写真/余志偉撮影)
民進党の思惑に乗った?――趙少康氏、「足を引っ張る味方」化 国民党の趙少康氏は、もはや「隠さない」。郝龍斌氏を公然と推しつつ、与党(民進党陣営)が選挙前に用いる手法をなぞる形で「中共介入選挙」を持ち出し、「赤色」レッテル貼りの作法まで模倣。挙げ句、民進党政権に対し国民党主席選の調査を求めた。被害妄想のようにも映るこの振る舞いは、まるで「民進党が乗り移った」かの姿だ。あまりに過剰な「気遣い」で郝氏を擁護した結果、周囲からは「地下党の党首を狙っているのでは」「大統領選への布石では」といった憶測まで飛び交う始末である。
さらに趙氏は、AIで改変された郝氏の「ハグ動画」を「介入選挙」の証拠だと提示したが、制作者は「海外在住の華人」で「中共のネット工作部隊ではない」と説明。趙氏が名指しした8つのチャンネルも、長期にわたり中共・トランプ・民進党を批判してきた実績があり、類似動画は枚挙にいとまがないことが確認されている。結果として趙氏の動きは空回りし、対抗陣営の鄭麗文氏に「新規ファン」を増やす副作用まで生んだ――当人は内心「矢を賜った」とほくそ笑んでいるだろう。
率直に言えば、台湾政治に通じる小笠原欣幸氏の評価は的確だ。郝氏は「九二コンセンサス」の焼き直しに頼らず、「中道・務実」の姿勢で対中政策を位置付けようとする。さらに中共に対し「台湾は独立せず、大陸は武力不行使」を明言するよう促すことを「大きな善意」として打ち出し、対中政策を中華民国憲法に回帰させるとともに、対岸に「中華民国の存在を正視し承認せよ」と求める――これは、王毅外相がワシントン訪問時に示した「憲法の立場」にも触れる構えである。
国民党主席選の鄭麗文氏、5日のテレビ政策発表会に出席。(写真/柯承惠撮影)
身内揉めの悪手で、優勢を自壊? いま国民党は立法院で第1党、地方でも優位を築く。一方、四面楚歌はむしろ頼清徳総統側に見える。野党が盛り返すこの局面で、共産党がわざわざ「介入」する必要がどこにあるのか。百年政党の国民党は内輪の争いに長け、対外戦に弱い。その悪癖で、せっかくの有利な盤面を自らの悪手で崩すのか。
党主席選が激化し、陰謀論が飛び交うなか、小笠原氏は郝氏の「直球勝負」を評価し、現実に向き合い政策論を提示できている点を「加点」とした。だが趙少康氏が「中共同路人」を焙り出す構図へと戦場をずらせば、郝氏の「加点」は、またしても身内の愚策で相殺されかねない。
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