レアアース・ショック 中国が「史上最厳」輸出規制 米ハイテク株急落、TSMCに操業リスク

2025-10-15 14:20
中国の「レアアース令」はなぜ世界を揺さぶるのか――「ストリーム」の正体。(AP通信)
中国の「レアアース令」はなぜ世界を揺さぶるのか――「ストリーム」の正体。(AP通信)
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中国商務省は10月9日、レアアース関連の製品・技術・図面・修理・サービスまでを網羅した新たな輸出・技術管理を相次いで公告し、輸出許可リストに組み込んだ。報が流れるや世界市場は動揺し、米ハイテク株は軒並み下落。海外メディアは「レアアース・ストーム」と形容した。

今回の措置は「史上最厳」といわれる。従来の規制と何が違い、どの産業が直撃されるのか。5つの視点で整理する。​

一、なぜ「レアアース・ストーム」が世界を揺らすのか

レアアースとは何か?なぜ「テクノロジーのビタミン」と呼ばれるのか

レアアース(Rare Earth Elements)とは、15種のランタン系元素にスカンジウム、イットリウムを加えた計17元素を指す。強い導電性と磁性を持ち、電子製品の性能と安定性を高めるため、現代産業の「テクノロジーのビタミン」と呼ばれる。半導体、バッテリー、ディスプレイ、医療機器から軍需まで用途は広く、たとえばF-35戦闘機1機には約417キロ、ヒューマノイドロボットには平均4キロが使われるなど、その戦略的重要性は極めて高い。

レアアースが「レア」とされるのは、地殻中の総量が少ないからではない。自然界で分散して産し、同一鉱床内でも複数元素が混在し、外殻電子構造が近似しているため、通常の化学的手法では分離が難しいからだ。鉱石から工業利用可能な高純度レアアース酸化物を取り出すには高度な精製技術が要り、このため供給網の主導権は長らく中国が握ってきた。

「中東に石油があるように、中国には希土類がある。」——元中国指導者鄧小平(1992年)

中国が世界レアアース市場で持つ独占的優位

中国は分離・精錬プロセスで優位にあり、米国地質調査所(USGS)や戦略国際問題研究所(CSIS)の推計では、世界のレアアース精錬・分離能力の85%超を長年掌握してきた。各国が鉱石を掘っても、最終的な分離・精製を中国に委ねざるを得ない構図が続いている。

技術面でも、中国企業・研究機関は溶媒抽出(solvent extraction)やイオン交換(ion exchange)に熟達し、一部酸化物は純度99.9%超に到達。半導体、航空宇宙、高精度エレクトロニクスの要求水準を満たしている。

これに対し、米国や日本は近年ようやく分離技術の再建に注力し始めた段階で、生産能力はまだ限定的。米エネルギー省(DOE)や豪Lynasのデータでも、中国以外で分離から酸化物生産まで一貫で賄える国はごく少数で、合計産量は世界の1割にも満たない。 (関連記事: レアアース戦争》中国の締め付けで米株急落 米中貿易衝突は本格エスカレートするのか 背景と帰結を一望 関連記事をもっと読む

2025年版「レアアース令」公表、市場にパニック

今回の中国の公告は12月1日施行。レアアースそのものの輸出許可に加え、関連する技術資料、設計図、分離・回収サービスまで申告対象に含めた。資源をテコに米国のハイテク規制に応じる戦略的措置と受け止められ、市場の動揺を招いている。

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