中国の国慶節が終わったばかりの中、中国商務部と海関総署は「6つの矢」を一斉に放った。具体的には、レアアース技術の輸出規制、リチウム電池関連物品の輸出規制、外国企業の不信頼リストへの追加、アメリカ船舶に特別港務費の徴収、クアルコム(Qualcomm)社への調査開始と特定の半導体開発生産関連のレアアース用途に対する重点的な審査などを発表した。これらの措置が誰に向けられているかは明らかで、中国が米国に対抗する一連の対策であることが伺える。
攻守交代、中国は米国を「首絞め」するか?
9月19日、トランプと習近平はようやく今年3回目の電話会談を行った。双方がTikTokについて合意に達したため、トランプ氏は非常に興奮し、近々会談することを明らかにした。それに対し、北京は控えめな態度を示し、台湾問題にも言及していない。そのため、米国の焦りが中国の余裕ある姿勢と対照的になっている。
「言葉少なければ大事有り」、これは中国動向を観察する指標の一つだ。最近の中国の6つの矢は、新しい頑丈な対策を準備していることを示している。その中でも最重要なのはレアアースの輸出規制の強化だ。さらに初めて「域外管轄」を始め、外国の組織または個人への提供も輸出管轄範囲に組み込んだ。そして、0.1%でも中国のレアアース技術を使用する場合、許可申請が必須だ。
これは、ただの規制補強ではなく、米国の巨大なレアアース需要に対する中国の「首絞め」戦術だ。トランプ政権が開始した技術戦以来、半導体やチップなどのハイテク製品は米国の重点規制対象である。しかし、中国は自助努力と技術開発で規制の壁を打破しようとしている。このため、次に注目すべきは、米中どちらが先に相手の規制を乗り越えられるかだ。
恥をかいて、トランプは苦笑い?
軍需産業の復興は、トランプ氏の「アメリカを再び偉大に」(MAGA)運動には不可欠だ。しかし、F-35戦闘機には418kgのレアアースが必要で、アーレイ・バーク級駆逐艦には2,600kg、バージニア級原子力潜水艦には4,600kgが必要だ。米国はその70%以上を中国から輸入している。それだけに中国のレアアース輸出規制は、米国の先進軍需産業に大打撃を与えた。

これがトランプ氏を怒らせた理由で、特別関税を導入し、APECでの首脳会談を取りやめる意向を示した。しかし、こうした施策は自滅を招くもので、関税の引き上げは米国の農業州の支持者を裏切ることに。トランプ氏が再度これを行えば、米国民が窮地に立たされるだけだ。そのため、トランプ氏は「震怒」を表した後、会談を再考すると述べた。
中国がレアアースで域外管轄を用いることは、新しい戦略ではない。米国が最初に国際企業に対して「長腕管轄」を使ったのだ。フランスの企業家フレデリック・ピエルジとジャーナリストのマチュー・アロンが2019年に出版した『アメリカの罠』は、米国がどのように法律と道徳を乱用し、多国籍企業を攻撃したかを暴露している。中国はそのやり方を学んで米国に対抗している。
技術の自立、米国が中国を超えさせた?
注目すべきは、中国が世界の約70%のレアアース採掘、90%の分離加工、93%の磁石製造を掌握している。禁令が出され、オランダの光刻機メーカーASMLが影響を受ける可能性が報じられている。このことは、ASMLの機械を使用するTSMCも影響を逃れられないことを暗示している。この場合、米商務長官のルートニック氏の計画は実現可能か?
トランプ政府とその側近者は、実は中国の規制対策そのものではなく、中国が技術自立を実現する可能性があることを心配すべきだ。こうした政策は、技術的自立を狙った中国が、自ら技術的主導権を握りつつある証拠でもある。
結局、トランプ氏の「極限圧力」は中国を技術大国へ押し上げる結果になるかもしれない。それなら彼は、王世堅の歌『没出息』を聞くべきだ。「今はあたふたしている眼を見開いても、恥ずかしくて何が言えるでしょう?」と問いかけるこの歌は、彼にぴったりのメッセージだろう。
*この文章は、メディア業界のベテランである筆者が執筆した。
編集:佐野華美
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