日本のスキャンダル文化を考察 フジテレビとサントリー事例でプルシャ博士が分析

プルシャ博士は外国特派員協会(FCCJ)で、フジテレビとサントリーのスキャンダルが、日本社会における「沈黙とセレブ保護」の時代の終わりを象徴していると指摘した。(写真/FCCJ提供)
プルシャ博士は外国特派員協会(FCCJ)で、フジテレビとサントリーのスキャンダルが、日本社会における「沈黙とセレブ保護」の時代の終わりを象徴していると指摘した。(写真/FCCJ提供)

日本外国特派員協会(FCCJ)は9月24日、「How to Think About Scandals in Japan: Fuji TV and Suntory CEO」と題した記者会見を開き、チェコ出身で日本のスキャンダル研究を専門とするイゴール・プルシャ博士(アンビス大学プラハ、メトロポリタン大学プラハ)が登壇した。

プルシャ博士は外国特派員協会で、フジテレビとサントリーのスキャンダルは日本社会における「沈黙とセレブ保護」の時代の終焉を示していると指摘した。FCCJ
プルシャ博士は外国特派員協会(FCCJ)で、フジテレビとサントリーのスキャンダルが、日本社会における「沈黙とセレブ保護」の時代の終わりを象徴していると指摘した。(写真/FCCJ提供)

プルシャ氏は、フジテレビでの元SMAP中居正広氏に関する性的加害疑惑と、サントリーの新浪剛史CEOによる大麻関連サプリ摂取疑惑という二つの事例をもとに、日本におけるスキャンダルの構造とその「儀式性」を詳細に解説した。冒頭で博士は、スキャンダル成立の条件を示した。「まず逸脱行為があり、それを暴露する内部告発者や記者が存在する。メディアが否定的に報じ、公衆の怒りを呼び起こし、最後に法的あるいは象徴的な制裁が下される。日本では『顔を失う』『地位を失う』といった象徴的判断が極めて重要だ」と語った。

フジテレビの事例については、2023年末に週刊誌報道で発覚した後、広告主の撤退や株主の抗議が相次ぎ、独立委員会の報告で経営陣の対応不備が明らかになった経緯を振り返った。プルシャ氏は「フジテレビは内部で事実を処理しようとしたが、逆に組織的問題を露呈させた」と指摘し、被害者への専門的支援を怠った姿勢を強く批判した。

さらに、フジテレビが行った二度の記者会見については「儀式的パフォーマンス」と分析した。1回目は謝罪と防御を繰り返すのみで「史上最悪の会見」と報じられ、2回目は437人の記者が集まり約10時間に及んだが、女性のプライバシー保護を理由に事実を伏せたため混乱を招いた。「謝罪、防御、攻撃の三つの戦略を組み合わせたが、誠実さを欠き、火に油を注ぐ結果になった」と批判した。

日本の報道構造については、「記者クラブに属する大手メディアは調査報道を避ける傾向があり、週刊誌や海外メディアが突破口を開く。その後、大手新聞やNHKが追随するという二重構造がある」と説明。今回も週刊誌の報道が先行し、海外メディアの報道が社会的圧力を高めたことで、大手も報道せざるを得なかったと述べた。

一方、サントリー新浪剛史CEOのサプリ摂取疑惑については「進行中の事件」と前置きしつつ、日本の保守的な経済界が現状維持を志向する中、グローバル市場の圧力が企業文化の変革を促していると分析した。また、ジャニー喜多川氏事件以来の性暴力問題やジェンダー不平等を背景に、日本社会全体が変化を迫られているとも述べた。

結びにプルシャ氏は、「今回の一連の事件は、セレブリティ保護や企業・メディアの沈黙が終わりを迎えつつあることを示す」と強調。「変化は緩やかだが、公衆の怒りや外部からの圧力が民主的説明責任を推し進めている」と述べ、日本におけるスキャンダルが社会変革の契機となり得ることを指摘した。

編集:田中佳奈

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