【武道光影】大東流合気柔術に息づく相撲技

2025-10-10 08:17
久琢磨と千葉紹隆の直伝を受けた重要な門弟、大東流合気柔術「講武館」館長川邉武史氏、葉志堅撮影
久琢磨と千葉紹隆の直伝を受けた重要な門弟、大東流合気柔術「講武館」館長川邉武史氏、葉志堅撮影

柔術と聞けば、多くの人が思い浮かべるのは、力で相手をねじ伏せる体格を利した相撲とは一線を画す姿だろう。ましてや、脱力と柔らかさを真髄とする「合気」柔術であればなおのこと、その隔たりは大きいように思われる。しかし、合気柔術の源流と目される「大東流合気柔術」には、関西の地で相撲技を取り入れた独自の稽古法が密やかに受け継がれている。その源を辿ると、かつて朝日新聞大阪本社で理事を務めた大東流合気柔術の継承者、久琢磨という人物に行き着く。そして、彼が厚い信頼を寄せた門弟・川邉武史が、師から受け継いだ教えと自身の探求を融合させ、最終的に今日の大東流合気柔術「講武館」に見られる、相撲の神髄を内に秘めた比類なき合気技へと発展させたのである。

久琢磨は学生時代、優秀な相撲選手であった。神戸高商(現・神戸大学)相撲部の主将を務め、関西学生相撲大会で優勝した経歴を持つ。この事実を鑑みれば、相撲技が、彼が後に修めることとなる大東流合気柔術に影響を及ぼしたであろうことは想像に難くない。久琢磨が大東流合気柔術を学んだのは、朝日新聞社に勤めてからのことである。同社にいた神戸高商の先輩・石井光次郎の紹介で、のちに「合気道」を創始する植芝盛平と出会い、その門を叩いた。興味深いのは、当時、植芝盛平は自ら教える武道を「旭流」と称していたが、その師である武田惣角が大阪を訪れたと知るや、慌ただしくその場を去り、決して顔を合わせようとしなかったという逸話が残っていることだ。

その後、久琢磨は大東流合気柔術中興の祖と称される武田惣角に直接師事し、武田惣角から唯一「免許皆伝」を授けられた門弟となった。久琢磨の尽力によって大東流合気柔術は関西で確固たる礎を築き、幾多の優れた門人を世に送り出した。その影響力は四国にまで及び、関西以外に武田惣角大東流合気柔術のもう一つの重要な伝承地へと押し上げたのである。川邉武史は、こうした流れの中で大学時代から久に師事して植芝流の合気道を学び、卒業を機に大東流合気柔術の本格的な修行へと身を投じた。そして遂には、久琢磨本人から直々に教授代理に任命されるに至る。 (関連記事: 【武道光影】幕末維新の剣―― 野太刀自顕流と日本の近代化過程 関連記事をもっと読む

現在81歳となる「講武館」館長、川邉武史の合気柔術修行経歴は60年を超える。彼は学生時代より久琢磨に教えを受けただけでなく、その後も四国、北海道へと足を運び、中津平三郎の門弟である千葉紹隆や蒔田完一、さらには武田惣角の息子・武田時宗からも指導を仰いだ。これにより、大東流合気柔術の技法を余すところなく受け継いでいるといえよう。そして、相撲技と合気柔術の融合は、彼の修行における特筆すべき功績の一つである。それは師・久琢磨からの伝承もさることながら、川邉武史自身の相撲技への深い愛好と探求心の賜物であった。川邉武史は、合気柔術が力と力の衝突を避ける一方、重心の巧みな昇降や運動軌跡の捉え方においては、相撲技と多くの共通点を見出しており、そこから学ぶべきと考えている。

最新ニュース
高市早苗氏、就任前から難路 公明との溝と追加予算の壁、アメリカ学者が悲観的見解
中国商務部が「史上最厳しいレアアース禁令」を発表、米日台の供給網直撃!NVIDIAとAppleに深刻な影響
Another Side of Japan、成田国際空港で放映開始
Another Side of Japan、ソニーマーケティングと連携し映像制作をアップデート
Another Side of Japan × せとうちパレットプロジェクト 倉敷を舞台にしたコラボレーション映像「岡山・倉敷篇」公開
台湾映画『優雅な邂逅』上映、パンデミック下の台北が映す チャン・ツォーチ監督が語る「人と人の出会いが希望を生む」
K-POP×渋谷カルチャーが交差 「渋谷ファッションウィーク2025秋」10月19日開催
Peatix、「ハンドクラフト特集」公開 編み物ブームや“ぬい活”が広げる新しい自己表現の形
「SSFF & ASIA 2025秋」オンライン特集 アイスランドの絶景と人間ドラマを描く5本の短編上映
陸文浩の視点:中国海軍の新病院船「シルクロード・アーク」号が初の遠洋任務へ 南太平洋・南米を巡る「ミッション・ハーモニー2025」始動
台湾・彰化で最大級の「台湾デザイン展2025」開幕 588イベント・700人のデザイナーが地域の未来を描く
ノーベル平和賞発表前夜にトランプ氏が仲介 イスラエル・ハマスの人質交換合意を発表 2年の紛争終結へ、撤退条件は不透明
台海分析》鄭麗文氏、国民党主席選のダークホースに浮上 北京が注目する「好意2点と懸念1点」
アニコム、文京区に『JARVISどうぶつ医療センターTokyo』開院 ロボット手術とAIで獣医療の未来を変革
牙狼〈GARO〉20周年記念展「魔戒録」渋谷で開催 最新作『GARO TAIGA』の衣装・ホラー造形を初公開
2025年ノーベル化学賞 京都大学・北川進教授ら3教授が受賞 気体を“捕まえる”新素材「MOF」で世界を変える
高市早苗新総裁に「期待できる」50%超 最優先は「消費税減税」 紀尾井町戦略研究所の緊急調査
【DeNA】度会隆輝が豪快2ラン!牧秀悟も完全復活へ CS前最後の実戦で打線に光
中国が警戒「史上最も反中の首相」 高市早苗の誕生に北京が静かに揺れる 日米同盟と台湾情勢が最大焦点
デンソーとテュフ ラインランド ジャパンが包括提携 「デジタルプロダクトパスポート」でサステナブル製造を加速
Oh my teeth導入クリニック「東京新宿矯正歯科」移転リニューアル 診療ブース2.9倍に拡張、利便性と快適性を両立
米政府閉鎖が長期化へ 株価は安定も雇用市場に悪化の兆し 専門家「FRBは利下げに動く可能性」
「ファクハク 静岡工場博覧会」過去最大規模で10月開催へ 刀鍛冶体験から工場マルシェまで!
ベトナム北部で広範囲に洪水、8人死亡・5人行方不明 三河水位40年ぶりの高水準
SSFF & ASIA代表・別所哲也氏、「ショートフィルム文化功労賞」を受賞 札幌国際短編映画祭20周年を祝福
トランプ氏が仲介「イスラエル・ハマス和平計画」第一段階に合意 ガザ戦争ついに終結へ?
安倍昭惠氏「台湾有事は日本有事」 駐日台湾代表処の国慶レセプションで日台関係の深化を誓う
高市早苗氏、靖国参拝を見送りへ調整 首相就任目前で見せた「穏健転換」の背景とは
NVIDIA、イーロン・マスク氏のxAIに約3000億円投資へ AIインフラ主導権を狙う戦略転換
武装解除か、壊滅か? トランプの最後通告に直面するハマス――『フィナンシャル・タイムズ』が迫る「存亡の選択」
「日本版サッチャー」か「麻生派の傀儡」か 高市早苗が挑む茨の政権運営
2025年ノーベル物理学賞 巨視的量子トンネル効果を実証し、量子技術の基盤を築く クラーク氏、デヴォレ氏、マーチニス氏が共同受賞
張鈞凱のコラム:「台湾有事は日本有事」という幻想と現実
舞台裏》「海鯤号」納艦延期の危機 台湾初の潜水艦プロジェクトで技術・人事の波紋広がる
トランプ版「台湾戦略」の2大柱:“限定支援”と“距離を取る姿勢” アメリカはもう台湾を守らないのか?
賴清德氏、トランプ氏に「習近平を説得できればノーベル平和賞」発言 TSMCが「アメリカを再び偉大に」?
論評:台湾ドラマ『零日攻撃』に酷評の嵐 総額12億円の国家プロジェクトが「認知戦」ドラマとして大失敗
「チェーンスーパー時代は終わった」元ネスレCEOが警鐘 イオンもヨーカ堂も赤字寸前
評論:賴清徳総統「トランプにノーベル平和賞を」発言が波紋 米中狭間で揺れる台湾の現実
ノーベル賞基金、資産は設立時の200倍に 100年超の「金融成功物語」 賞金が減らなかった理由とは?
天気予報》ダブル台風発生の恐れ 北東季節風が到来、10月15日から一気に秋模様へ 国慶連休に再び猛暑
台湾ドラマ『零日攻撃 ZERO DAY』最終回に現実離れの声 「小銃で中国軍を防げるのか」元少将が苦言
フランス史上最短命の首相、27日で辞任 マクロン政権が再び崩壊危機に
台湾発AI医療が世界をリード 脳波で「うつ病リスク」を数値化する新技術登場 診断を客観化、患者の治療意欲を高める
カーティス教授「自民党の統治モデルは行き詰まりにある」
現場》台湾・頼清徳政府の全社会防衛レジリエンス、花蓮のせき止め湖災害で試練 救助は国軍とスコップヒーローに依存
「高市トレード」が日本市場を揺るがす、アベノミクス再来か? 『フィナンシャル・タイムズ』:日本初の女性首相誕生カウントダウン、東アジアの地政
台湾民主化の記憶を写す 謝三泰写真展「街頭劇場、火燒島」東京で開幕
台湾の「ネット女神」Iris Huoが別府「ガレリア御堂原」を訪問 アートと温泉の融合に感嘆