日本初の女性首相誕生目前、高市早苗氏に立ちはだかる史上最難の課題 ― 保守派の重荷から脱却できるか

2025-10-08 17:14
(写真/AP)
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自民党総裁選の決選投票で、政界のプリンス・小泉進次郎氏を破り、第29代総裁に就任した高市早苗氏。日本憲政史上初の女性首相誕生が目前に迫るなか、祝賀ムードの裏で、政界の現実が容赦なく押し寄せている。

『朝日新聞』や『読売新聞』の分析が示すように、今回の総裁選勝利は高市氏にとって「最も容易な戦い」にすぎなかった。これから彼女を待つのは、政治的地雷と権力闘争が錯綜する複雑な盤面である。米ワシントンのシンクタンク「インド太平洋安全保障研究所」(Institute for Indo-Pacific Security)の辰巳由紀氏は、「高市氏が師である安倍晋三元首相のように、現実的で強靭な“茨の女王”として歩めるかが鍵だ」と論じた。

2025年10月4日──日本政治史に刻まれる日

2025年10月4日、前経済安全保障担当相の高市早苗氏が自民党総裁選を制し、党創立以来初の女性総裁となった。永田町から海外メディアまで、多くの政治観測筋は小泉純一郎元首相の長男・進次郎氏の勝利を予測していた。だが結果は覆り、高市氏が歴史を塗り替えた。「自民党史上最年少の総裁」と目された小泉氏を退けた高市氏の登場は、単なる政権交代を超えた象徴的な意味を持つ。だが、ドラマティックな逆転劇の先に待つのは、厳しい試練であると専門家は指摘する。

2025年10月4日、日本自民党の総裁選で高市早苗が第二ラウンドの投票で小泉進次郎を破り勝利した。(美聯社)
2025年10月4日、日本自民党総裁選で高市早苗氏が第二ラウンドの投票で小泉進次郎氏を破り勝利。(写真/AP通信)

大物たちの「代理戦争」 高市氏の背後にいる影武者

辰巳由紀氏は外交誌『The Diplomat』への寄稿で、「10月4日の自民党総裁選は、高市早苗個人の勝利というよりも、党内三人の“造王者(キングメーカー)”――麻生太郎、菅義偉、岸田文雄――による代理戦争だった」と分析する。

高市氏の勝利の背後には、第二回投票で派閥票を巧みに動員した麻生太郎氏の存在があった。「実際に勝ったのは麻生派である」と辰巳氏は指摘し、政治評論家の間でも「高市政権は麻生派の影響を強く受ける」との見方が広がっている。その構図は早くも現実となった。高市氏は勝利直後の人事で、麻生氏の義弟にあたる鈴木俊一氏を自民党幹事長(党ナンバー2)に起用。この決定は、彼女の今後の政権運営が派閥の力学を無視できないことを明確に示した。

高市氏は首相として国家を率いる一方で、党内の複雑な派閥政治を調整しなければならない。その一つ一つの判断が、背後の「影の実力者」たちの神経を刺激し、政権の安定を左右する可能性がある。

自民党の三人の元首相:麻生太郎、菅義偉、岸田文雄。(美聯社)
自民党の三人の元首相:麻生太郎氏、菅義偉氏、岸田文雄氏。(写真/AP通信)

連立政権の綱渡り 高市政権が直面する右傾化への懸念と新たな同盟の選択

党内の権力均衡に加え、高市早苗氏が直面する喫緊の課題は、10月中旬に予定される首相指名選挙を前に、与党・自民党が新たな連立パートナーを見つけることである。現在、自民党は衆参両院で少数派に転落しており、政権の安定を確保するためには執政基盤の拡大が不可欠となっている。 (関連記事: 「高市トレード」が日本市場を揺るがす、アベノミクス再来か? 『フィナンシャル・タイムズ』:日本初の女性首相誕生カウントダウン、東アジアの地政 関連記事をもっと読む

有力な選択肢として浮上しているのは、日本維新の会と国民民主党の2党だ。両党は経済政策や行政改革などで自民党と一部の方向性を共有する一方、安全保障や社会政策では大きく立場が異なる。どちらと手を組むか――その判断は高市氏の政治的手腕と交渉力を試す試金石となる。

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