米イラン停戦合意、事実上崩壊か トランプ氏が報復攻撃を示唆「協議は時間の無駄」

2026-07-09 16:57
トルコのアンカラでNATO首脳会議に出席したトランプ米大統領。(AP通信)
トルコのアンカラでNATO首脳会議に出席したトランプ米大統領。(AP通信)

トルコの首都アンカラで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席したドナルド・トランプ米大統領は、ペルシャ湾で米国とイランが再び武力衝突に至ったことを受け、複数のメディアに対し、締結から1カ月未満の米イラン停戦合意が事実上崩壊したと見解を明らかにした。

「私にとって、この停戦は完全に終わった」

トランプ氏は記者団の質問に対し、イランとの交渉や条件闘争をこれ以上続けるつもりはないと強調。その一方で、ホワイトハウスや米政府の交渉チームが依然として協議継続を模索していることについては、「時間の無駄だ」と一蹴した。

トランプ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談に先立ち、集まった各国メディアに対し、米軍が未明にイランへの新たな大規模空爆に踏み切ると予告した。

「ここで小さな警告を与えておく。我々は今夜、彼らを徹底的に叩きのめす」

トランプ氏はゼレンスキー氏と共同で取材に応じた際、イラン政府の交渉代表団を強く非難した。これまでの非公開協議で議論された条件や停戦の基本枠組みについて、イラン側が「嘘ばかりついている」と強い憤りを露わにした。

2026年7月5日、イランの首都テヘランのイマーム・ホメイニ・モスクで、故最高指導者・ハメネイ氏と家族の葬儀に参列する人々。狙撃銃のスコープで狙われるトランプ氏が描かれた旗を掲げる参加者の姿も見られた。(AP通信)
7月5日、イランの首都テヘランのイマーム・ホメイニ・モスクで開かれたイラン前最高指導者、ハメネイ師とその家族の葬儀に参列する人々。狙撃銃のスコープで狙われるトランプ氏が描かれた旗を掲げる参加者の姿も見られた。(AP通信)

トランプ氏はまた、米国の対イラン戦略と最終目標を改めて明確にし、「米国にとって現在の最大の目標は、イランの完全な『非核化』を実現することだ」と断言した。さらに、イラン革命防衛隊(IRGC)が最近、ペルシャ湾で国際商船を攻撃するなど度重なる挑発行為を行っていることに強い不快感を示した。米国としてイラン政権の転覆を強行する意図はないと強調しつつも、イランによる核兵器の保有は断じて容認しない姿勢を鮮明にした。

トランプ氏「停戦合意ない方が対処しやすい」

今後、米イラン間で和平合意が再締結される可能性について問われると、トランプ氏は「将来新たな合意がなされるかは分からない。率直に言って、『合意なし』の状態で問題を処理・解決することになるかもしれない。なぜなら、合意がない方がかえって対処しやすいからだ」と語った。

地政学的リスクの高まりを受け、米株式市場の主要3指数は揃って下落した。ダウ工業株30種平均は400ドル超の値下がりとなり、S&P500種株価指数は0.6%安、ナスダック総合株価指数も0.4%安を記録した。一方、原油価格の国際的な指標は急伸し、WTI原油先物が5%、北海ブレント原油先物が5.2%それぞれ上昇した。

事態の急転は、過去24時間以内にホルムズ海峡で米国とイランが再び交戦状態に陥ったことに起因する。米中央軍(CENTCOM)の発表によると、今回の攻撃は、IRGCが同海峡内でカタール船籍の液化天然ガス(LNG)運搬船やサウジアラビア船籍の超大型タンカーなど国際商船3隻に対し、ミサイルによる奇襲を行ったことへの報復措置だという。さらに、ペルシャ湾の沿岸国でイランに近いクウェートの軍当局も、自国の防空システムが弾道ミサイル2発と無人機(ドローン)13機を迎撃したと明らかにした。

イランの首都テヘランで営まれた故ハメネイ氏の追悼式典。黒板に「#我々はトランプを排除する」と書き込む市民の姿が見られた。(AP通信)
イランの首都テヘランで営まれた故ハメネイ氏の追悼式典。黒板に「#我々はトランプを排除する」と書き込む市民の姿が見られた。(AP通信)

CENTCOMはその後、米軍がイラン沿岸部に対して壊滅的な空爆を実施したことを確認した。水上艦艇やミサイルを用い、バンダルアッバースやシーリークなどの戦略的要衝に位置するIRGCの軍事目標80カ所以上を爆撃。イランの防空ミサイルシステム、沿岸レーダー施設、地対空ミサイル基地、対艦巡航ミサイルの掩体壕、さらにはドローン発射場などを精密攻撃により破壊した。

陸上の目標に加え、米海軍はペルシャ湾上に展開していた60隻以上の武装ボートを撃沈し、複数の軍用埠頭を炎上させた。

一方、米財務省はイランによる停戦合意違反が発覚した直後、イランに対し原油や石油化学製品の合法的な輸出を認めていた「制裁の適用除外措置(ウェーバー)」を直ちに撤廃すると発表した。

編集:平松靖史

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