日本記者クラブで2026年6月22日、「イスラエル・アメリカのイラン攻撃、背景と影響」をテーマにした第11回記者会見が開催され、同志社大学大学院の三牧聖子教授が登壇した。三牧教授は、建国250年を迎えるアメリカが直面する政治的・社会的な危機と、トランプ政権が引き起こしたイラン戦争の背景について、アメリカ政治外交の視点から詳細な分析を行った。
アメリカ社会の分断を指摘
三牧教授はまず、現在のアメリカ国民の約7割がアメリカンドリームはもはや存在しないと回答している世論調査を提示し、深刻な物価高と生活苦に直面する社会の現状を指摘した。
トランプ大統領は2024年の大統領選挙において、中間層の生活支援や無益な対外戦争の終結を掲げて再選を果たしたにもかかわらず、政権発足後はイーロン・マスク氏ら超富裕層との結託を深め、生活問題を放置していると説明した。
マスク氏の主導で人道支援機関の解体が進むなど深刻な事態が起きているほか、大統領の個人的な意向による6億ドル(約980億円)規模のホワイトハウス改修工事も問題視されている。それにもかかわらずトランプ大統領の支持率が3割台を維持している理由について、物質的な恩恵ではなく、支持者の喪失感やプライドといった感情的次元に働きかける政治手法が影響していると分析した。
対イラン軍事介入は公約に逆行
イラン戦争への突入に関しては、トランプ政権が掲げていた「アメリカ・ファースト(米国第一)主義」に完全に逆行する軍事介入であると強く批判した。2月11日のシチュエーションルームでの会談において、イスラエルのネタニヤフ首相がイランの体制転換やホルムズ海峡の安全を主張し、トランプ大統領を説得したことが決定打となり戦争に引き込まれた経緯が明かされた。
この戦争はアメリカ側に利益をもたらさず、開戦当初から支持率が3割台にとどまる極めて不人気な軍事行動であった。政権内部や熱烈なトランプ支持層であるMAGA層からも、自国ではなくイスラエルをファーストにしているとの批判が噴出し、テロ対策トップの辞任といった事態も招いた。
合意文書と世論変化
国民の強い不満と支持離れに直面したトランプ政権は、6月17日にイランとの間で終結に向けた14項目の合意文書に電子署名し、スイスでの協議を開始した。三牧教授は、合意文書の内容が実質的にイラン側の主張を反映したものであり、アメリカ側の利益は皆無であったと指摘した。
また、秋の中間選挙を控え、アメリカ国民の間でパレスチナ支持がイスラエル支持を上回るなど世論が大きく変化しており、トランプ大統領やバンス副大統領もレバノンでの無差別的な軍事行動を続けるイスラエルに対して強い批判を展開せざるを得ない状況に追い込まれていると語った。
民主党にも厳しい見方
一方で三牧教授は、民主党の現状についても厳しい見方を示した。民主党が労働者の党としてのアイデンティティを打ち出せず、物価高に苦しむ有権者に対して自由などの抽象的な理念の訴えに終始したことや、ガザでのイスラエルの軍事行動に対する無条件支援を継続したことが、若者や進歩派の支持離れを引き起こしたと分析した。
今後の展望として、格差問題に正面から取り組み、イスラエル政策の根本的見直しを主張するマムダニ氏やタラリコ氏のような若手民主社会主義者の台頭が、アメリカ政治を大きく変える鍵になると予測した。
日本は立ち位置の再構築を
最後に、アメリカの国家安全保障戦略に見られるトランプ版モンロー主義や、ベネズエラへの不法な軍事行動など、アメリカが広範な世界的関与を減らし多極化する世界へと移行している現状を解説した。
三牧教授は、アメリカが国内に矛盾を抱えて脆い存在となっている今、日本はかつてのような絶対的な後ろ盾としてのアメリカにノスタルジーを抱くのではなく、自国の立ち位置を再構築し、中国を含む他国との関係を独自の戦略で管理していく必要があると警告し、会見を締めくくった。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp
編集:小田菜々香















































