中国で「民族団結進歩促進法」施行 台湾人や海外華人にも及ぶ「越境弾圧」懸念

中国で「民族団結進歩促進法」が7月1日に施行された。(資料写真/AP通信)
中国で「民族団結進歩促進法」が7月1日に施行された。(資料写真/AP通信)

中国で7月1日、「民族団結進歩促進法」が施行された。台湾の国家安全保障当局者は同法について、世界で初めて「トランスナショナル・リプレッション(越境弾圧、国境を越えた弾圧)」を法制化した悪法だと指摘。この法律によって脅威を受ける対象は、中国国民のみならず、香港、マカオ住民、海外の華人、さらには台湾を含む世界中の人々に及ぶとの認識を示した。

同当局者は、民族団結進歩促進法の中で特にリスクが高い3つの条項を挙げている。越境弾圧」に関する第63条の条項、「扇動」や「資金援助」に該当するだけで重罪とみなす第62条の条項、第20条の「家庭教育の義務」だ。第20条では、各家庭に対し中国共産党を愛するよう未成年者を教育することを義務付け、民族の団結や進歩に反する思想を植え付けることを禁じており、イデオロギーによる統制を家庭内にまで浸透させている。

同法律によって脅威を受ける対象は多岐にわたると同当局者は説明する。具体的には、海外に居住するウイグル族、チベット族、モンゴル族、海外の華人や反体制派のほか、外国の議員、政治家、ジャーナリスト、学者、シンクタンクの研究員が含まれる。さらに、台湾の政府当局者や一般市民、多国籍企業やサプライチェーン(供給網)関連企業、インターネット上のプラットフォームやコンテンツクリエイター、宗教団体とその海外信者や幹部なども対象になり得るとしている。

同当局者によると、中国による越境弾圧の手段は主に6種類に分類される。域外管轄権の行使、海外における非公式の警察拠点設置、家族への連座制、国際指名手配、「扇動または資金援助」を理由とした刑事訴追に加え、「キツネ狩り作戦」や「天網作戦」と呼ばれる国外逃亡者の逮捕・強制送還だ。

さらに、台湾国家安全保障当局の高官も民族団結進歩促進法の成立により、今後誰もが直面し得る脅威やリスクについて警告する。渡航リスクに関しては、新疆ウイグル自治区、チベット、香港に関する問題を報じたジャーナリストや学者、NGO職員などが、関連する支援団体との関与を理由に香港への入境を拒否されたり、海外における非公式の警察活動が活発な地域で標的にされたりする可能性がある。企業関係者については、強制労働の調査に関与したり、「非レッド・サプライチェーン(中国企業を排除したサプライチェーン)」の構築を提唱したりした場合、中国当局から一方的に有罪と見なされる恐れがある。また、海外の華僑・華人についても、国外で民主化運動や民族運動に同情したり参加したりした経験があれば、中国本土や香港、マカオへ渡航する際のリスクが著しく高まるという。

この高官はまた、中国が一昨年に導入した規定にも言及。同規定により、中国の情報機関、国家安全部が必要と判断すれば、個人のスマートフォンやパソコンをいつでも検査できる。またあらゆるプラットフォームのSNSアカウント情報の提供が強制され、特定の言論に対し「間違っていない」とコメントしただけで身柄を拘束され、帰国できなくなる可能性があるなど、恣意的な運用が懸念される。

こうした事態を受け、今月上旬、駐中国米国大使館は米国市民に対し、中国国内における関連リスクに注意を喚起し、不要不急の香港・マカオなどへの渡航を避けるよう呼び掛けた。ドイツ政府も同様の警告を発しており、国際社会がこの問題を深刻に受け止めていることが浮き彫りになっている。

この高官は、民族団結進歩促進法について国際連合(国連)が基本的人権条約違反との見解を示したと指摘。欧州議会(EP)も4月30日、同法が中国自身の憲法や対外的に表明している国際的義務に背くとする決議を採択し、越境弾圧に反対する姿勢を明確にした。各国の主要シンクタンクも相次いで懸念を表明しており、国際社会における警戒感が急速に高まっている。

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