藤岡奈穂子氏、日本人・アジア人女性初の国際ボクシング殿堂入り FCCJで女子競技の未来語る

日本人・アジア人女性初の国際ボクシング殿堂入りを果たした藤岡奈穂子氏が記者会見を開き、異例のキャリアを振り返るとともに、女子スポーツ界の環境改善と次世代育成に向けた強い決意を表明した。(写真/FCCJ提供)
日本人・アジア人女性初の国際ボクシング殿堂入りを果たした藤岡奈穂子氏が記者会見を開き、異例のキャリアを振り返るとともに、女子スポーツ界の環境改善と次世代育成に向けた強い決意を表明した。(写真/FCCJ提供)

世界5階級制覇の実績を持つ元プロボクサーの藤岡奈穂子氏が、日本外国特派員協会にて記者会見を行った。藤岡氏は先日、米国ニューヨーク州カナストータで開催された式典に出席し、日本人女性ならびにアジア人女性として初めて国際ボクシング殿堂入りを果たした。

引退から約3年が経過した現在、殿堂入りについて「これまでのボクシング人生に対するご褒美であり、自身の新たな使命ができた」と語り、今後は後進の育成や環境改善のために尽力する姿勢を示した。

23歳でボクシングを開始

藤岡氏のボクシング人生は23歳の時に宮城県大崎市で幕を開けた。実業団でソフトボールチームの主将を務めていたが、チームのあり方を巡る会社側との意見の相違から退社を決意した。その後、空手を志すも年齢を理由に難色を示され、地域の広報誌で見かけたボクシング練習生募集の案内に惹かれて競技を開始した。

当時は女子アマチュアボクシングが公認されておらず、農村婦人センターを借りて週3回の練習を行い、年に一度のスパーリング大会に向けて10年間にわたり鍛錬を重ねたという。

プロへの転向は33歳の時であり、当時のプロテスト受験資格である32歳を超えていたものの、女子競技者が少ない時代背景もあり特例としてプロテストを受ける機会を得た。人生に一度の挑戦として退路を断って上京し、異例のプロ生活をスタートさせた。

震災後の初世界戦が転機に

5階級制覇という偉業の中で最も印象に残っている試合として、藤岡氏は初の世界タイトル挑戦を挙げた。本来は2011年3月12日に予定されていたが、東日本大震災の影響で中止となった。

一時はボクシングを辞めることも考えたが、被災した地元住民からの「藤岡さんの試合だけが今の楽しみだ」という声援に背中を押され、同年5月8日に実施された試合で見事に初の世界王者となった。試合で奪った2回のダウンについては「自分一人の力ではなく、震災に遭われた皆様から支えられた力だった」と当時を回顧している。

日本の女子スポーツや女子ボクシングを取り巻く環境について、藤岡氏はメディアの報じ方に対する長年のジレンマを明かした。競技そのものの強さや美しさよりも、容姿などに焦点が当てられがちな風潮に苦言を呈している。

女子ボクシングの環境改善へ

また、ボクシング界の指導者や決定権を持つ層の大半が男性であり、女子特有の体調管理に関する理解不足や、ファイトマネーにおける顕著な男女格差などの課題も指摘した。こうした現状を変えるべく、現在は順天堂大学大学院でスポーツマネジメントを専攻し、セーフガーディングについて研究を行っている。

将来的には、女性が自尊心を育み、ハラスメントや暴力から身を守るためのアカデミーを設立し、自分らしい人生を選べるよう支援する取り組みを目指している。

今回、日本外国特派員協会で会見を行った理由について、日本の現状は内部から自発的に変わりにくい性質があるため、外からの国際的な発信を通じて変革を促したいとの狙いを語った。また、女子ボクサーを描く映画が悲劇的な結末を迎えることが多い点にも触れ、今後は競技の美しさや力強さを真正面から伝える作品の登場を期待していると述べた。

「強さには優しさも必要」

最後に、ボクシングにおける強さの定義について「リング上では相手の嫌がることをする厳しさが必要だが、リングを降りれば誠実でなければならない。真に強いチャンピオンには同等の優しさが不可欠である」と自身の哲学を語り、会見を締めくくった。

編集:小田菜々香

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