米国務長官で、国家安全保障担当大統領補佐官代行も務めるマルコ・ルビオ氏はこのほど、米上院外交委員会と下院歳出小委員会に相次いで出席し、2027会計年度の国務省予算をめぐって答弁した。
この2つの公聴会での発言は、第2次トランプ政権、いわゆる「トランプ2.0」が本格的に動き出す中で、米国の大戦略(グランド・ストラテジー)を包括的に示したものと受け止められている。そこに浮かび上がったのは、冷戦後の「自由主義的国際秩序」の終焉であり、国益と地政学的利益を最優先する「新現実主義」への明確な転換だった。
戦争は本当に「終わった」のか
今年2月末に米国とイランの武力衝突が始まって以降、ルビオ氏が初めて議会に姿を見せたのは6月上旬のことだった。同氏は上院外交委員会で国務省の2027会計年度予算について質疑に応じ、同日には下院議員に対しても、イラン戦争の最新情勢と外交方針を説明した。
この「連続公聴会」のうち、一方は長期的な外交戦略と予算をめぐる議論であり、もう一方はイラン戦争と対イラン政策そのものに焦点を当てたものだった。ルビオ氏は冒頭、あくまで通常の予算公聴会であることを強調し、場の空気を「専門的な説明」に戻そうとした。しかし、議員らが追及の手を緩めることはなかった。
民主党議員と一部の共和党議員は、相次いで核心を突いた。ホワイトハウスによる対イラン軍事行動の法的根拠は何か。戦略的な終着点はどこにあるのか。国務省は、すでに下された軍事判断を後から取り繕っているだけではないのか。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、民主党側は今年3月の時点で、ルビオ氏と国家安全保障チームに公開証言を求めていた。民主党議員らは「公開公聴会は、憲法上の義務を果たす第一歩だ」と訴えており、今回のルビオ氏の議会出席は、遅れて実現した説明の場でもあった。
ルビオ氏は公聴会で、「イラン戦争はすでに終結した」と繰り返し主張した。停戦は脆弱で、情勢は不安定だと認めながらも、米国とイランの戦争は一段落したと強調し、その前提のもとで今後の外交と交渉を語った。
実際、ホワイトハウスはこれまでも、戦争は「ある時点で」終わったと繰り返し説明してきた。しかし現実には、中東では散発的な空爆が続き、ホルムズ海峡も封鎖と限定的な通航を繰り返している。「戦争は終わった」という政治的説明と、戦火が完全には収まっていない現実との間には、明らかな隔たりがある。
これに対するルビオ氏の答えは、大規模な共同打撃作戦はすでに停止しており、米軍はイラン国内で軍事力を継続的に削る攻勢を続けてはいない、というものだった。ただし、必要な場合に反撃する能力は維持しているとも強調した。つまり、同氏の言う「戦争終結」とは、武力事案が完全になくなった状態ではなく、「主要戦闘作戦の終了」に近い概念だった。
台湾を揺さぶる対台湾武器売却の「保留」
対中戦略とインド太平洋の防衛線をめぐっても、今回の公聴会は台湾に警戒感を抱かせるシグナルを発した。
ルビオ氏は公聴会で、トランプ政権が現在、潜在的価値で最大140億ドル、約4500億台湾ドルに上る対台湾武器売却案を保留していることを認めた。同氏は、この武器売却案は「なお検討中であり、取り消されるわけではない」と説明したうえで、米国は昨年12月にも110億ドル規模の対台湾武器売却を承認したばかりだと議会に念を押した。
ただし、中国要因を否定しようとする同氏の説明は、なお波紋を広げている。ルビオ氏は「中国が台湾への武器売却について絶えず言及しているのは事実だが、それがわれわれ、あるいはホワイトハウスの決定を遅らせている理由では決してない」と述べた。
同氏はさらに、これはあくまで大統領が実行の時期と方法を判断する「交渉カード」の問題だと強調した。台湾にとっては、米国の武器売却が安全保障上の約束であると同時に、トランプ政権の外交取引の中で調整されうる政治的カードでもあることを示した発言だった。
「ルビオ・ドクトリン」の輪郭
ルビオ氏は、議会で厳しい追及を受けただけではない。公聴会の冒頭発言では、「トランプ2.0」の外交政策の本音とも言える考え方を明らかにした。
「米国政府は慈善団体ではない。われわれはソーシャルワーカーになるためにここにいるのではない。われわれがここにいるのは、勝つためだ。米国民のために勝ち、国益のために勝ち、この国のために勝ち、将来の重要な利益のために勝つ。それこそが、われわれの存在目的だ」
この発言は、単なる予算答弁にとどまらない。トランプ政権の外交政策を貫く基本原理を端的に示している。すべての対外行動は、「米国を勝たせることができるのか」という基準に回収されなければならない、という論理である。
ルビオ氏は過去にも、同様の考えを示してきた。「われわれが費やす1ドル、われわれが取るすべての行動は、測定可能な成果をもたらし、米国民に還元されなければならない。それは米国をより安全にするか、より強くするか、より繁栄させるものでなければならない」と語っている。
同氏は公聴会で、米国が長年にわたり西半球を軽視し、「他のグローバルな勢力」に中南米で足場を築かせてきたと指摘した。そのうえで、いまや状況は根本的に変わったと強調した。
「現在、われわれの半球には、友好国からなる連合が存在している。十数カ国が結束し、安全保障だけでなく、共通の繁栄に関わる経済問題でも歩調を合わせている」
ルビオ氏の描く構図では、中南米はもはや「施し」や「支援」を必要とする厄介な裏庭ではない。むしろ、再び「親米圏」として組み込まれた戦略的後背地として描かれている。焦点は「他国を助けること」ではなく、「この半球を取り戻すこと」にある。
同氏は公聴会でこうも述べた。「現在残されている対外援助は、国務省の戦略的指揮のもとに組み込まれつつある。つまり、われわれは単にお金を配っているのではない。具体的な成果を追求しているのだ。重要なのは、ある事業にいくら使ったかではなく、そこから何を得たかである」
イラン戦争 交渉は「イランを救う」ためではない
米イラン戦争が4カ月目に入ってようやく、ルビオ氏は議会に戻り、正面からの追及を受けた。トランプ政権の軍事行動を擁護する一方で、外交部門がホワイトハウスの尻拭いをしているのではなく、交渉の方向性を実際に握っていると議員らに示す必要があった。
ルビオ氏は、停戦が脆弱で、議会が戦争に強い疑念を抱いているにもかかわらず、「イランとの核交渉再開については楽観している」と述べた。その理由として、イラン側が過去には触れることすら拒んでいた複数の核問題について、交渉に入ることに同意したと説明した。
ルビオ氏は公聴会で、「トランプ大統領の交渉チームは、ホルムズ海峡の再開と引き換えに、イランへ制裁緩和を提示したことはない」と断言した。さらに、イランに対するいかなる制裁緩和も、条件付きでなければならず、検証可能な核計画上の具体的行動と結び付けられる必要があると述べた。
『ニューヨーク・タイムズ』は、現地では散発的なミサイル攻撃や空爆が続き、ホルムズ海峡の情勢も完全には安定していないにもかかわらず、トランプ政権はこの戦争を「成功例」として早く政治的に回収しようとしていると指摘している。米イラン戦争がいつ終わったのかは、客観的に検証可能な時点ではなく、行政府が自ら定義する政治的物語になりつつある。
国力の基盤を外交に組み込む
中南米やイランからさらに視野を広げれば、ルビオ氏の外交構想はよりはっきり見えてくる。同氏は公聴会で、こう強調した。
「造船ができず、医薬品を生産できず、移民を管理できず、重要資源を確保できない国家は、自国民を守ることも、自国の利益を守ることも、自らの生活様式を守ることもできない」
そのうえで、「だからこそ、われわれの外交政策は『国力の真の基盤』を中心に再調整されているし、今後もそうあり続ける。この予算は、その方向へさらに一歩進むものだ」と述べた。
ルビオ氏の説明によれば、外交はもはや国務省だけの「対外業務」ではない。造船業、製薬産業、移民政策、エネルギー、重要鉱物の確保まで、国家戦略全体の延長線上に位置付けられる。
この2つの公聴会、そしてそれ以前のミュンヘン安全保障会議での演説を通じて、ルビオ氏の核心的な論理は明らかになった。過去30年にわたりワシントンの建制派が信じてきた「グローバリゼーションと新自由主義」への信仰を捨てることだ。
米ネットメディア『Axios』は、ルビオ氏が「自由貿易によって人々を解放する」という発想を「危険な妄想」とみなしていると分析している。ルビオ氏にとって、グローバリゼーションの結果は、対抗勢力が資本主義を利用して米国の製造業を空洞化させ、重要なサプライチェーンまで握ることを許した、というものだった。
米国が将来、どこで軍事力を行使するのか。その基準についても、ルビオ氏ははっきりした言葉を使っている。
「軍隊は抽象的な概念のために戦うのではない。軍隊は人民、国家、そして生活様式のために戦うのだ」
米国外交の究極の目的は「西洋文明を守ること」だという。これは、国務省が世界の「ソーシャルワーカー」として振る舞う時代の終わりを意味する。これからの国務省は、米国の利益に奉仕する「戦う外交機関」へと変質していく、ということでもある。
CSISが試算した「エピック・フューリー作戦」の代償
イランに対する「エピック・フューリー作戦」をめぐって、ルビオ氏は議会で強いタカ派色と現実主義を同時に示した。
『ニューヨーク・タイムズ』によれば、トランプ氏はホルムズ海峡の再開とイラン核問題への対応をめぐり、イランとの最終合意を模索している。ルビオ氏は公聴会でこれに楽観的な見通しを示し、イランがこれまで妥協を拒んできた核問題について交渉に同意したと明らかにした。
また、イランの新たな最高指導者とされるモジュタバ・ハメネイ氏が、書簡や仲介者を通じて意思決定に積極的に関与している兆候があるとも述べた。ただし同氏は同時に、イランが制裁緩和を得ようとするなら、さらなる譲歩が必要だと強調した。「そうでなければ、彼らは何の利益も得られない」というのが、ルビオ氏の立場である。
民主党側は激しく反発した。クリス・バンホーレン上院議員は、トランプ氏がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のために参戦したと批判し、トランプ政権の外交政策を「破滅的な混乱」と形容した。
一方、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は、米イラン戦争の費用を試算している。国防予算の専門家であるマーク・F・カンシアン氏とクリス・H・パク氏によると、この戦争で米国が費やした額は約400億ドルに上る。そのうち最大261億ドルが、トマホーク・ミサイルなど高額な精密誘導兵器の使用に充てられた。さらに、イランの無人機によって損傷した米軍基地の修復に、40億ドルから94億ドルが必要になるという。
この巨額の費用は通常の国防予算には含まれておらず、今後、議会での予算審議で激しい攻防を招くのは避けられない。
CSIS国家安全保障プログラムのエミリー・ハーディング氏は、ピート・ヘグセス米国防長官が軍事目標として「ミサイル備蓄と海軍の破壊」を強調している一方で、トランプ氏が内心で望んでいるのは、ベネズエラ型の「政権内部からの交代」だと分析している。つまり、テヘランに米国の意向に従う政権を樹立することだ。
しかし、イスラエルの最終目標はさらに異なる。イランのイスラム共和制を徹底的に解体し、場合によってはイランを「バルカン化」させ、内戦状態に陥れることすら辞さない構えだ。米国とイスラエルの最終目標は大きく食い違っており、そのずれは中東情勢に新たな火種を残している。