中国、日本の防衛関連80団体に制裁拡大 レアアース供給網への影響に警戒
2026年6月17日、フランスで記者会見する高市早苗首相。(写真/AP通信)
中国と日本の対立が、地政学と経済の両面で再び激化している。中国商務省は29日、日本に対する輸出管理措置を拡大し、日本の防衛関連機関・企業20団体を「輸出管理管制リスト」に追加したと発表した。対象となった団体は、中国製の軍民両用物資や関連技術を調達できなくなる。
中国側はさらに、別の日本企業20社を「注視リスト」に加え、より厳格な審査の対象とした。今年2月に第1弾として40団体を制裁対象にしており、今回の追加により、2回にわたって制裁対象となった日本の機関・企業は計80団体に達した。
日米メディアや産業関係者からは、中国側が日本の「新たな軍国主義」への対抗を名目にしながら、実際にはグローバルサプライチェーンの上流に圧力をかけ、防衛産業に不可欠な「レアアース(希土類)永久磁石」の供給を通じて、日本の防衛産業を狙い撃ちにしているとの見方が出ている。
三菱重工や日立の関連会社も対象に
中国商務省の公告によると、今回「輸出管理管制リスト」に加えられた20団体には、防衛省傘下の重要研究機関である防衛研究所、陸上装備研究所のほか、三菱電機や三菱重工業の関連会社が含まれている。今後、これらの団体は中国から軍民両用物資や関連技術を調達できなくなる。
一方、より厳格な審査対象となる「注視リスト」に加えられた20社には、日立製作所や小松製作所の関連会社、造船・動力大手の三井E&S、日本原燃(JNFL)、沖電気工業(OKI)、ドローン製造を手がけるACSL、Terra Droneなどが含まれる。
これらの企業が中国から軍民両用物資を調達する場合、輸出業者は個別に許可を申請し、リスク評価報告書や手書きの誓約書を提出する必要がある。関連物資が日本の軍事力向上に使われないことを示すことも求められる。
中国商務省報道官は声明で、日本側が2月の第1弾制裁後も反省を示さず、「新たな軍国主義」と再軍備化を加速させていると非難した。日本が攻撃的兵器を配備し、国境を越えた攻撃能力を持つミサイルの開発を進めようとしているとも主張した。
ブルームバーグ通信は、中国による最新のレアアース関連規制について、中国由来の軍民両用技術を制裁対象の日本企業に移転することを海外の事業体にも禁じる内容で、事実上の域外適用に近い性格を持つと分析している。ただし、具体的な執行手段はなお不透明だ。
発端は高市首相の「台湾有事」答弁か
中国側は、この発言を日本による台湾海峡への軍事介入を明確にするものだとして強く反発した。その後も中国は日本側に発言の撤回を求めているが、高市首相は発言を撤回せず、防衛政策に変更はないとの立場を示している。
日中間の軍事的摩擦も強まっている。ブルームバーグ通信によると、小泉進次郎防衛相は最近、中国が公表する国防費データの正確性に疑問を呈した。また、中国海警局の公船による日本の南西諸島周辺海域への接近や、中露爆撃機による日本周辺での共同飛行に対して、日本政府は強く抗議している。
日中関係が悪化する中、中国外務省の郭嘉昆報道官は29日の定例記者会見で、今回の措置について「完全に正当、合理的かつ合法的だ」と主張した。郭報道官は、措置の目的は日本の「妄動」を抑止することにあると説明した。
同報道官はまた、制裁対象は法に基づいて指定した「少数」の日本の事業体に限られ、対象品目も軍民両用品に限定されていると強調した。そのため、通常の日中間の経済・貿易往来には影響しないとし、法令を守る日本企業は懸念する必要はないと述べた。
米メディア分析、防衛産業の弱点を狙い撃ち
中国側は、今回の措置が通常の貿易に影響しないと説明している。しかし、ブルームバーグ通信は、中国の規制が日本の防衛産業の弱点であるレアアース供給を直撃する可能性があると分析している。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、イアン・マ氏とヨシテル・イトウ氏は、中国の輸出管理リストによってレアアース供給が締め付けられ、日本の防衛産業が抱えるサプライチェーンの脆弱性が一段と高まる可能性があると指摘した。
両氏は、これは全面的な商業取引の停止ではないものの、防衛装備にレアアース永久磁石を多く使う分野で影響が大きく出るとみている。モーター、アクチュエーター、レーダー、誘導システム、ミサイル、海軍艦艇システムなどでは代替材料の確保に時間がかかるため、日本の防衛産業は大きな調整を迫られる可能性がある。
日経アジアによると、日本政府は今年4月、防衛装備品と関連技術の輸出制限を緩和したばかりだった。三菱重工業はオーストラリアと汎用フリゲート艦の建造契約を結んでおり、三菱電機、日立製作所、NECも同艦艇向けに中核電子装備を供給する計画だ。
中国がこの時期に重要材料の供給に圧力をかけたことについて、日本が進めるインド太平洋地域での防衛協力を意識した措置との見方もある。
米シンクタンク、アジア・グループ(The Asia Group)の大中華圏担当パートナー、ジョージ・チェン氏は、短期的に日中関係は極めて不安定であり、安定化の兆しは見えていないと警告する。同氏は、双方が関係悪化に歯止めをかけなければ、緊張はさらに高まる恐れがあると指摘した。
在中国の日系企業、法令順守と供給網分断に懸念
木原官房長官は、日本を一方的に標的にした輸出管理措置は容認できないとしたうえで、政府として日本企業への影響を慎重に見極め、必要な対応を取る考えを示した。
NHKによると、関連会社が名指しされた三菱重工業、三菱電機、日立製作所、富士通は、それぞれ「事実関係を確認中」または「今後の影響を注視している」と説明している。三菱重工業は、制裁が長期化すれば影響が広がる可能性があるとの見方を示した。
一方、一部の日系企業幹部からは、制裁対象に含まれた関連会社は防衛分野に関与しておらず、なぜ対象に指定されたのか分からないとの戸惑いも出ている。
日本メディアは、レアアース関連のサプライチェーンをめぐる不安が広がっていると報じている。今年5月には、富士電機の社員2人がレアアース規制に違反した疑いで中国・大連で拘束されており、中国で事業を展開する日系企業にとって、法令順守と事業運営のリスクは近年になく高まっている。
中国の税関データによると、今年1〜5月の中国の対日輸出総額は前年同期比7%増の約690億ドルに達した。ブルームバーグ通信は、同時期に発生した「イラン戦争」の影響で中国の鉱物燃料や肥料の輸出が減少したことを踏まえると、対日輸出の伸びは目を引くと指摘している。
ただし、日本の産業界の不安は消えていない。中国日本商会はすでに警戒感を示しており、今年2月の第1弾制裁以降、一般民生用の製品を扱う日本企業でさえ、レアアースなど重要鉱物の調達で実質的な障壁に直面していると訴えている。
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