今年5月に北京で行われた米中首脳会談で習近平・中国国家主席は、世界的に著名な政治学者で、米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が提唱した、既存の覇権国家の地位を脅かそうとする新興国との間では必然的に戦争が勃発する現象を示す「トゥキディデスの罠」について言及した。これを受けて、米中が和解不能な競争モデルへと向かうのではないかと各界の関心を集めている。
米中は戦争への道を歩むのか
アリソン教授は今週、世界経済フォーラム(WEF)主催により中国の遼寧省大連市で開催された「第17回ニュー・チャンピオンズ年次総会(夏季ダボス会議)」に出席し、トランプ・習会談後の米中関係についての分析を改めて披露した。同氏は、トゥキディデスの罠は「問題に対する冷静な診断」だと述べた上で、現在の米中間競争は「史上最も激しい」トゥキディデス型の対立だと警告を発した。
アリソン氏は「急速に台頭する大国が、主要な覇権国に対して深刻な脅威となる場合、その構造的な力学は誤解の深刻化や誤算の増加を招く」と指摘。こうした力学により、本来は制御可能な出来事や偶発的な事態が悪循環を引き起こし、最終的には誰も望まない結末、すなわち戦争へと至る可能性があると主張した。
同氏はさらに「(米中)両国の関係は複雑に絡み合っており、自国の存続を確保するため、互いに一定程度の協力を必要としている」との見解を示した。しかし、両国の指導者は依然として主体性を有しているものの、歴史は衝突の方向を示していると警告。過去500年間において、「トゥキディデスの罠」に当てはまる大国の交代劇は16回あり、そのうち12回が最終的に戦争へ発展したという。
その上でアリソン氏は、米中両国の指導者は大国間競争と互恵的な協力関係の維持という矛盾に対応する必要があるが、「これほど複雑な政府体制と社会環境の下で両指導者は、それを成し遂げることができるだろうか」と疑問を投げかけた。「歴史的な慣例に従えば、これは壊滅的な衝突となる」と分析し、米中関係の未来を長期的な視点で見れば「トゥキディデスは『幸運を祈る』と言うだろう」と付け加えた。

米中対立は解消不能なのか
アリソン氏は米ハーバード大学ケネディ・スクールの政治学教授であり、同校で50年にわたり教鞭をとるかたわら、初代学長も務めた。また、国家安全保障分野の権威あるアナリストとして、特に核兵器、ロシア、中国、政策決定などの問題に取り組んでいる。クリントン政権(1993〜2001年)下で米国防総省の国防次官補を務め、国防長官顧問委員会のメンバーも歴任した。最近では、訪米した台湾の最大野党、国民党の鄭麗文主席(党首)と会談し、その際にも「トゥキディデスの罠」について言及した。
「トゥキディデスの罠」は、スパルタとアテネの権力闘争およびそれが引き起こした戦争を記録した古代ギリシャの歴史家・トゥキディデスにちなんで名付けられた。アリソン氏が2010年代にこの概念を提唱して以来、米中競争を分析するための一般的な枠組みとして定着し、専門家らは両国間の衝突リスクを警告する際にこの理論を引用している。
世界の注目を集めた5月の米中首脳会談において、習氏は発言の中で意図的にこの理論を引用し、新興勢力(中国)が既存勢力(米国)に挑戦する際に起こり得るリスクを示した。
分析によると、米中両国は関税や貿易制限を巡って深刻な対立を抱えているものの、昨年の米中間の物品貿易総額は推計4147億ドルに達したという。「貿易戦争」を経た現在でも、中国は米国にとってメキシコとカナダに次ぐ第3位の貿易相手国となっている。
したがってアリソン氏もまた、「トゥキディデスの罠」の力学が米中関係の大部分を決定づけているとしながらも、両国相互の結びつきや「核抑止力」を考慮すれば、米中間の安定した協力関係の維持は今後も可能との見解を示している。
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編集:平松靖史















































