近年、中国は軍事力の増強を続けており、空母や強襲揚陸艦、ステルス戦闘機からミサイル部隊に至るまで、その規模は急速に拡大している。これにより、台湾海峡を巡る緊張の高まりに国際社会が懸念を強めている。一部では、西太平洋における中国の軍事力がすでに米国の優位性を凌駕しつつあり、台湾海峡の軍事バランスが急速に中国側へ傾いているとの指摘も出ている。
しかし、米国の元国家情報長官で元太平洋軍司令官のデニス・ブレア氏は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、中国の軍事力に対する外部の懸念は過剰に増幅されていると指摘。中国が米国にとって最大の戦略的課題となっているのは事実だが、それは人民解放軍(以下、中国軍)が台湾海峡で戦争が発生した際、確実に勝利する能力を備えていることを意味するものではなく、米国と同盟国の抑止力が失われたわけでもないと強調した。

艦艇数では中国が米国を上回る
ブレア氏によれば、中国海軍の艦艇数はすでに米軍を上回っており、ミサイル、無人機(ドローン)、宇宙空間およびサイバー領域における作戦能力も継続的に向上、一部の分野では、局地的な優位性を確立しているという。
だが、軍事力は装備の数量だけで測ることはできず、全体的な作戦能力を見極める必要がある。海外での軍事作戦に長年携わってきた米軍に対し、中国軍は40年以上にわたり大規模な実戦を経験していない。統合軍事作戦や軍種間の連携、遠方への兵站(へいたん)補給、そして戦場での危機対応能力など、実際の戦闘を通じた検証が依然として不足している。
艦艇や航空機の数だけで台湾海峡有事の戦局を評価すれば、中国の実際の戦闘能力を過大評価することになりかねないと、ブレア氏は警告する。
中国軍にとって台湾上陸が最大の障壁
台湾有事における最も核心的な問題について、ブレア氏は、中国軍にとって致命的な弱点である「水陸両用作戦能力の不足」が看過されがちだと指摘する。
台湾海峡は最も狭い場所で約130キロメートルある上、気象や海象条件が複雑で、大規模な台湾上陸作戦に適した海岸も限られる。中国軍が台湾を実効支配するためには、防空、対艦、対上陸用の火力を突破するのみならず、膨大な数の兵力、装甲車、弾薬、補給物資を絶え間なく陸揚げし続けなければならない。
このような渡洋上陸作戦は、現代戦において最も困難な任務の一つとされる。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦も、連合国軍が長年にわたって準備を重ね、莫大な後方支援リソースを投入した末にようやく成功を収めた。

上陸に成功しても後続の兵站任務が真の試練
ブレア氏の分析によると、中国は近年、強襲揚陸艦や揚陸艦の建造を急ピッチで進めているが、現在の輸送能力は大規模な台湾侵攻作戦を支える水準には遠く及ばないとされる。 (関連記事: 【寄稿】5カ国11隻の対中連携に中国軍18隻が対抗 台湾・南シナ海・西南諸島で圧力拡大 | 関連記事をもっと読む )
仮に中国軍が第一波の部隊を台湾本島へ上陸させることができたとしても、その後に数十万規模の兵力の補給と任務の交代をいかに維持するかが勝敗を決する。港湾や空港、あるいは海上の補給線が破壊されれば、上陸部隊は瞬く間に孤立状態に陥る可能性が高い。


















































