「中台は互いに隷属しない」は現状維持ではない 台湾元国安会秘書長、民進党政権を批判
鄭麗文国民党主席の訪中・訪米ドキュメンタリー『造局者』プレミア上映会に出席した元国家安全会議秘書長の蘇起氏(左1)と張栄恭・国民党副主席(左2)。(国民党提供)
米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)台北事務所のレイモンド・グリーン所長がこのほど、メディアとのインタビューで、「台湾市民の7割が現状維持を支持しており、これが中台対話の絶好の基盤となる」と発言したことを巡り、台湾の元国家安全会議(国安会)秘書長、蘇起氏は23日、国民党の鄭麗文主席(党首)の訪中および訪米を記録したドキュメンタリー映画『造局者』のプレミア上映会で疑義を呈した。
蘇氏は「グリーン氏の言う『現状』の定義とは何か。2016年の現状か、それとも2026年の現状か」と指摘。さらに、グリーン氏は台湾市民を安心させようとしているとし、その意図を評価しつつも、「やり方が誤っている、または処方箋として軽すぎる」と批判した。その上で、台湾海峡の現状はすでに蔡英文・前台湾総統の「中台は互いに隷属しない(互不隷属)」という主張によって破壊されており、これを是正しなければ双方は衝突の道へと進む恐れがあると警告した。
上映会では、蘇氏と国民党の張栄恭副主席による座談会が行われた。蘇氏は、グリーン氏の「現状」の定義に疑問を投げかけた上で、蔡氏が総統に就任した2016年に「現状維持」を掲げた際、それが指していたのは前任に当たる馬英九政権(2008〜2016年)後期の現状だったと指摘。当時の馬政権による両岸(中台)政策や対米政策は多方面から支持され、米国の対台武器売却も陳水扁総統時代(2000〜2008年)を大きく上回っていたほか、2015年の中台トップ会談(馬習会談)も台湾内の世論調査で高い支持を得ていたと強調した。
そのため、蔡氏は「現状維持」というスローガンで市民に錯覚を与えたのだと論じた。しかしその後、米国が中国に対し貿易戦争を仕掛けたことで、蔡氏が現状維持に言及する機会は減少し、2020年には「互不隷属」を新たな現状として打ち出すに至ったと説明した。
蘇氏は、2016年は馬政権の現状で、2026年は蔡政権および頼清徳政権の現状だと指摘し、両者は全く異なると強調。「互不隷属」が2026年の現状であるならば、中台はどのように交流し、対話を行うのかと疑問を呈した。また蘇氏は、米国の政策も転換期にあると指摘。トランプ米大統領の姿勢に変化が生じたとしても、実務を担う対中強硬派(タカ派)の姿勢が完全に変わったわけではなく、米国内の議論の行方は引き続き注視する必要があると述べた。
さらに蘇氏は、台湾を熟知していた米国政府の関係者の多くはすでに離職しており、現在の政府は台湾への理解が非常に乏しいと指摘。最近、鄭氏の訪米において誰と面会できるかが取り沙汰されたことに関連し、現在の米国はトランプ氏の一存で方針が決まる体制となっていると述べ、トランプ氏が習近平・中国国家主席との会談の際に何を語るかについては、ルビオ国務長官ですら把握していなかった可能性があるとし、鄭氏の面会相手を巡る騒ぎは「全くの無意味だ」と一蹴した。
蘇氏は、中台関係における最大の問題は、蔡前総統が自ら掲げた「現状維持」の看板を「互不隷属」によって破壊するという、民進党政権の致命的な過ちにあると強調。これは現状維持ではなく現状の転覆であり、是正しなければ中台は衝突へと向かう恐れがあると警鐘を鳴らした。さらに、中台衝突が現実となる前に台湾市民自身が覚醒すべきだとし、「現状は常に変化しており、今は完全に逆転してしまった。市民は夢を見続けてはならない」と訴えた。
最後に蘇氏は、親中と親米の対立構造で捉えるのではなく、「和(協調)」と「闘(対立)」として切り離して考えるべきだと強調した。国民党は「和」の路線を歩んでおり、民進党は「闘」の路線を突き進んでいると指摘。鄭氏が先陣を切って「和」の路線を示したことに敬意を表し、これこそが国民党の進むべき道であり、歴史的に正しい選択だと結んだ。
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