米軍が「インド太平洋」の名称を外す意味 日本・インドに広がる対中戦略後退への懸念

2018年5月30日、米太平洋軍は「インド太平洋軍」へと名称を変更し、前司令官のハリス氏(右)から新司令官のデービッドソン氏へと指揮権が引き継がれた。(U.S. Pacific Command@flickr / CC BY-NC-ND 2.0)
2018年5月30日、米太平洋軍は「インド太平洋軍」へと名称を変更し、前司令官のハリス氏(右)から新司令官のデービッドソン氏へと指揮権が引き継がれた。(U.S. Pacific Command@flickr / CC BY-NC-ND 2.0)

米国防総省(戦争省)は16日、米インド太平洋軍(USINDOPACOM)の名称を正式に「米太平洋軍(USPACOM)」へ戻すと発表した。米西海岸沖からインド西部国境に至る防衛範囲や任務に変更はないものの、第1次トランプ政権下で「インド太平洋軍」へと変更した名称を再び戻すことについて、一部の専門家からは中国に対する譲歩の始まりではないかとの懸念の声が上がっている。

米国で最も歴史が長く、最も規模の大きい統合軍

米戦争省が16日に発表したプレスリリースによると、米太平洋軍という伝統的名称への回帰は、同軍が持つ深い歴史的背景に対する敬意であり、「太平洋地域で任務に就くすべての(米軍)将兵の誇りと連帯感の向上に寄与する」と説明している。

さらにプレスリリースでは、太平洋軍が第二次世界大戦後から地域の安全保障体制において極めて重要な役割を果たし、朝鮮戦争やベトナム戦争、さらには無数の人道支援活動に至るまで統合軍の調整を担ってきたと言及。これは米太平洋軍が数十年にわたる軍事的伝統と、持続的な地域パートナーシップを体現していることを意味すると強調した。

米太平洋軍は本来、トルーマン大統領時代の1947年1月1日に創設され、その名称で70年以上にわたり運用されてきた、米国で最も歴史が長く、最も規模の大きい統合軍だ。しかし、第1次トランプ政権下の2018年6月1日、当時のマティス国防長官が「インド太平洋軍」への名称変更を発表した。

プレスリリースは、米太平洋軍の管轄範囲は米西海岸沖からインド西部国境に至る広大な地域で、その範囲に変更はないとしている。また同軍の基本使命や、地域の同盟国およびパートナー国と共に自由で開かれた戦域を維持するとの確固たるコミットメントも不変だと説明している。

現・米インド太平洋軍司令官のパパロ大将(Admiral Samuel Paparo)。(米軍DVIDSシステムより)
米インド太平洋軍のパパロ現司令官。(米軍DVIDSシステムより)

トランプ氏が譲歩すれば同様の対応が数代続く

ある米国の専門家は風傳媒の取材に対し、トランプ氏が太平洋軍の任務は不変であると表明したものの、第1次政権で「インド太平洋」へ変更し、第2次政権で再び「太平洋」に戻したことは象徴的意味合いが大きいと指摘。「米国が中国共産党に『媚びへつらう』序幕とならないことを願う」と述べた。この専門家は、仮にトランプ氏が中国に対して譲歩すれば、同氏が退任した後、数代の大統領が同様のアプローチを採用する可能性があると警鐘を鳴らした。

同学者はさらに、トランプ氏は米国内の「不可解な」ポピュリズムを掌握しているが、外部の理解と異なる点として、米国社会の低所得者層の白人や、その中の人種差別主義者であっても、実際には中国人を心底から敵視しているわけではないと分析。それどころか、右派の白人の多くは中国の一部の思想に強く共鳴すらしているとの認識を示した。 (関連記事: 中東戦争で露呈した「インド太平洋戦略」の限界 米国の対アジア姿勢に疑問、日韓も不安広がる 関連記事をもっと読む

今後の情勢についてこの専門家は、トランプ氏が本当に対中譲歩の扉を開いた場合、米国が完全に中国に敗北する事態には至らないものの、今後の米中関係が事実上「太平洋は十分に広い(米中両国の支配を受け入れられる)」という考え方に向かう可能性があると指摘している。そしてこの点こそが、中国政府の要求に応じることになる恐れがあるとしている。

2026年5月14日、米大統領・トランプ氏と中国国家主席・習近平氏が北京の天壇で記念撮影。(AP通信)
トランプ米大統領習近平中国国家主席は5月14日、北京の天壇で記念撮影を行った。(AP通信)
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