トランプ台頭は極端な自由主義への反発、米ノートルダム大学・デニーン教授が日本記者クラブで指摘
デニーン米ノートルダム大教授は日本記者クラブで、極端な個人主義がアメリカの共同体を破壊したと指摘し、トランプ台頭の背景にある有権者の不満とポストリベラル社会に向けた公共政策の重要性を訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)
ポストリベラリズムを代表する論客として知られる米ノートルダム大学のパトリック・デニーン教授は2026年6月4日、日本記者クラブで開催された「トランプ2.0」シリーズ企画の第17回会見に登壇し、現代アメリカ社会の変容とトランプ現象の背景について語った。デニーン教授は、アメリカの現状を極端な個人主義による社会基盤の崩壊と位置づけ、次期政権を見据えた保守派の新たな政策的アプローチの必要性を提起した。
日本社会に見た共同体の力、現代アメリカへの示唆
初めて来日したデニーン教授は、神奈川県真鶴町の小学校の給食風景や東京の清潔で安全な街並みを視察した経験に触れ、日本社会には他者への配慮や共同体を重んじる精神が深く根付いていると評価した。
そして、現在の日本が自身のかつて育った古き良きアメリカの姿に重なると述べ、形式的には自由民主主義を取り入れながらも、伝統や社会の規範を維持している日本のあり方が、現代アメリカの抱える問題に対して一つの示唆を与えているとの認識を示した。
一方、現在のアメリカについては、左右両派が過激な自由主義に陥っていると厳しく批判した。左派は性の解放など社会や文化的な面で伝統的価値観を破壊し、右派は新自由主義として経済的な面で個人の利益を最優先にしてきたと指摘。この左右のイデオロギーがもたらした極端な個人主義の蔓延により、家族や教会、地域社会といった伝統的な共同体が解体され、一般市民の生活環境が悪化の一途をたどったと分析した。
トランプ現象の背景と、ポストリベラル時代の新たな保守
このような状況下において台頭したのがドナルド・トランプ前大統領であるとデニーン教授は説明した。歴代の政治家が左右の極端な自由主義に縛られ、有効な解決策を提示できなかったのに対し、トランプ氏は「社会的、文化的には保守的でありながら、経済的には保護主義を求める」という既存政党が見落としていた巨大な有権者層の不満をすくい上げたと指摘した。有権者は現状の閉塞感を打破するため、システム自体を破壊する存在としてトランプ氏を支持したとの見解を示した。
さらにデニーン教授は、今後のアメリカ社会の再構築に向けた展望にも言及した。崩壊した共同体や家族の価値を再生させるためには、かつて保守派が否定していた政府による介入や公共政策による支援が不可欠になる段階に入っていると指摘。
生活コストや医療費の高騰に苦しむ若者が家族を形成し、地域社会を立て直すためには、連邦政府や自治体による積極的な政策的サポートが求められており、これがポストリベラル時代における新たな保守の潮流になる可能性を示唆した。
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