【舞台裏】頼清徳総統の宜蘭奪還戦略に誤算 日本とフィリピンEEZ交渉で東部漁民に不満広がる

頼清徳総統(左)は、「政治の師」とされる陳定南・元宜蘭県長(右)との縁もあり、宜蘭県政の奪還に強い意欲を示している。(写真/頼清徳弁公室提供)
頼清徳総統(左)は、「政治の師」とされる陳定南・元宜蘭県長(右)との縁もあり、宜蘭県政の奪還に強い意欲を示している。(写真/頼清徳弁公室提供)

台湾北東部の宜蘭県は「民主の聖地」と呼ばれてきた。1981年、後に法務部長を務める故・陳定南氏が無所属で宜蘭県長選に勝利し、1985年には無所属候補として初めて県長再選を果たした。

1989年には民主進歩党(民進党)の游錫堃氏が後を継ぎ、同党初の宜蘭県長となった。游氏は1993年にも再選を果たした。その後は、国民党の呂国華氏が県長を務めた4年間を除き、民進党系の県長が長く県政を担ってきた。

流れが変わったのは2018年だった。国民党は、地元に根を張り、組織を着実に固めてきた当時の羅東鎮長・林姿妙氏を擁立。林氏は民進党による約30年に及ぶ宜蘭県政を打ち破った。林氏は2022年、利益誘導の疑いで起訴されたものの、県長選で再選を果たし、宜蘭県で初めて再選を果たした女性首長となった。

ただ、起訴の影響もあり、国民党は2026年の県長選に向け、清新なイメージと検察官出身という経歴を持つ立法委員(国会議員)の呉宗憲氏を候補に選んだ。だが呉氏は宜蘭出身ではなく、「落下傘候補」との指摘もある。加えて、宜蘭には民進党が長年築いてきた地盤が残っており、国民党陣営にとって選挙情勢は決して楽観できるものではなかった。

20221206-宜蘭縣長林姿妙6日出席2022縣市幸福指數調查公布記者會。(柯承惠攝)
林姿妙氏(写真)は2018年、民進党による宜蘭県での約30年にわたる県政を打ち破り、宜蘭県長に当選した。(写真/柯承恵撮影)

王金平氏が仲介 国民党、宜蘭の地元勢力を一本化

​林姿妙氏からの後継をどうつなぎ、宜蘭県政を守るのか。2026年選挙を前に、国民党内では候補者選びをめぐり競争が起きた。

候補に浮上したのは、清新なイメージと専門性を持つ一方で「落下傘」との批判を受ける呉宗憲氏と、地元で強い実力を持ちながら、訴訟リスクを抱える宜蘭県議会議長の張勝徳氏だった。最終的に両氏による党内予備選が行われ、2月末の連休中に呉氏が予想外の勝利を収めた。

当時は、張勝徳氏が呉氏支持に回るとの情報も流れた。しかし、張氏の父で前議長の張建栄氏が異なる考えを持っているとも伝えられ、国民党内の地元勢力のまとまりにはなお不安が残っていた。

4月に入ると、張勝徳議長、宜蘭市長の陳美玲氏、頭城鎮長の蔡文益氏、県議の黄雯如氏の4人がいずれも立候補登録を見送った。この動きは、国民党の地元組織に足並みの乱れがあることを示すものと受け止められた。

ただ、関係者によれば、張氏らが本当に呉氏を支持していなかったわけではない。問題は、競争相手がいない地域でも党中央が党内予備選を実施し、党本部による直接公認にしなかったことへの不満だったという。最終的には党中央の調整を経て、この騒動は収束した。

5月に国民党と台湾民衆党による「協力」を前提とした世論調査がまとまり、呉氏への一本化が固まった後、国民党中央は宜蘭の各地方勢力の取りまとめに本格的に乗り出した。
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5月13日、国民党秘書長の李乾竜氏は、張建栄氏と親交の深い王金平・元立法院長に仲介を依頼した。王氏は張建栄氏に対し、今回公認されなかったことは、訴訟リスクを避ける意味でむしろ悪いことではないと説得したという。さらに、民進党側も県議会議長ポストを狙っているとして、張家の議長ポストを守る必要性を訴えた。

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