米国防長官、対台武器売却は「トランプ氏が判断」 台湾言及避け、対中安定関係を強調 米国のピート・ヘグセス国防長官は30日、シンガポールで開かれた「シャングリラ・ダイアローグ」に出席し、アジア太平洋情勢について演説した。(写真/IISSのライブ配信より)
トランプ米大統領 はこのほど北京を訪問し、中国の習近平国家主席 と再び首脳会談を行った。その際の雰囲気は異例なほど友好的かつ自制的なものだった。また、中国の董軍国防相 と米国のピート・ヘグセス国防長官 の両名が同席しており、米中両国の国防トップが首脳会談のテーブルについたのは、1973年のリチャード・ニクソン元米大統領の初訪中以来初めてのことだ。
この動きを受け、米中関係が9年前よりも改善し、さらには関係強化の傾向にあるのではないかとの見方が広がっている。トランプ氏はこれまで複数回のインタビューで習氏と台湾への武器売却問題について協議する意向を明らかにしており、米政府が1982年以来の台湾に対する「6つの保証」(対台武器売却の前に中国側と事前協議を行わないなど)に違反するのではないかとの懸念を呼んでいた。一方、米海軍長官代行のハン・カオ氏は5月22日の議会公聴会において、米国が台湾への武器売却を一時停止していると述べた。
数日の沈黙を経て、ヘグセス氏は土曜日にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)に主賓として出席し、基調講演を行った。5月中旬の北京での首脳会談後、同氏がアジア太平洋地域を再訪し公式に見解を示すのはこれが初めてだ。しかし約30分間に及んだこの講演で、ヘグセス氏は昨年の姿勢から一転して台湾問題に一切言及せず、むしろトランプ氏のリーダーシップの下で米中関係がここ数年で「最高水準」に達したと強調した。
「シャングリラ・ダイアローグ」の会場となったシンガポールのシャングリラホテル。(写真/AP通信提供)
米中関係は急速に改善に向かうのか 今年のシャングリラ・ダイアローグには董氏が欠席し、より低位の中国代表団が派遣されたため、北京での米中両国防相による握手や対話の場面が再現されることはなかった。しかし、北京での首脳会談の直後であることから、米国のアジア太平洋地域の平和および台湾問題に対する見解に各界から高い関心が寄せられている。
ヘグセス氏は講演において、「トランプ大統領と現政権は、中国との間に安定した平和、公正な貿易、そして相互尊重の枠組みを構築することに尽力している」と強調した。首脳会談での成果は「偶然」ではなく、トランプ政権が強力かつ冷静で明確な戦略を講じたからこそ米中関係およびアジア太平洋地域の正しい軌道を維持・安定させることができたと指摘し、「トランプ大統領と中国国家主席が北京で直接会談を行ったことで、この基盤はさらに強固なものとなった」と述べた。
同氏はさらに、「私は数時間にわたる両者の率直な対話を目の当たりにしたが、それは間違いなく歴史的な意義を持つものだった。両者は、米中両国が公平かつ互恵的な基盤の上に建設的で戦略的な安定関係を築くべきだとの認識で一致した。両国はそれぞれの国益を守るために最大限の努力を払うが、利益が一致する分野においては現実的で互恵的な合意に達することが可能だと再確認した」と語った。
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しかし米国の国防を統括する長官として、ヘグセス氏は米国の従来の立場も繰り返した。中国による前例のない軍事力強化や、アジア太平洋および世界各地における軍事活動が米国に懸念を抱かせていることは疑いようがない。そのため米国は、中国を含むいかなる覇権国家によって主導される太平洋の秩序も地域間の勢力均衡を破壊するとみなしており、「国防省はこのような事態の発生を防ぐため、全力を尽くしている」と述べた。
2026年5月14日、トランプ米大統領は中国の習近平国家主席とともに北京の天壇を訪れた。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供)
講演を通じて台湾問題への言及なし 「インド太平洋地域における米国の平和戦略(The United States' strategy for peace in the Indo-Pacific) 」と題されたこの講演で、ヘグセス氏は昨年初めてシャングリラ・ダイアローグに出席した際の姿勢から一転し、講演のテーマと内容を大幅に変更した。昨年の講演テーマはより広範かつ強硬な内容だった。当時、同氏はシンガポールで「インド太平洋の安全保障に対する米国の新たな野心(United States ambitions for Indo-Pacific security) 」について講演し、トランプ政権発足初期の国防戦略を説明していた。
ヘグセス氏は昨年、「我々は共産主義の中国との衝突を求めていない。我々から事を構えることはなく、中国を征服したり屈辱を与えたりする意図もない」と述べていた。その際、トランプ氏および米国民は中国人民とその文明に対し多大な敬意を抱いていると強調する一方で、「我々はこの極めて重要な地域から排除されることを決して受け入れない」「我々の同盟国やパートナーが抑圧され、威嚇されることを決して許さない」と主張していた。
また昨年はトランプ氏の発言を引用し、同政権下では「共産党体制の中国が台湾に侵攻することはない」とも述べていた。さらに昨年の講演では台湾における有事の可能性について幾度も触れており、「中国共産党が武力で台湾を征服しようとするいかなる試みも、インド太平洋地域から全世界に至るまで壊滅的な結果をもたらす」「中国がもたらす脅威は現実であり、目前に迫っている可能性がある」と語っていた。
加えてヘグセス氏は昨年、「北京はインド太平洋地域の勢力均衡を力によって変更するための準備を着実に進めている」「習氏は軍に対し、2027年までに台湾侵攻能力を具備するよう命じた。中国人民解放軍はそのための軍事力強化を進め、連日のように関連する訓練や演習を行っている」とも指摘していた。対照的に、今年はそのような発言は一切見られなかった。
米海軍長官代行のハン・カオ氏は議会公聴会で、米国の対イラン軍事行動に十分な弾薬を確保するため、台湾への140億ドル規模の武器売却案を一時停止していると述べた。(写真/AP通信提供)
140億ドルの対台武器売却問題への言及を回避か アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)は、英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」とシンガポール国防省が共同で主催するアジア太平洋の安全保障問題を協議するフォーラムで、米国や中国を含む同地域の28カ国が参加している。この会議は米中軍当局の代表が長期にわたり第三国で定期的に接触できる年次行事でもあるため、毎年国際的な注目を集めているが、台湾はその枠組みに含まれていない。
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ヘグセス氏は今回の講演において、台湾や台湾海峡の安全保障問題、民進党政権について終始言及しなかった。しかしその後の質疑応答において、IISSの広報・米州担当ディレクターで英国陸軍元中将のサー・トム・ベケット氏からの質問に対し、米国が発表した140億ドル規模の対台武器売却の一時停止に関する見解を示した。
ベケット氏は質疑応答の際、5月22日に米海軍長官代行が、起こり得る重大な紛争に備えた在庫確保を理由に台湾に対する140億ドル相当の武器売却を一時停止したと発言した件について尋ねた。同氏は中台関係や米政府の立場について直接問いただすことはせず、「将来を見据える上で、それは良いことだ」と丁重に述べた上で、「興味深いのは、少なくとも現在の米国の状況において、米国はいかにしてパートナーへの武器売却の加速と調整を図るべきかという点だ」と遠回しに質問を投げかけた。
これに対しヘグセス氏は米国が対台武器売却を一時停止した理由について直接的な説明を避け、「将来の状況と現在の現実を非常に慎重に切り離して考える」と強調するにとどめた。さらに「我々は自国の武器在庫状況に非常に満足している。これらの武器をいかに活用するかという点においても、またこの歴史的な局面においても、我々は全力を尽くしていく」と語った。
ヘグセス氏は、トランプ氏の発言の通り「今後の対台武器売却に関するあらゆる決定はトランプ氏が下すことになる」と述べた。その上で、外交関係の性質を踏まえ北京で行われた首脳会談を考慮に入れたとしても、台湾海峡問題における米国の立場には「いかなる変化もない」と明言した。
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