台湾の教育機関や半導体大手、TSMCなどが連携し、日本から留学生を招いて半導体人材を育成する取り組みを本格化させている。深刻な技術者不足に直面する熊本工場(JASM)や台湾国内の拠点に向け、台湾当局の支援のもと奨学金やインターンシップを提供し、卒業後の採用に直結させるパイプラインの構築を進めていることが明らかになった。
熊本県内では現在、半導体関連の有効求人倍率が20倍以上となるなど高止まりしており、TSMCの熊本工場だけでなく台湾側の工場でも人材確保が急務となっている。これを受け、台湾の教育部や各科技大学、TSMCは2025年から、九州などの教育機関に向けて直接的な人材獲得に乗り出す。
留学生に奨学金を支給、卒業後の就業を義務付け
台湾の教育部は2024年度から「新型半導体特別クラス」を推進している。政府と企業が合同で補助金を拠出し、台湾で学ぶ日本人の修士・博士課程の学生に月額約2万台湾元、学部生に同1万5000台湾元を支給する。対象となる学生は卒業後、規定に基づき一定期間台湾で就業する義務を負う仕組みだ。
各大学が独自プログラムを展開、学費免除や生活費補助も
台湾の各大学も、日本の学生獲得に向けたプログラムを相次いで展開している。雲林科技大学は、日本の高等専門学校や専門学校の卒業生を対象とした編入制度「2+2半導体特別クラス」を設立した。3年次に編入して最短2年で学士号を取得できるコースで、学費を免除するほか、月額約1万台湾元の生活費を支給し、2026年9月からの本格的な受け入れを見込む。
台北科技大学は2025年9月に「半導体プロセス・設備学士学位課程」を立ち上げ、日本の高校・大学卒業生を対象に受け入れを始める。すでに2026年秋学期の日本籍学生選考も進められている。また、台湾師範大学は2025年夏、TSMCと共同で半導体と人工知能(AI)の夏季集中コースを開催し、初回は熊本大学や熊本県立大学から計28人が参加する予定だ。
インターンシップから採用へ直結、後工程への波及も
留学生の就業支援も整備されつつある。TSMCが実施するインターンシップ計画では、台湾で就学中の日本人学生が新竹や台中、台南の工場で実務を経験できる。一定の評価を得た学生にはインターン期間中に正式な採用通知が出され、卒業後は台湾国内の工場や熊本のJASMで勤務することが可能となっている。大学への申請から奨学金受給、インターン、採用に至るまでが自己完結する仕組みが形成されている。
人材育成の裾野は前工程以外にも広がっている。銘傳大学は半導体封止・検査(パッケージング・テスト)大手のASE(日月光半導体)と連携し、日本の学生を対象とした英語での国際修士課程を計画している。先行して始動している明新科技大学の日本特別クラスなどとともに、設備や実務エンジニアを含めた重層的な人材育成の枠組みが構築されつつある。
台湾の教育システムを輸出、段階的な人材供給網へ
こうした動きについて、単なる学生の交換留学にとどまらず、台湾の成熟した半導体教育システムを「人材供給網」として輸出する試みへと発展しているとの見方が出ている。
台湾師範大学の短期研修などを通じて初期の関心を喚起し、各科技大学による編入や学位取得プログラムで基礎教育を実施。さらに修士課程や実務インターンシップを経て、高水準の専門人材を育成する段階的なアプローチがとられている。日本国内で実務に即した半導体人材の育成が急務となる中、台湾の教育現場や企業ネットワークを活用したルートが、日本側の課題を補完する役割を果たすとみられる。 (関連記事: 【多国籍人材獲得戦1】TSMC熊本工場が火をつけた高専生争奪戦 初任給29万円が崩す日本の学歴神話 | 関連記事をもっと読む )
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