台湾併合後の統治は可能なのか 習政権のジレンマと「一国二制度」の限界、香港モデルは通用せずとの見方

2024年5月28日、立法院前で「台湾独立」と書かれたプラカードを掲げる民進党支持者。(写真/AP通信提供)
2024年5月28日、立法院前で「台湾独立」と書かれたプラカードを掲げる民進党支持者。(写真/AP通信提供)

台湾海峡危機を巡る議論では、中国人民解放軍がいつ武力行使に踏み切るかに世界の関心が集まりがちである。しかし、豪シンクタンク「ローウィー研究所(Lowy Institute)」はこのほど発表した報告書で、現在の中国政府にとってより厄介な懸念は「台湾を武力統一した後、いかに統治するか」であると分析している。

中国の学者自身が「香港モデル」は台湾に不適合だと率直に認めているほか、同報告書の著者であるリチャード・マクレガー氏とジュード・ブランチェット氏も、2300万人が享受する自由民主主義体制をレーニン主義的な権威主義の枠組みに無理やり押し込むことは、極めてリスクの高い政治工程になると警告している。

ローウィー研究所東アジア担当上級研究員のマクレガー氏と、米シンクタンク「ランド研究所(RAND Corporation)」中国研究センターの創立ディレクターであるブランチェット氏は、「After annexation: How China plans to run Taiwan(仮訳:併合後:中国は台湾をどう統治する計画か)」と題する論文の中で、台湾における民主主義体制の成熟に直面し、習近平国家主席が統一条件を厳格化し、台湾を中国の権威主義的政治体制へ完全に組み込むよう求めていると指摘した。

習氏の計画通りに実行されれば、数百万人の台湾人が公的活動から排除され、数万人の台湾市民が投獄される可能性がある。これを免れるには、台湾の自治への支持を放棄し、「愛国者」として中国共産党への忠誠を誓うしかないという。

問題は、多くの中国の学者たちも、習氏が台湾統治の基本モデルとする「一国二制度」がもはや通用しないのではないかと不安を抱いている点だ。

マクレガー氏とブランチェット氏は、中国政府の台湾に対する思考が平和的共存から吸収的な統制へと転換していると指摘する。台湾のアイデンティティと民主主義制度が日増しに強固になる中、習氏の統一条件はより強硬になり、真の自治の提供ではなく、全面的な政治統合を求めるようになっている。両氏が中国共産党の学術および政策文献を詳細に分析した結果、中国の学者は台湾統一のプロセスを異なる段階に区分していることが明らかになった。まず安全保障上の手段で抑圧し、政治的敵対勢力を瓦解させる。次に香港統治を上回るレベルの体制再編を行い、最後に数十年に及ぶ心理的再構築(psychological re-engineering)を実施して、最終的に台湾人に中国を帰属先として認めさせるというものだ。この過程において数百万人の台湾人が公的生活から排除され、多くの台湾の政治指導者が投獄される恐れがある。 (関連記事: 台湾世論調査、「中国との平和統一」容認22% 専門家「香港の現実を知らないのか」 関連記事をもっと読む

両著者は、台湾統一に関する中国側の構想には未解決の矛盾が山積していると指摘する。何の担保もない自治が信頼を生むことはなく、強制的な手段は安定をもたらしても正当性を得ることはできない。また、経済統合の進展が台湾市民のアイデンティティを書き換えることは不可能である。仮に台湾市民のイデオロギーを制限したとしても、これらの問題が解決することはないと両氏は断じる。

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