【単独取材】梶田隆章氏が語る基礎科学の価値 ニュートリノ質量発見と師弟3代ノーベル賞の軌跡

2026-05-28 16:35
ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章氏が台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の独占インタビューに応じた。(写真/蔡親傑提供)
ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章氏が台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の独占インタビューに応じた。(写真/蔡親傑提供)

台湾がAI開発に注力し、「AI新十大建設」を推進して関連人材の育成を強化する中、長期的な投資が必要で即効性が見込めない「基礎科学」には誰が目を向けるべきか。ノーベル物理学賞受賞者で東京大学宇宙線研究所卓越教授の梶田隆章氏は、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の独占インタビューに応じ、「基礎科学は人類の知の地平を広げるものだ。当面は直接的な応用がなくても、その重要性を広く理解してほしい」と語った。

梶田氏は埼玉県の農家に生まれ、地元の高校と大学を卒業した。農家育ちの同氏は、楽観的かつ聡明で、勤勉さと高い集中力、そして慎重さを併せ持ち、56歳でノーベル物理学賞を受賞するという伝説を打ち立てた。

ニュートリノの質量を証明、素粒子物理学の標準模型を覆す

​梶田氏は「台湾ブリッジ・プロジェクト(Taiwan Bridges Project)」の招きで訪台し、4月23日に中央研究院(中研院)で「基礎科学における国際協力:実務経験の共有」と題する講演を行った。同プロジェクトは、中研院や台湾大学などの複数の学術研究機関と国際平和財団(International Peace Foundation)が共同で推進するもので、台湾と世界のトップレベルの学者との深い交流を促進することを目的としている。

宇宙で2番目に多く存在する素粒子であるニュートリノ(neutrino)は、最も捉えどころがなく、素粒子物理学の標準模型では質量を持たないと仮定されていた。しかし、梶田氏の研究チームは「ニュートリノ振動(neutrino oscillations)」という現象を初めて実証し、ニュートリノに質量があることを証明した。この発見は標準模型の仮定を覆すものであり、同氏は2015年にアーサー・マクドナルド(Arthur McDonald)氏とともにノーベル物理学賞を受賞した。

20260423-ノーベル物理学賞受賞者・梶田隆章氏専訪。(蔡親傑撮影)
ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章氏が台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の独占インタビューに応じた。(写真/蔡親傑撮影)

2人のノーベル賞受賞者を輩出した「カミオカンデ」

​岐阜県飛騨市にある神岡鉱山の跡地、地下1000メートルに位置する施設は、日本の「カミオカンデ(Kamiokande)」および「スーパーカミオカンデ(Super-Kamiokande)」の所在地である。ここで収集されたニュートリノのデータは、2002年に小柴昌俊氏、2015年に梶田氏という、2人のノーベル物理学賞受賞者を生み出した。

カミオカンデ実験は日本の基礎科学における旗艦プロジェクトである。初代カミオカンデが成功の礎を築いたことから、日本政府は約1億ドルを投じてスーパーカミオカンデを建設し、1996年に稼働を開始した。この超高感度な検出器は、外部からの干渉(バックグラウンド)を遮断するため地下1000メートルの岩盤内に設置されており、宇宙の素粒子を探求する強力な装置となっている。
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さらに、ニュートリノと宇宙の物質の起源との関係を深く探求するため、より大規模で精密な検出器が求められている。現在、日本政府は次世代の「ハイパーカミオカンデ(Hyper-Kamiokande)」の建設を進めており、推定建設費は650億円以上、2028年の稼働を予定している。完成すれば、世界最大のニュートリノ検出器となる。

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