米中は「対等なパートナー」か 新冷戦から「冷たい平和」へ、台湾問題が焦点に 中国の習近平国家主席は5月14日、トランプ米大統領と会談した。習氏は米中が「トゥキディデスの罠」を乗り越えることに期待を示し、トランプ氏は米中関係について「史上最高」と評価した。(写真/新華社より)
トランプ米大統領はこのほど北京を訪問し、中国の習近平国家主席と会談した。世界が注目する米中首脳会談が再び実現した形だ。9年ぶりとなる米大統領の異例の訪中で、トランプ氏は普段とは異なる謙虚な姿勢を見せ、中国との協力に前向きな姿勢を繰り返し強調した。台湾やイランをめぐる問題でも、習氏との合意に前向きな姿勢を示したことで、国内外でさまざまな見方が広がっている。
また、米海軍長官代行を務めるハン・カオ氏は連邦上院の公聴会で、トランプ政権が予定していた台湾向けの140億ドル規模の武器売却計画を一時停止すると証言した。これにより、トランプ氏が中国からの商業的利益と引き換えに台湾の利益を犠牲にしたのではないかとの疑念も浮上している。
一方、ワシントンの著名な戦略専門家は、トランプ氏の姿勢変化の背景について、中国がもはや単なる「台頭する大国」ではなく、米国にとって真の意味での「対等なパートナー」になりつつあるという認識があると指摘している。
トランプ氏はなぜ対中姿勢を変えたのか 昨年、韓国・釜山で行われた米中首脳会談から、今回の9年ぶりとなる米大統領訪中に至るまで、国際社会が注目してきたのは、第2次トランプ政権の対中政策が、なぜ第1次政権時の強硬姿勢を覆すようなものになったのかという点だ。米国内では、今回のトランプ氏の対応について、米国の利益や台湾をはじめとする多くの同盟国を見捨てたうえ、目立った成果も得ていないとの批判も相次いでいる。
一方で、昨年、台湾の頼清徳総統を「無謀な指導者」と評する論考を発表し、台湾で注目を集めた米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のアジア部門ディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏は、米東部時間5月20日、米誌『タイム』に再び寄稿 した。
ゴールドスタイン氏は、トランプ氏の訪中を一定程度評価し、米中関係は「新冷戦」から「冷たい平和」へと移行したとの見方を示した。
米誌『タイム』は2025年10月23日、ワシントンのシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」アジア・プログラム・ディレクターのライル・ゴールドスタイン氏による分析記事を掲載し、台湾の頼清徳総統を「無謀な指導者」と評した。(画像/『タイム』公式サイトより) ゴールドスタイン氏と、米慈善団体「スタンド・トゥゲザー(Stand Together) 」に所属する若手中国専門家のテッドフォード・タイラー氏による共同寄稿では、トランプ氏の訪中を擁護し、一定の評価を与えている。
寄稿では、「ワシントンの多くの分析家による批判とは対照的に、トランプ大統領の対中姿勢は『米国の利益を売り渡した』わけでも、『北京に弄ばれた』わけでもない」と指摘。そのうえで、トランプ氏は、中国がもはや単なる「台頭する大国」ではなく、多くの面で真の対等なパートナーであることを正確に認識していると論じた。
今回の具体的な成果として、米中間で「トゥキディデスの罠」に関する重要な議論が交わされたことを挙げ、歴史上の大国間戦争という破滅的な傾向を避けるべきだという共通認識が、両国の間にあることを示したと分析している。
寄稿によると、習氏は米中首脳会談の冒頭で、米中という二大強国は、中国の台頭と米国の対応がもたらす課題にうまく対処できるのかという問題を提起した。
「トゥキディデスの罠 」理論は、衰退しつつある米国が、台頭する中国に脅威を感じ、抑え込もうとする可能性を示唆するものだ。ただ、ゴールドスタイン氏らは、トランプ氏がこの問いに対して自信に満ちた対応を見せ、米国の衰退に関する懸念を丁重にかわしたと分析している。
2026年5月14日、北京の人民大会堂で行われた歓迎式典に掲げられた米中両国の国旗。(写真/AP通信提供)
米中首脳会談は「少なくとも年1回必要」 ゴールドスタイン氏は『風傳媒』の電子メール取材に対し、「米中首脳会談が開催され、かなり順調に進んだように見えることを非常にうれしく思う」と述べた。そのうえで、「確かに、私が長年期待してきたような根本的な突破口ではない。しかし、両国に切実に求められている関係修復のプロセスにおける小さな一歩として、間違いなく前進だ」と評価した。
ゴールドスタイン氏はまた、「習主席が会談の冒頭あいさつで、米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が提唱した、示唆に富む『トゥキディデスの罠』理論に言及したことを非常に喜ばしく思う」と述べた。
さらに、「社会科学者として言えば、超大国を不必要で破壊的な武力衝突から遠ざけるうえで明確に役立つ枠組みを構築することほど、大きな業績はない」と語った。
ゴールドスタイン氏は電子メールの中で、アリソン氏の理論的貢献を高く評価し、「国際関係分野に携わるすべての人々が、平和と安全に対してこのような大きな貢献ができるよう努力すべきだ」と強調した。同氏はさらに、米中両国が9年もの間、重要な二国間首脳会談を開いてこなかったことについて、「極めて不合理だ」と指摘した。
両国首脳の相互訪問が長らく途絶えていた事実こそが、現在の世界情勢の不安定さを説明しているとし、今後は米中首脳が定期的に会談する必要があると主張した。
ゴールドスタイン氏は、米中首脳会談について「少なくとも年1回は行うべきであり、今回の北京での会談のように1日半だけではなく、丸3日間にわたって協議すべきだ」と述べた。また、両国が安定、平和、共同繁栄へ向かう流れをさらに強固なものにするため、各方面が引き続き努力すべきだとの期待も示した。
トランプ米大統領は代表団を率いて習近平国家主席と会談し、米中関係について「史上最高」と評価した。(写真/中国中央テレビの映像より)
台湾問題と「戦略的曖昧さ」の行方 ゴールドスタイン氏とタイラー氏は寄稿の中で、「物事を成功に導くには、官僚機構の惰性を打ち破り、限られた時間と資源を効果的に配分するよう促す大統領のリーダーシップが必要だ」と論じた。そのうえで、過去10年にわたる有害なイデオロギー的分断や、外交関係の断絶が残した影響を克服するには、継続的な努力も欠かせないと指摘した。
最も重要で厄介な安全保障上の課題である台湾とイランの問題について、寄稿は、トランプ氏と習氏がいずれも正面衝突を避けるため、曖昧な回答にとどめたと分析した。両首脳が解決すべき課題の多さや、米中関係がすでにどれほど悪化していたかを考えれば、こうした対応は現時点では決して悪いことではないという。
寄稿は、このような政治的選択によって、両首脳が柔軟性を保ち、対話を続けることができると指摘した。必要に応じて、国内向けにこれらの敏感な問題を説明する余地も残されるとしている。ただし、ゴールドスタイン氏は『風傳媒』の電子メール取材に対し、台湾問題に関する追加の見解については回答しなかった。
一方、ゴールドスタイン氏とタイラー氏は寄稿で、トランプ氏と習氏が台湾への武器売却について協議したものの、具体的な考えは明らかにしなかったと指摘した。
両氏は、米国の台湾政策を従来の「戦略的曖昧さ」に回帰させ、台湾問題で危険な「戦略的明確さ」に踏み込むことを避けようとしていると分析している。
台湾問題は、核兵器を保有する米中という二つの超大国が実際に武力衝突へ至る可能性を持つ、ほぼ唯一の問題である可能性が高い。両氏はその点を踏まえ、北京が求める「高度な慎重さ」は重視されるべきだと結論づけている。
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