楊双子氏「ドラゴンボールが読書の原点」 『台湾漫遊鉄道のふたり』創作秘話を語る

2026-05-25 16:33
『台湾漫遊鉄道のふたり』がブッカー国際賞を受賞し、複数の歴史的記録を塗り替えた。台湾の作家・楊双子氏(左)が執筆し、翻訳家の金翎氏(右)が英訳を手がけた同作は、国際的な文学賞「ブッカー国際賞」に輝いた。両氏はそれぞれ、同賞を受賞した初の台湾人作家、台湾系翻訳家となった。(ブッカー賞財団提供、中央通信社・陳韻聿ロンドン発)
『台湾漫遊鉄道のふたり』がブッカー国際賞を受賞し、複数の歴史的記録を塗り替えた。台湾の作家・楊双子氏(左)が執筆し、翻訳家の金翎氏(右)が英訳を手がけた同作は、国際的な文学賞「ブッカー国際賞」に輝いた。両氏はそれぞれ、同賞を受賞した初の台湾人作家、台湾系翻訳家となった。(ブッカー賞財団提供、中央通信社・陳韻聿ロンドン発)

台湾の作家・楊双子氏と、台湾系アメリカ人翻訳家の金翎(リン・キン)氏が、小説『台湾漫遊鉄道のふたり』(原題:臺灣漫遊錄、英題:Taiwan Travelogue)をめぐり、ブッカー国際賞(International Booker Prize)公式サイトのインタビューに応じた。

同作は、1930年代の日本統治下の台湾を舞台に、台湾の植民地経験、食文化、女性同士の親密な関係を重ね合わせた長編小説。インタビューでは、創作の背景や歴史叙述のあり方、翻訳の政治性、文学がいかに「境界を越える旅」となり得るかについて、楊氏と金氏がそれぞれの視点から語っている。

台湾の植民地経験をめぐる複雑な感情

​ブッカー国際賞公式サイトのインタビューで、楊氏は『台湾漫遊鉄道のふたり』の創作動機について、国際的な読者に向けて説明した。楊氏は、同じく日本帝国の旧植民地である韓国と台湾が、植民地時代の記憶に対して異なる集団的感情を持っていることに着目したという。

韓国では、日本統治の歴史に対して強い怨恨を抱く感情が広く見られる一方、台湾人が日本統治時代に向ける感情はより複雑で、不快感とノスタルジーが交錯するものだと楊氏は指摘した。

楊氏は、現代の台湾人の視点から、過去の台湾人が置かれていた複雑な状況を解きほぐしたかったと語る。歴史を振り返ることは、単なる懐古ではなく、「私たちがどのような未来を追求すべきか」を考えるためでもあるという。

楊氏によると、2017年後半には物語の大枠を構想し、第1章を書き始めていた。正式に執筆計画を始動したのは2019年2月18日で、同年8月20日には初稿を書き上げたという。

また、楊氏は執筆に伴う「副産物」についてもユーモアを交えて語った。同作は「旅」と「食」を重要なテーマとしているため、調査やフィールドワークによって自身の生活にも変化があったとし、「最も明らかな変化は二つありました。貯金が減り、体重が増えたことです」と笑いを誘った。

文化を「トラウマ」だけで語らない視点

​楊氏が歴史的な舞台を構築したとすれば、その物語を英語圏へ届けたのが翻訳家の金氏である。金氏はインタビューで、『台湾漫遊鉄道のふたり』を翻訳した理由について、自身の文学観とともに語った。

金氏は、個人的に「ただ悲惨なだけ」の歴史小説は好まないという。苦難だけが残る物語は、自身にとってかえって現実味を欠くものに感じられるとし、どれほど困難な時代であっても、人はどこかに軽やかさや深い愛情を見いだすものだと述べた。

日本統治時代の台湾について、金氏は「台湾人は抑圧され、虐待されていたのか」と問いかけたうえで、その答えは当然ながら「そうだ」とした。しかし、それは台湾人のアイデンティティや個性が苦しみによって完全に押しつぶされたことを意味しないと強調する。
(関連記事: 『台湾漫遊鉄道のふたり』がブッカー国際賞受賞 台湾文学初、中国語作品でも初 関連記事をもっと読む

金氏は、当時の台湾にもユーモアがあり、食があり、映画があり、学校生活があり、日常のささいな口論や恋愛があったと指摘した。そのうえで、「ある文化をそのトラウマだけに矮小化してしまうのは誤りだ」と述べた。

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