【単独インタビュー】「このままでは台湾の臓器移植は中国頼みに」 陳培哲氏が語る遺伝子編集と台湾バイオ産業の空洞化

2026-05-22 15:43
中央研究院院士の陳培哲氏は『新新聞』の単独インタビューで、遺伝子編集が「異種臓器移植」の臨床応用という新たな段階に入ったと指摘した。(写真/張瀞文撮影)
中央研究院院士の陳培哲氏は『新新聞』の単独インタビューで、遺伝子編集が「異種臓器移植」の臨床応用という新たな段階に入ったと指摘した。(写真/張瀞文撮影)

CRISPR-Cas9をはじめとする遺伝子編集技術の急速な進歩により、世界のバイオテクノロジーは大きな転換点を迎えている。中央研究院院士で台湾大学医学部教授の陳培哲氏は台湾メディア『新新聞』の単独インタビューで、遺伝子編集が「異種臓器移植」の臨床応用という新たな段階に入ったと指摘した。

陳氏は、この分野における米中両大国の先行状況を分析するとともに、日本、韓国、中国、台湾のバイオ産業の現状を比較した。台湾が基礎研究を軽視し、半導体産業への一極集中とバイオ分野の「投機的な風潮」による人材流出を放置すれば、10年後には臓器移植の面で中国に頼らざるを得なくなる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

遺伝子編集がもたらす医療革命 「豚の臓器」を移植可能に

​陳氏によれば、世界各国は深刻な移植用臓器の不足に直面している。この課題を解決するため、科学界ではノーベル賞級の技術である遺伝子編集を用い、豚の臓器を人体に移植できる「救命の選択肢」に変えようとする研究が進んでいる。

かつては、豚の臓器をそのまま人体に移植しても、激しい免疫拒絶反応によって、わずか1時間ほどで機能不全に陥っていた。現在は、豚の受精卵に遺伝子編集を施すことで、この問題を根本から変えつつある。

第一に、人体の免疫反応を引き起こす豚の20〜30個の重要遺伝子を破壊する「ノックアウト」が行われる。第二に、人体の免疫システムとの適合性を高めるため、約30個のヒト遺伝子を組み込む「ノックイン」が行われる。第三に、豚のゲノムに潜む内在性レトロウイルス、例えば豚内在性レトロウイルス(PERV)を遺伝子編集で不活化・除去し、移植の安全性を高める。

こうして遺伝子工学によって改変され、一部にヒトの遺伝子を持つ豚は、もはや従来の意味での豚とは言えない。陳氏は冗談交じりに、これは一見すると少し不気味にも聞こえるが、まさに「神が人を創る」ような技術だと語る。

体細胞レベルの移植、次世代の遺伝子には影響しない

​こうした画期的な技術に対しては、倫理面や遺伝に関する疑問も生じる。遺伝子編集された豚の臓器を移植された患者が結婚して子どもをもうけた場合、編集された遺伝子が次世代に受け継がれるのではないか、という懸念である。

これについて陳氏は、科学的には明確に否定できると説明する。異種臓器移植は、生殖細胞系列を改変するものではなく、移植された臓器という体細胞レベルにとどまる医療行為である。編集された遺伝子は移植された特定の臓器内に限られ、患者の受精卵に入り込むことはない。そのため、次世代の遺伝に影響を与えることはないという。

この点については、医学的にも倫理的にも広く合意が形成されていると陳氏は強調した。 (関連記事: トランプ氏、台湾半導体は「米国から盗んだ」と再主張 企業に「荷物をまとめて米国へ」 関連記事をもっと読む

種の壁を越えた後の安全リスクと「防御医学」

​遺伝への懸念は整理できる一方で、陳氏はさらに深い科学的課題を指摘する。それは、種の壁を越えた後に生じる生物安全上のリスクである。

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